怒り。 

 

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楽しみにしていた映画「怒り」を初日に鑑賞……。
久しぶりに重厚で見応えある作品に出会えて何だかとても嬉しかったです。
監督の李相日は「許されざる者」の監督なんですね……。

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数年前の北海道旅行の時に、大雪山の麓のロケ地を訪れたことが懐かしいです。
頬を刺す冷たい空気、昇る朝日に身も引き締まる思いがしたものです。


東京、八王子で起きた残虐な夫婦殺人事件……。
その1年後に3つの場所に現れた正体不明の3人の青年。
何事もなく平穏な生活の中に投げ込まれた1粒の石……。
その小さな波紋が徐々に大きくなり、幾重にも重なり合って見事な模様を描き出します。
3人の青年を縦糸に、関わる人々の人間関係を緯糸に、
一流の演技陣、非常に高度な今井 剛の編集と、素晴らしい坂本龍一の音楽とともに、
重厚で分厚いゴブラン織りのような圧倒的な作品に仕上がっていました。

主要キャストの見事なアンサンブルの演技の中で、千葉篇の渡辺 謙は扇の要。
どっしりとした存在感は唯一無二です。
好き嫌いはあるけれど、娘の愛子を演じた宮﨑あおいの素を丸出しにしたピュアな演技。
安っぽい髪留め、ロングヘアの先に茶髪が残り……役作りの造形も見事でした。
愛子の恋人を演じた松山ケンイチは、世間から身を隠さなければならない暗い過去を言葉少なに表現。
沖縄のパートでは泉を演じた広瀬すずが体当たりで汚れ役を熱演……彼女、大きくバケるかも。
放浪人、田中を演じた森山未來の人懐こさと狂気、発する汗の匂いがこの映画の中の唯一のアクセントです。
泉を慕う辰也の佐久本 宝……オーディションからだそうです、恐るべし。
東京篇の綾野 剛って初めていい役者だと思いました……。
妻夫木 聡が演じる恋人、優馬に疑念を抱かせる秘密を持った青年、直人の陰を好演。
その妻夫木 聡はいい役者になりましたねぇ……。
デビュー作「ウォーターボーイズ」の初日のこと、
親友に誘われて劇場に朝一で並んだ僕たち……フと後ろを見てみれば、
ダァ〜ッと並んだ長蛇の列に男は僕1人だったことを思い出します(苦笑)
彼を嫌う人は殆どいないんじゃないでしょうか……好青年の鏡みたい。
優馬が失ったもの……その大きさは計り知れません……。
千葉、沖縄、東京……正体不明の青年たちの素性が明らかになるにつれ、事件の謎も明かされて来ます。

人を受け入れることの難しさ、そしてもっともっと難しい許すと言う気持ち。
容易く心に芽生える疑念、人生で一番大事なものを失った時の暗渠……。
今年の賞レースを独占することは必定、近年、稀に見る必見の作品です。

「怒り」……★★★★★★★☆……75点。


2016年9月23日


ブノワ。


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匂いが希薄な「後妻業の女」。 

 

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楽しみにしていた「後妻業の女」……観てまいりました。
最近、流行のアニメ、コミックの実写版、
食指がまったく動かない日本映画の中で、
久しぶりに何やら面白そうな予感……がしましたから。
仕事の合間を縫って駆け付けた劇場は、
中高年の観客で埋まり(どちらかと言うとお年寄りが多い……。)
僕なんか一番ヤングな部類(笑)ここ、劇場は日本橋ですからね、
都心を離れたらどんな客層なんでしょう……。


さて、舞台は大阪……。
今や老いも若きも日本国中をあげて「婚活」真っ盛りと言われています。
僕はこの「○○活」って言う言葉が大嫌い(苦笑)……ま、そこは置いといて。
武内小夜子(大竹しのぶ)は結婚相談所の柏木 享(豊川悦司)と組んで、
高齢で資産家の男を狙って「後妻業」をしています。
老い先短い資産家の男と結婚し、早々に死んで貰い遺産を手中に……。
時には間接的な殺人をも厭いません。あっけらかんと平然と、
全く罪の意識のない女と被害にあった男、
そしてその家族、探偵などを巻き込んでのコメディです。

先ず、一番強く感じたのは、大阪の匂いが稀薄だと言うこと。
不思議です。大阪(関西)出身の俳優を多用しているのに、
意外なほどあっさりな感じ……僕らが勝手に想像する大阪のギトギト、
コテコテ感や、バイタリティー豊かな「大阪」が感じられないのです。
人間臭さ、汗臭さみたいなもの?裏社会に生きる人間たちのえげつなさ……。
そんなものが全く感じられませんでした。

スピルバーグの「宇宙戦争」の時に、
世界各国に襲来した宇宙人を、大阪だけが撃退したと伝わるシーンがあります。
この時、ネット上では「大阪のオバちゃんが竹槍で宇宙人を撃退した」……。
そうまことしやかに噂が流れ、大いに笑ったものです。
いかにも大阪のオバちゃんならやってくれそう(笑)
大阪のオバちゃんを表すのにピッタリではありませんか。
そんな勝手なイメージもあってか、サラっとした「大阪」の表現に拍子抜けでした。
それって、やっぱり昔と今の役者の質の違いなのかな?そうも思います。
往年の左 幸子なんかがやったら凄かったでしょうねぇ……。

豊川悦司……いかにも影の社会で暗躍してそうな感じの男を好演。
この人の持っている匂いでしょうか……良く生かされていたと思います。
伊武雅刀、森本レオ、六平直政、津川雅彦……小夜子に騙される男を演じて妙でした。
長谷川京子、尾野真千子は騙された男の娘をそれぞれのキャラクターで演じわけ、
とりわけ尾野真千子は気丈な性格で小夜子と渡り合い、
大竹しのぶとお決まりのくんずほぐれつの大バトルを見せてくれます。
ただし、この女同士のバトルって何もこの映画に限ったことではありません。
映画、演劇の歴史の昔から、快挙にいとまがないほどの名場面あり。
「通天閣どころやない……スカイツリーや!」の笑福亭鶴瓶師匠は勿体ない使い方……。
この方は非常にに達者な方、もうすこし演技のしどころが欲しかったと思うのです。
小夜子を演じた大竹しのぶ……僕、この方の芝居は苦手なのです。
「事件」の時に法廷で「Sexですっ!」と絶叫する芝居から何も変わっていない。
芝居は達者だと思うのだけど、それ以上でもそれ以下でもない。
日本の女優の中ではピカイチと言われていますが、何かもう一つピンと来ません。
どうして皆さんこぞっていつも大絶賛なのか理由が分かりません。
舞台「ピアフ」の時もそう。彼女ならこうするだろうと言う範囲での驚きしかないの。
その大竹しのぶが一番凄かったのは貴志祐介原作、森田芳光監督の、
「黒い家」です。これは凄かった……原作も傑作でしたが、
感情が全くない殺人鬼を大竹しのぶが熱演。
この時ばかりは、なんて凄い女優なんだろう……そう思ったものですが、
「後妻業の女」に関しては並の出来……かな。

