変幻自在な「雪之丞変化」。 

 

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このところ旅の記録、ガーデンの記事ばかり続くので、
閑話休題、最近、観た「雪之丞変化」のことなどをチョッと……。


僕の人生の学校、学びの場は映画館と前に書きました。
本当、学校ではまったく勉強しませんでしたから(笑)
よくぞ卒業できたもんだと自分でも不思議に思います。
何となく行かせて貰った学習塾ではレタリングに熱を入れていたし、
高校時代は授業中にイラストレーターの山藤章二の書き文字を真似る練習(笑)
今の僕の書き文字はそのころの名残なのでございます(爆)
漢字の読み書きが得意なのは、ただ単に好きだからに他ならないし、
科学、物理、数学……全滅でした(笑)本当にイヤだった。
卒業?……まぁ、ギリギリ?

大人になってから、改めて誰かに何かを習ったのは、
三味線と金継ぎのみ……これは新鮮でした。
この技術系のテクニックは先生に習う必要があるけれど、
例えば写真!これは今やシャッターを押せば何かしら写る、
素晴らしいカメラのお陰で、素人でも可成りいい線の写真が撮れる……。
勿論、偶然の産物であることの方が多いのですけどね。
誰かに習う必要なんで全くないと思っています。



 「流す涙が芝居なら……♪」

さてさて、5月から6月にかけて2回、
久し振りに市川 崑の「雪之丞変化」を劇場で鑑賞し直しました。
往年の大スター、長谷川一夫の300本記念映画です。
兎に角、面白い!岩下志麻主演の「五辯の椿」もそうですが、
よく出来た復讐劇ほど面白いものはありません。
「雪之丞変化」は、前に1度、20才の頃に映画館で観たことはありましたが、
こうして大人になってみると、ピッタリと僕のツボに填まることにビックリしました。
それは、良く考えてみると「雪之丞変化