「後妻業の女」……★★★★☆……45点。


2016年9月16日


ブノワ。


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人生、最初で最後……「ペット」。 

 

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ふふふ……自ら禁を破りました(笑)
春先から劇場で見るようになった予告編……。
何だか面白そうでねぇ……。
友人を誘って3人で行って参りました……「ペット」。
何で1人で行かないのか?って?
うふふ……だって詰まらなかったらイヤじゃないですか。
不幸の輪は広げないとね(笑)

昔は映画の予告編って嫌いだったんです。
早く本編見せなよっ!……って。
でも、これから公開される作品を選ぶ時に有効なのかなぁ……って。
予告編なのに非常に優れたものもあるしね。
下手をすると本編よりも面白い予告編もある。
「レイダース/失われた聖櫃」なんて、例の黄金の像を、
同じ重さの砂袋とすり替えて巨大な岩が転がってくるシーン……。
てっきりクライマックスだろうと勝手に思い込んでいたら、
な、な、な、何と冒頭の掴みのシーンだった……なぁ〜んてね。

「ペット」の予告編で気に入っちゃったのは、
飼い主が出掛けた後、留守中のペットたちの生態の点描……。
これが笑えたんですよ。声が出ちゃうくらいに笑った(笑)
特にプードルのレナード(笑)レナード・バーンスタインが名前の由来であろうこの犬、
ゲイの飼い主が出て行った途端に尖った鼻先でステレオのスイッチを入れ、
ヘビメタをかけてヘッドバンキングするの……凄いですよね、
これだけで、CG、アニメ嫌いの偏屈なオジサンを劇場に呼び寄せるんだから(笑)
ヘッドバンキングって言えば、かの昔、今はなきテアトル東京のシネラマで、
ポール・マッカートニーの「ロックショウ」だったかな?観た時に、
ガッラガラの場内で、目を凝らしてみたら最前列でたった1人、
強烈にヘッドバンキングしているヤツがいた……あの巨大スクリーンの最前列で(苦笑)

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オマケに900円もするフィギュア付きの特製の入れ物?でコーラ買っちゃったし(笑)


作品的には、後からして思えば可もなく不可もなし。
主人公の犬のマックスがひょんなことから保健所に捕まりそうになり、
命からがら脱出した後は、飛んで火に入る夏の虫、
今度はペット虐待を根に持つウサギが率いる地下組織に追われることになり……。
ごくごく平均の域を出ない出来栄えでした。CGのアニメはもういいかな?
一度、経験したしね。ブノワ。さん、二の轍は踏みません。


写真はフィギュア付きのドリンクの上の部分を外したもの。
友人のを巻き上げました(笑)僕が選んだのはデブ猫のクロエ。
友人が選んだのは主人公の犬、マックスね。
クロエが赤いレーザー光線に過剰反応するところ……笑ったなぁ。

「ペット」……★★★★……40点。


2016年8月23日


ブノワ。


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「シン・ゴジラ」の居心地悪さ。 

 

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結構、好きなのです……この手の映画。
ビルが壊されたり……所謂、特撮もの?「サンダーバード」とかね。
ま、とっくにオヤジだけど、気持ちはお子ちゃまのままなんですね(笑)

公開2日目に親友と観て参りました……「シン・ゴジラ」。
日本版のゴジラ映画としては12年ぶり、通算29作目になります。
シリーズと言っても続き物ではないので、その都度のストーリー展開を楽しみにします。
子供の頃によく観ました……勿論、第一作目の「ゴジラ」は生まれていないので、
テレビにて鑑賞。子供心に恐ろしくてねぇ……。
あとはゴジラが宇宙に行って「シェ~っ!」したり、スッカリ漫画になってしまいましたね。


さてさて、今回の「シン・ゴジラ」……僕的には先ずタイトルが「?」(笑)
「新」だか「神」だか「真」だか何だか知らないけど大いに違和感あり。
キャスト総勢328人?だそうですが、でもそれが何?
めぼしい演技派の俳優はおそらく同時期に撮影の「64」に持っていかれています。
有り得ないくらいにリアリティーのないキャスティング。
石原さとみが日本をルーツに持つ米国政府のエージェント、
後は女性大統領になりたいだと?……全くリアリティーなし。
余 貴美子はいい女優ですが、彼女の防衛大臣は有り得ません。
日本のコンピューター・グラフィックスが格段の進歩を見せているのに、
役者陣のリアリティーがゼロと言うのがチョッと……。
余談だけれど、監督の樋口真嗣は「ローレライ」の監督ですね?
あの当時の日本のCGによる特撮を考えたら隔世の感ではないでしょうか。
CGの格段の進歩、ゴジラを初めてフルCGで描くのはいいんだけど、
あのゴジラの幼獣の造形は何?(笑)ガマクジラみたいじゃん。
あまりのヒドさにドキドキしちゃったじゃない(笑)
ありゃないわ、これまた漫画。幼獣もそうだし、成獣もそうなんだけど、
目が死んでいるのね。全く動かないピンポン球に丸い点みたいな目……。
懐中電灯が当たった瞬間に光彩が閉じるリアリティ……。
その一点で、既に抜群だった恐竜のリアリティーにさらに血が通うんです。
「ジュラシック・ワールド」を見習いましょう。


映画、演劇において、僕が最も忌み嫌うのは、字幕であれこれ説明されること。
演劇においても最近はスライドやモニターで肝心要を説明されることが多いです。
身体動かせよ!台詞でキチンと言いなさいよ!
今回の「シン・ゴジラ」も、役名や肩書きがその都度ウルサイくらいにスーパーインポーズ。
曰く「内閣官房長官付き○○」とか「陸軍参謀長官○○」とか……。
耳慣れない漢字ばかりの字幕……途中で突っ掛かります。
読み直している内に画面が変わっちゃう……勘弁して欲しいです。
画面に異物が挿入されると必ず目がそちらに行くのは人間の本能ですから。
別にいいんです。ゴジラ対人間、主だった役だけ名前が分かれば。
一々読ませても、余計な情報が頭の中で渦巻くだけで、何の利点もなし。
リアリティーを追求した画面だからこそ、登場人物のリアルさに欠けるところが居心地悪いです。

ゴジラの定義付けも微妙です。
単なる「悪の権化、巨大生物」として描くか、
はたまた今回のように「ゴジラ=核実験の産物 vs 日本」として描くか……。
「ゴジラ」の第一作は非常にシンプルで良かったです。
核実験によって生まれたゴジラはある意味で人類の被害者でもあり、
圧倒的な存在感と恐怖……恐怖の化身……それでいいんだと思います。
東日本大震災以降、頻繁に言われるようになった日本の危機管理問題。
ゴジラが出現したことにより表面化する問題の数々。
何をするにも法の整備、立法が先ずありき……テーマは今ですね。
でも、何故ゴジラに絡める?国連が日本の首都東京を核攻撃することを認める?有り得ませんって。
大体、放射能の光線を口と背中から吐きまくって、
体内のエネルギーを使い果たしたら2週間も固まったままお休みって一体!(苦笑)
どこかのコンセントに繋がっていたのかい?(笑)

公開に合わせてハリウッド版の「ゴジラ」(2作目)をテレビ放映していましたね。
ゴジラに対する怪獣ムートーは漫画だったけれど、矢張り、作り方、見せ方としては、
シンプルで一枚も二枚も上手です。ビキニ諸島の原爆実験を、
実はゴジラを退治するための攻撃だったって描くなんて目からウロコでした。
ハリウッド版の次作には、モスラとラドンとキングギドラが出るって?!
「シン・ゴジラ」の何やら思わせ振りなラスト……こちらも続編を作る気満々ですね。

インターネットでチョッと検索すると、あるわあるわ「シン・ゴジラ」大絶賛の大合唱。
総監督が「ヱヴァンゲリヲン」を撮ったからだかなんだか知らないけど、
この作られた組織的な大絶賛にはウンザリです。何やら気味が悪いし居心地悪い。



写真は日比谷シャンテ前のゴジラ像。これ、いい形ですねぇ。
周りのあれこれ余分なものを写さないように撮ると、
自ずとゴジラの尻のアップになっちゃいます(笑)
この写真、結構気に入っているのヨン。既に友人3人にデータあげているのです。
やっぱりこう言う写真を見ると、重たくても一眼レフは持ち歩きたいです。
スマートフォンのあの豆粒のようなレンズではこれは無理!(苦笑)


「シン・ゴジラ」……★★★★☆……45点。


2016年8月19日


ブノワ。


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先ずは映画三昧から……。 

 

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何だか具合が悪いと思っていました……。
暑くなって来ましたし、仕事もぎっしりスケジュールが入っている……。
でも、このムンムンした感じは一体なに?
考えてみれば、全然、映画館に行かれなかったんです。
手帳を見ると、6月5日に「サウスポー」を観てから、
7月16日に「ドクトル・ジバゴ」を観に行くまで映画とはスッカリご無沙汰……。
な、な、な、な、何と6週間も映画館の暗闇に座っていない!
こりゃぁ、具合が悪くなりますよね。合点が行きました(苦笑)

もっとも、6月4日に1泊で長岡の「越後丘陵公園」に行ってから、
清里の「萌木の村」に1泊、宇奈月温泉〜金沢に4泊、山中湖に日帰り、北海道に3泊……。
毎週のように家を空けていましたから無理もありませんが……。

12年目に向けて、先ずは、5月の連休明けくらいから観た映画のことをチョッと……。




「スポットライト、世紀のスクープ」……。
今年のアカデミー賞を賑わせた1本。
この手の作品を「アメリカの良心を描いた作品」と評する評論も多いけど、
往年の「大統領の陰謀」とか、この作品とか、作ってなお傑作に仕上げるところが凄いです。
相手はカトリックですからね。素晴らしい演技陣のアンサンブル。
マイケル・キートン……前年の「バードマン」と言い、いい役者になりました。
「ビートルジュース」から約30年……だれがこんなに素晴らしい役者になると想像したでしょう。

「スポットライト、世紀のスクープ」……★★★★★★★……70点。



「エヴァの匂い」……。
映画好き、映画青年を自認していた青春時代……。
シラミつぶしのように世界の傑作、名作を貪り観ていましたが、
何となくタイミングが合わずに見逃している作品もあります。
「エヴァの匂い」もそんな1本。全盛期のジャンヌ・モローがいいですね。
「死刑台のエレベーター」とかね……僕は「黒衣の花嫁」がベストなんですが……。

「エヴァの匂い」……★★★★☆……45点。



「昼顔」……。
元々がカトリーヌ・ドゥヌーヴって苦手なのです……。
フランスを代表する大女優……認めるのですが、綺麗だと思ったことはなかったなぁ……。
上手いと思ったことも一度もありません。表情が全くないのね……こんな人珍しいです。
全く顔が動かない……ドゥヌーヴって笑いませんよね?まるで能面のようです。
ただ、唯一、フランソワ・トリュフォーの「終電車」の時は美しいと思いました。
薔薇の花が散り行く最後の輝き、蝋燭が消え落ちる間際の輝き……そんな感想を持ったものです。
「昼顔」で初めてカトリーヌ・ドゥヌーヴを綺麗と思っちゃった……人形ですね。

「昼顔」……★★★★☆……45点。



「追憶」……。
映画が始まると主題歌のイントロが流れて……。
いいですよねぇ……映画には主題歌、耳に残るテーマ曲があった頃の作品。
バーブラ・ストライサンドは好きです。
ベット・ミドラーをバーブラをアメリカの2大ブス女優なんて揶揄する人もいるけれど、
僕は10万円のチケットでもバーブラのコンサートには行きたい……それくらい好き。
彼女が主題歌を歌うと発表されると映画製作の資金がドカァ〜んと集まるそうです。
メリサ・マンチェスターをして「完全に調律された楽器。」と言わしめた歌唱。
「The Way We Were」……いいですよね。
金髪碧眼……ロバート・レッドフォードがまた絵に描いたようにハンサムでねぇ。
ケ、ケ、ケ、ケ、ケイティーが思わずウットリ顔に見入るのがよく分かります。
お互い、それぞれの主義主張に生き、マッカーシズム吹き荒れるハリウッドを生きた2人の、
情緒溢れるラストシーンの見事さ。余韻の1本です。

「追憶」……★★★★★★☆……65点。



「レヴェナント 蘇りし者」……。
映画俳優って過酷な商売ですよね……。
この作品のレオナルド・ディカプリオを見てそう思っちゃった。
大自然の極限の圧倒的な映像の中で繰り広げられる復讐劇。
好調なトム・ハーディの悪役ぶりがチョッと物足りないけれど、
ディカプリオくん、これでアカデミー賞が獲れなかったらグレてやる的なラストの意味深な表情(笑)
でもね、ノミネートは5回でしょう?もっと沢山のノミネートで獲れなかった偉大な役者は沢山います。
グレン・クローズ6回、デボラ・カー6回、リチャードバートン7回、ピーター・オトゥール8回……。
役者に限らなければ、フェデリコ・フェリーニ12回、作曲家のトーマス・ニューマン12回、
撮影監督のロジャー・ディーキンス15回、作曲家アレックス・ノース15回……。
5回目で受賞なんて大騒ぎするほどのことではないような気が……。
それにしても役者って身体勝負だとつくづく思わせた1本。

「レヴェナント 蘇りし者」……★★★★★★……60点。



「64 ロクヨン 前編/後編」……。
横山秀雄は好きで、チョッと前に可成りの作品を読み倒しました。
「64」はその中でもお気に入りの一冊。昭和と平成の狭間、
たった7日間に題を取った重厚な作品だと思います。
楽しみにしていたんですよ、映画化。前後編と言うことで言うと、
「ソロモンの偽証」でテレビ局制作の悪しき点が爆発。
チョッと心配していましたが、そこそこ重厚で見応えのある作品に……。
ただ、矢張り、原作を読んでいないとキツいのではないでしょうか。
ハイハイ、聞き飽きましたよ。原作と映画は別物って言いたいんでしょう?
それはごもっともだけれど、それを言うのは原作を決して越えられないボンクラの言うことですね。
世の中には原作を凌駕する傑作を作り出した才人が沢山いますから。
フレミングの「風と共に去りぬ」、コッポラの「ゴッドファーザー」、パクラの「ソフィーの選択」……。
原作に忠実に、それから原作を脚色して映画的華やかさを出した作品……結構あります。
「犬神家の一族」なんて素晴らしい原作を市川 崑の強烈な個性で染め上げた1本だし。
原作と映画化作品は敵ではないのです。「ソフィーの選択」の時、
メリル・ストリープは原作者のウィリアム・スタイロンに、

 「女優の演技としては映画史上最高。」とまで言わしめたし、

ヴィヴィアン・リーはスカーレット・オハラに炎のような情熱を与えました。
さて「64」はどうだったでしょうか……矢張り、長くても1本に纏めて欲しかったなぁ。
やれば出来るんですよ。原作が長編だからといってどうしてスグに2本に分けるの?
前編、後編合わせてほぼ4時間の大作です。3時間に纏められなかったかな?
原作のラストと映画のラストが違うのも「やっぱり!」感は否めません。
どうして家族に帰依するんでしょう?落としどころは家族愛?
不変であるハズの家族愛が崩壊したからこその三上広報官の家庭の事情があるんです。
ラスト、夫婦が不在の間に掛かって来る、失踪した娘かと思わせる電話……必要でしょうか。
原作では、行方不明になった娘はどこか必要とされているところで元気に生きている……。
そう夫婦は無理矢理得心しているのです。観客を取り込もうとする作家の甘さかな。
ただ、変更されたラストの部分、可成りの長さになりますが、
なかなか脚本が力強くて見応えがありました。
一つだけ感慨深かったのは、僕と同年代の役者たち、
デビューの頃は若手で頑張って来た役者たち、佐藤浩市、三浦友和、永瀬正敏、仲村トオル、
筒井道隆、吉岡秀隆、緒形直人……皆、いい役者になりましたねぇ。
今や日本映画界を背負って立つ、中心になって引っ張って行く存在です。
烏丸せつこなんて若い頃より今の方が断然いいもの。
緒形直人なんてビックリね。誘拐の被害者が一転して犯人の顔になるところね。
あの卑屈な怯えた顔を過不足なく説明に陥ることなく表現……天晴でした。
雨宮が公衆電話で電話帳を片手にかけまくった電話、
電話のボタンが擦り切れていましたね……映画の最も優れた表現方法が成功した例です。
しっかりした演技陣、重厚な観る価値のある作品でした。

「64 ロクヨン/前編・後編」……★★★★★★☆……65点。



今日はこの辺で……。
あと15本以上あるのです(苦笑)それはまた日を改めて……かな。
今日の写真は50周年を迎えた豊橋の「大豊商店街」で撮った1枚。
ガスメーター……昭和の、ニ・ホ・ヒ・ですよねぇ……。


2016年8月9日


ブノワ。


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キャロルとリリー。 

 

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映画「グランドフィナーレ」を観る。

映画は矢張り映像で見せるもの。僕はそう思います。
気のきいた台詞は作品を印象付けるスパイスになるけれど、
テーマを蕩々と喋られたのでは興醒めなこと甚だしいです。
フェリー二を思わせる美しい映像が積み重ねられます。
原題の「Youth」はこの作品の大事なテーマです。
引退した主人公、音楽家で指揮者のフレッド・バリンジャーと、
同じく高級リゾートに逗留している映画監督で、老いることを否定し、
取り巻きの若者たちと新しい映画の脚本を執筆中のミック・ボイルをはじめとして、
若さと老いのキャラクターの対比が作品の全編に見られます。
決して、見かけの年齢ではなく、心の様相……青春とはそう言うものだと語りかけます。
中にはジェーン・フォンダ演じるオスカーを2回受賞した大女優ブレンダ・モレルのように、
老いを厚化粧とカツラで隠しながらも、痩せて筋張った手や厚化粧からのぞく醜悪な素顔をもって、
自らの中に追い求める若さとどうにもならない老いを、
1人の中で複雑に表現するキャラクターもいます。
映像で淡々と語られる中で、たった2ヶ所、登場人物が感情を露にするシーンがあります。
ブレンダがミック対峙し「新作には出ない、あなたはもう終わっている」と宣告するシーン、
加えて、帰りの飛行機の中で「下ろせ!ミック、許して!」とCA相手に大立ち回りをするシーン。
それからフレッドの娘のレナが父と泥パックを受けながら、
自らの家庭、子供時代の不幸さを初めて父にぶつけるシーン。
静かなシーンが多いだけに、この言葉による相手への攻撃は強烈な爆弾のようです。
レイチェル・ワイズのアップのみで進行するシーンである手紙のことが明らかにされます。
フレッドがその昔、恋した「男」に宛てた手紙、母も私もそれを読んだと詰ります。

「男」にラブレターを認めた事実は、フレッドの音楽家(芸術家)としてのキャラクターに、
奔放さ、複雑さと陰影をもたらし、芸術家の深淵を覗かせるキッカケになっています。
久しぶりに映像を満喫した作品。マイケル・ケインとハーベイ・カイテルが老境の素晴らしさ。
矢張り、役者は最晩年にその評価、価値が分かりますね。

「グランドフィナーレ」……★★★★★★★☆……75点。



ここで、ゲイ、所謂トランスジェンダーが主題の作品についてチョッと……。
登場人物の中にゲイがアクセントで出ている映画は除き、
矢張り圧倒的に素晴らしかったのは、群を抜いて「ブロークバック・マウンテン」でしょうか。
その感動は、終盤のクローゼットからイニスのシャツが出て来た時に最高潮に達します。
劇場内に響き渡る慟哭、嗚咽、すすり泣き、大きく揺れる椅子……。
これほどまでに人の心を揺さぶる作品は稀でしょう。
戯曲が原作の「真夜中のパーティ」「トーチソング・トリロジー」、
それからアジアから「ブエノスアイレス」と「さらばわが愛 覇王別姫」……あたりが白眉でしょうか。
「ブロークバック・マウンテン」もアン・リーが監督ですから、
弦楽器と同じく、ゲイがテーマの映画はアジアの作家たちに相性がいいのかも……。

マイノリティーであることからの迫害や苦悩、厳しい生き様を、
正面切って描く作品よりも、それはごく当たり前として捉え、
淡々と物語の中に組み込まれた作品に秀作が多いです。
ゲイも数ある愛情表現の中の1つとして淡々と捉えた作品に傑作が多いようです。



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さて、時計を少し戻しましょう……。
3月に「キャロル」と「リリーのすべて」を観ました。
両作品とも本年度のアカデミー賞に絡む力作……と、言われていました。
いそいそと劇場に足を運びましたが、さて、その出来映えは……。


「キャロル」……。
まさに満開を少し過ぎた絢爛豪華、馥郁たる薔薇のようなケイト・ブランシェットと、
瑞々しく開きかけた蕾のように匂い立つルーニー・マーラ。
「キャロル」は久しぶりに美しい女優を堪能する作品でした。
公開前は絶賛の嵐でしたが、どうでしょう……。
矢張り「ブロークバック・マウンテン」などと較べると凡作の謗りは免れません。
撮影は雰囲気のみ、凡庸で褒められませんが、
ケイト・ブランシェットの美しいこと!女性2人の恋愛をプロモーション・ビデオよろしく、
フィリップ・サルドに似た流麗な音楽で上っ面だけ演出した凡作。
ケイト・ブランシェット自身がプロデューサーを兼ねているのも、
作品全体に甘くなり、厳しさが欠けた原因でしょうか。
浅い……兎に角、全てが上っ面の綺麗事。物事を厳しく見る第三者の視線は不可欠です。
そこには主人公の苦悩も悲しみもありません。
期待が大きかっただけにガッカリ感も半端ありませんでした。

「キャロル」……★★★★☆……45点。


「リリーのすべて」……。
およそ90年前、北欧デンマークの雰囲気を的確に再現した美術と衣裳が素晴らしいです。
ヴィルヘルム・ハンマースホイの絵画に出てくるような室内の装飾、
衣裳やセット……映画美術はどれを取っても一級品の出来。
欧米の作品は空気までその時代になってしまうところが凄いです。
エディ・レドメイン好演。化粧した姿が全く美しくないところが却ってリアルです。
同じく画家である妻ゲルダのモデルを務めてから、己のなかの「女」に目覚め、
女装することにより己に真正面から向き合うことになります……。
繊細なエイナルから、新しい性におののきながらも生き生きとしたリリーへ……。
さながら蛹が蝶に羽化する様は見事だけれど、エディ・レドメイン、
少々なよなよと小手先の演技に終始したきらいがあるのも否めません。
劇場の衣装室で鏡に向ってエイナルが全裸でリリーになった暁の身体の変化を想像するシーン、
映倫よ、よくぞボカシを入れずに見せてくれたと思います。
アカデミー助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデル……チョッと過大評価かな。
エイナルが描く風景画……素敵です、欲しいかも。
原題の「Danish Girl」が実は性転換したエルベのことではなくて、
実際は彼を最後まで愛し、見届けた妻ゲルダだと気付かせるラストが秀逸です。

「リリーのすべて」……★★★★★★……60点。


今日の1枚目の写真は、随分前になりますが、
西武ドームで開催された「国際バラとガーデニングショウ」で、
大野耕生さんがアレンジしたブーケだったかな……。
2枚目は確か「横浜イングリッシュガーデン」で撮った1枚です。


2016年6月2日


ブノワ。


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バベットの晩餐会。 

 

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連休2日目……。
恵比寿ガーデン・シネマにて「バベットの晩餐会」を観ました。
劇場にてほぼ30年ぶりの鑑賞になります。
アカデミー外国映画賞等、数限りない受賞歴を誇る傑作ですから、
僕の拙い言葉で、今更、作品に付いてあれこれ語るのも愚の骨頂です。


今日は「バベットの晩餐会」にまつわるあれこれをチョッと……。

優れた芸術作品って本当に限りなくあらゆる方面に広がりを見せます。
僕は「バベットの晩餐会」でシャンパンの「ヴーヴ・クリコ」と、
ブルゴーニュの赤ワイン「シャトー・クロ・ヴージョ」を知りました。
映画に出てくるのは「ヴーヴ・クリコ」の1860年ものと、
「シャトー・クロ・ヴージョ」の1845年もの。
以降、両方のワインの大ファンになりましたが、
「ヴーヴ」と言うのがフランス語で「未亡人」を表し、
「クロ」が「囲われた」を表すのを知ったのもこの作品が切っ掛け。
今は1000円前後でスペインのカバなどが手頃に飲めますが、
矢張り「ヴーヴ・クリコ」は別格。戴くと思わず顔が緩みます(笑)
「シャトー・クロ・ヴージョ」には因んだ2種類の薔薇があります。
曰く「Chateau de Clos Vougeot」「Clos Vougeot」……。
どちらも由来になった赤ワインの色そのものの赤黒い名花になります。
余談ですが「シャブリ」と言う白薔薇もありますね。
「Chateau de Clos Vougeot」は黒薔薇を作るために随分と交配親に使いましたっけ……。
赤黒の花弁に黄色の雄蕊……タップリと花粉が採れて重宝した覚えがあります。
シャンパーニュ地方のランスには沢山のシャンパンのメゾンがあります。
まさにひしめき合っていると言った感がありますが、
味的にはどうなんでしょうか……それ程、値段の差ほどの違いはないように思えるのです。
宣伝の巧さ、マーケティングの仕方、要は財力の差だと思うのですが、
平行輸入の絡繰りで、本場フランスで買うよりも日本で買った方が安い……そんな時代もありました。
知り合いが「Jepeer/ジペール」と言うカーブを経営していましたっけ。
安価で優れたシャンパンでしたが、残念ながら廃業してしまいまったんですよねぇ……。
経営権を譲って「Jeppeer」はまだあるのかな?どうなんでしょう。
葡萄畑や工場を見せて貰いましたが、葡萄畑の一番端には薔薇が植えられていました。
葡萄畑にはウドン粉病の発生を知らせるための薔薇が植えられている……。
3メートル先も見えない濃霧の中、畑の中、車を走らせて、
そんな話の現実に見ることが出来たのが懐かしいです。
社長に薔薇の品種を聞きましたが、たった一言、

 「メイヤンだよ。」

とだけ言っていました。薔薇の名前はどうでもいいのでしょうね(苦笑)
今は耐病性が重視される中で、ウドン粉病に掛かりやすいから植えられている薔薇もあるんですね。

バベットの晩餐会に使われた青い菫の文様の食器はフランスはリモージュのアビランド社製です。
画面に映ったものをチラッと見ただけですが、今のものとはチョッとニュアンスが違います。
今のものは転写紙で絵付けがされているハズですが、映画のものは手描きのような雰囲気も……。
こちらの食器は非常に華奢で、他社のものよりも少し小振りで女性的なのが特徴です。
いつも思うのですが「Havirand」の「d」は発音するのかしらン?(笑)

 「私のウズラちゃん!」

と、バベットが愛しそうに呼び掛ける、ピヨピヨと元気にさえずる生きたウズラは、
やがて殺されて羽根をむしられパイ包みになって食卓に乗ります(笑)
日本ではほとんど見かけないウズラ……フランスでは羽根をむしられ、
首を小さな身体の下に丸め込むように入れられ、切り身ではなく丸々肉屋に並びます。
小骨が多くて少し食べにくいですね……。

そのバベットが愛用しているのが大きなフードが付いたマント……。
メリル・ストリープ主演の「フランス軍中尉の女」の冒頭のシーンが有名ですね。
メリル・ストリープと言えば原作のカレン・ブリクセンと繋がります。
当時は女性の作家がなかなか認められず、カレンは、
男性名のアイザック・ディネーセンで数々の傑作を発表しています。
一番有名なのは、「バベットの晩餐会」の2年前に映画化された、
メリル・ストリープとロバート・レッドフォード主演の「愛と哀しみの果て」があります。

 「私はアフリカに農園を持っていた。ンゴング丘陵のふもとに。」

大メロドラマですが当時の人気スター2人に寄る華やかな作品に仕上がっていました。
原題は「Out of Africa」……僕の愛読書ですが、「ライ麦畑でつかまえて」の中で、
ホールデンが間違え手渡されて読んだのも「Out of Africa」です。
因みに豊橋の「ホテル・アークリッシュ豊橋」の宿泊客専用のラウンジの書架にも並んでいます。

劇中でモーツァルトの「クラリネット協奏曲の」第二楽章が効果的に使われています。
この曲は、「グリーンカード」の温室のシーンや、
ジョルジオ・モロダーにより現代的にアレンジされ、
「アメリカン・ジゴロ」のテーマ曲としても使われています。
この世のものとは思えない天国的なイメージの時に使われることが多いです。

 「食事を恋愛の変えることの出来る唯一の女性。」

そう将軍に言わしめた「カフェ・アングレ」の料理長だったバベット……。
ステファーヌ・オードランが好演しています。
役者にとって、生涯1本でも代表作があるって素晴らしいことですね。
前半の清貧の村の生活の描写と、後半の晩餐会のシーンや厨房の場面の対比が面白いです。
丁寧に作られた傑作、映画史に残る作品です。


今日の写真は僕が愛用しているプジョーのシャンパングラス「IMPITOYABLE No.4」
「情け容赦のない……。」……面白い名前が付いていますよね。
何事もそうなのですが、このように「槌目」のものに物凄く弱いです(苦笑)
ガラスだけではなく銀器とかの金属もそう。ツルリとした鏡面も美しいけれど、
槌で叩いたような文様に強く引かれます……。


「バベットの晩餐会」……★★★★★★★☆……75点。


2016年5月14日


ブノワ。


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未来は本当に明るいのか?……ステーブ・ジョブス。 

 

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パソコンは嫌いです。出来れば触らずにいたいです。
嫌いというより信用していないのね。
デジタルってさ、実態がないでしょう?写真で何度か懲りています。
嫌いと言っても、今やパソコンなしの生活は考えられないし、
パソコンなしでは仕事も出来なくなるので、おまんま食い上げです(苦笑)
なるべくパソコンから離れて大自然の中で生活をしたいと思うけど……。
そうだっ!作家の大先生になって田舎暮らし!原稿はメールで送ればいいじゃん!
ハッ……それだってパソコンが必要ですもんね(笑)もうがんじがらめ。
実は、最後に勤めた会社では仕事で1000万円をこえる特注のパソコンを弄っていました。
どうにもこうにも……いよいよ個人的にパソコンが必要になり、
迷うことなく購入したのがマッキントッシュの「iMac」。
当時の機種は1枚めの写真みたいに大福みたいなハードディスクに、
バーが付いていてモニターが自在に動くタイプ。
今のスタイリッシュなデザインと違ってどこかユーモラスでした。
この1枚めの写真、前にもお見せしましたよね……大好きなのです。
ウィンドウズ?全く迷いませんでした。以降、浮気はせずにズゥ~っとマック・ユーザー。
ただ今、3台めです。今までのものは全て取ってあるんですよ。
何事も形から入る僕にとって、マッキントッシュは理想的なパソコンでした。
美しいデザイン、豊かな機能性、使用説明書……そんなものありません。
機械音痴の僕が触っているウチに出来ちゃう凄さ!
操作性もですが、一番気に入ったのがディスプレイの美しさです。もう圧倒的!
フォントが美しくて書体がそのまま再現されている(これ重要!)のも魅力的でした。
ウィンドウズなんて電光掲示板みたいだものね(笑)

そのマッキントッシュの創業者、スティーブ・ジョブス……。
早々と評伝を元にした作品が公開されました。
公開初日に観に行きましたが、チョッとビックリでした。
こ、こ、こ、これは!まるで一杯道具の優れた三幕の舞台を観ているよう……。
1984年、1988年、1998年……それぞれ「Macintosh」「NeXT Cube」「iMac」の、
新製品の発表の日のステージ裏を舞台とし、オープニングまでの数十分が舞台。
登場人物はほぼ同じで機関銃のような会話劇。年代を経るごとに変わる登場人物の立場と境遇。
メイクと衣装、その他、時代考証がキッチリとなされ、まるで上質の会話劇を見るようでした。
勿論、マイケル・ファスベンダーやケイト・ウィンスレットをはじめとした、
映画界きっての芸達者が揃ったこともありますが、久しぶりに会話劇を堪能しました。
僕は映画でペラペラとテーマや状況説明をされるのは好きではないのです。
オリジナルが戯曲の場合はどうしても台詞が中心になりがちですが、
「絵で見せなよ!」そう思っちゃう口なんです。
でも、これだけ役者が台詞を操る作品を見せられると唸ってしまいます。
やっぱり役者って台詞が粒立たないと……。
劇中に小沢征爾のエピソードが出て来ますが、
素晴らしい俳優たちを思う存分料理し、適材適所、最高の音を出させ、
演奏させたダニー・ボイルの指揮者ぶり。
これだけ素晴らしい俳優を使って映画を撮れる監督冥利ってどんなでしょうね。
アーロン・ソーキンの抜群の脚本も称賛に値します。
チョッと調べたらアーロン・ソーキンは元々、劇作家なんですね。
深く深く納得……首が取れるほど納得しちゃいました。
原作は元にしているけれど、エピソードを集め、再構築した手腕に脱帽です。
この作品……是非、舞台化して欲しいものです。

マイケル・ファスベンダーが素晴らしいです。
「悪の法則」の時、なんて素晴らしい俳優が出て来たんだろうと思いましたが、
端正な顔立ちに加えて粒立つ台詞回し、チョッと鼻にかかった声も魅力的です。
ケイト・ウィンスレット……既に大女優の風格があります。
メリル・ストリープの後に続く2人のケイト、ケイト・ブランシェットと、
そしてこちらのケイト・ウィンスレット。本当に達者だと思います。
脇の地味な役をキッチリこなし、実はスティーブ・ジョブスに仄かな好意を寄せるさまを、
的確な演技で見せてくれます、まさに映画の申し子。



 「私が興味を持つ主人公は、皆、どこか精神的に問題を抱えていることが多いのです……。」

その昔、メリル・ストリープがインタビューに応じて言った答えです。
僕は元になった原作は読んでいませんが、スティーブ・ジョブスも可成の曲者だったようです。

 「どうしてそんなに嫌われようとするんだ?」

そんな台詞も出て来ます。
映画独自の表現方法であるクローズアップの多用、達者な役者たちの素晴らしい台詞回し。
時代を追うごとに変わって行く登場人物たちの衣装やヘア、
カツラやメイクで絶妙な時代感が出ています。全ての要素が結実した圧倒的な映画美!
あまりにエキサイトして1日置いてまた観に行ってしまいました。



パソコンに限らず、何でもそうですが、
便利なツール(道具)って使われてしまってはダメなんです。
冒頭に、アーサー・C・クラークの実写が入ります。
小さなコンピューターが家庭に入り、各人がそれを持つことで、
どれだけ素晴らしい世界が、輝かしい未来が開けるかを説きます……。
アーサー・C・クラークが予言し、スティーブ・ジョブスが実現した世界……。
果たして本当にそれが人間を幸せにしているかは甚だ疑問です。
便利にするハズのツールが人間を退化させていると思うのは僕だけでしょうか。
何でもそうですが、道具は使いこなしてナンボ……そう言うことです。

「スティーブ・ジョブス」……★★★★★★★★……80点。


2016年2月28日


ブノワ。


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オリエント急行殺人事件。 

 

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懐かしいです……あれは確かうららかな5月でしたか……。
ロードショウで日比谷映画(現在のシャンテの辺り)に行ったこと。
満席でお立ち見が出て、劇場の周りに人が溢れていましたっけ……。
30年ぶりに「午前10時の映画祭」にて「オリエント急行殺人事件」を観てきました。
アガサ・クリスティー原作、シドニー・ルメット監督作品、1974年の傑作、
推理小説の映画化としては金字塔ではないでしょうか。
クリスティーの原作は、現在とっくの昔に出尽くした感のあるトリックの中でも白眉と言われ、
数多くあるクリスティーのオリジナルのトリックの中でも最も有名なトリック。

この日も場内はほぼ満席……人気の程が伺われます。
映画は世界的に大ヒットし、以降、「ナイル殺人事件」「地中海殺人事件」「クリスタル殺人事件」……。
日本における横溝正史作品の映画化のようにチョッと推理小説の映画化ブームになりました。
少年だった公開当時、キャストを見て一瞬「地味」……と思ったものですが、
今、改めて顔触れを見ると、エルキュール・ポワロにアルバート・フィニー、
ローレン・バコール、ジャクリーン・ビセット、マイケル・ヨーク、イングリッド・バーグマン、
ショーン・コネリー、バネッサ・レッドグレーブ、マーティン・バルサム、
アンソニー・パーキンス、ウェンディ・ヒラー、レイチェル・ロバーツ……。
主役のポワロを演じたアルバート・フィニー以外は、
アルファベット順にクレジットがあることからも分かるように、
名前の順列を付けられないくらいの大スキラ星のようなターが揃っています。
そうそうたるメンバーです。当時、人気があった俳優と言うよりは、
各々がハリウッドや各国の映画界で一時代を築いた大スターの競演です。
リチャード・ロドニー・ベネットの流麗な音楽、名手ジョフリー・アンスワースの重厚なカメラ、
トニー・ウォルトンの華麗な衣裳、そして、リチャード・アムゼルの傑作ポスター……。
アルバート・フィニーの大仰な芝居には、いかにもエルキュール・ポワロ!とばかりに、
膝を打ち得心しますが、俳優の各々が演技を楽しみ、推理映画の醍醐味を感じさせてくれる1本です。
中でもアカデミー賞で助演女優賞を受賞したバーグマンだけは頭抜けた扱いになっています。
オリエント急行に乗り込む際に、プラットホームでチョッとした小芝居をさせます。
全世界を一世風靡した稀代の大女優に対する敬意でしょうか。
ご本人が言うところの「忘れてしまったスウェーデン訛り」(バーグマンはスエーデン生まれ)を駆使し、
おどおどした宣教師役を楽しそうに演じています。

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写真は箱根は「ラリック美術館」に展示してあるオリエント急行のプルマン車。
このルネ・ラリックのレリーフがある食堂車が実際に撮影に使われたとか。
娘のスザンヌ・ラリックがデザインした「花束」の飾りがある車両で尋問が行われたのでした。
来年にはリメイク版が公開されるとか……キャスティングは?
監督、ケネス・ブラナーの手腕が楽しみでなりません。

「オリエント急行殺人事件」……★★★★★★……60点。


2016年2月2日


ブノワ。


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My name is Max……マッドマックス 怒りのデス・ロード。 

 

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年明け早々、いつも更新を楽しみにしている真紅さんのブログがアップされました。
毎年~新年恒例の「2015 真紅のthinkingdays Best 10 of the movie(表/裏)」と、
「2015 真紅デミー賞 & 10 Years Anniversary」の2つの記事です。
映画の好みや俳優の好き嫌いがいくら一緒でも、なかなか同じベスト10になるとは限りません。
真紅さんは「ブロークバック・マウンテン」の記事で熱く熱く映画の世界を語っていましたからね、
真紅さんとは結構、趣味が一緒?真紅さんがどんなベスト10を選んでいるか、楽しみだったのですが……。


な、な、な、何と!「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がダントツの1位!
しかも「2015 真紅デミー賞」の方は各賞を総舐めではありませんか……。
そう言えば、映画賞シーズンの開幕と共に「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の、
既にカルト的な高い評価が聞こえて来ていましたが……。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」……観たかったんですが、
丁度、タイミングが悪かったり、上映時間が合わなかったりで、
スッカリ観逃していました。僕の中では2作目の「マッドマックス2」が、
子供の視線からヒーローを描いた1作目を凌ぐ傑作だったこともあり、
ティナ・ターナーが怪演を見せて何やら別物になってしまった(笑)3作目から約30年ぶりの新作、
世界一のヒップを持つ(と、僕は思っている……。)シャーリーズ・セロンと、
このところお気に入りのトム・ハーディー主演に食指が動いたものの、
監督がジョージ・ミラーと言うことでチョッと躊躇していたのも事実です。
同じ監督が自作の続編やリメイクをするとロクなことありませんから(笑)

焦って検索しました(笑)検索したら上映している名画座がありました!
やっぱり東京っていいなぁ……(笑)

さて、真紅さんのブログで汗掻いた翌日(笑)いそいそと観てまいりました。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」……期待を裏切らない興奮の1本でした。
核で汚染された地球でごく僅かの人間がサバイバルしている世界。
狭く小さな世界ながら、既に支配する者とされる者にハッキリ別れる社会が出来あがっています。
圧政を敷くイモータン・ジョーも後継者、将来を憂いている……。
そこに生きる人間たちや、異形の支配者、イモータン・ジョーの世界を含む、
全ての造形が豊かで見事でした。説明も台詞も極力少なく、
映画ならではの「絵」で見せてくれることも嬉しいし、さらに驚くことには、
目一杯のボリュームのジャンキーXLの音楽と映像とがガッチリと一つになっていて、
オープニングからラストまで有り得ないくらいの疾走感があること。
映像と音楽がこれほど一つになっている作品を僕は知りません。
それから昼と夜のシーンの静と寂のコントラストが美しいです……カーチェイスの驚異の映像。
どうやって撮影したんでしょう?もうビックリでした。
映画が丸々1本、監督のジョージ・ミラーの世界になっていたのも凄いです。
主役の2人、トム・ハーディーとシャーリーズ・セロンが素晴らしいです。
今やトムと言えば、ハンクスでもクルーズでもなく、僕の中ではトム・ハーディーなんですが、
(昔はトム・ベレンジャーだった……。)
一人芝居の「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」の圧倒的な存在感を見るまでもなく、
当代一の男優と言ってもいいでしょう。役の幅が広いことが最大の武器。
シャーリーズ・セロン……汚れ役を好む美人女優は飛び切り根性が座っていて、
いつもどのような役柄を演じてくれるのか楽しみなんです。
圧倒的に美しい「Dior J'adore」のCMとは180度違う役作り。
これほどゴールドが似合う女優もいないと思うのですが、
その美しさを封印し、丸刈りにして目元をタールで黒くメイクする……。
寡黙な女戦士の痺れるほどの格好良さ。
2人の過去が最小限にしか語られいことも昨今の饒舌過ぎる映画を見慣れてしまった僕には非常に新鮮でした。
無理矢理に台詞やCGで全部を説明しようとせず、観客側に想像する余地を残したことも、
映画全体の不思議な世界観に繋がり、功を奏した感があります。
ラスト・シーンの余韻……マックスとフュリオサが目と目で別れを告げるシーン、
初めは敵対していた2人が、追われることで協力し合い、お互いを認めるようになる……。
どんな饒舌な台詞よりもお互いを理解し尊敬している様子が手に取るように分かる名シーンでした。

今日の写真は難しかったです(苦笑)写真がないと記事を書かないこのブログ、
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」的な写真なんか日常では撮れないものね……。

続編があるそうですね。
ハードルが上がっちゃいましたが、次作も楽しみでなりません。
重たい尻を叩いてくれた真紅さんに感謝、感謝です。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」……★★★★★★★☆……75点。


2016年1月20日


ブノワ。


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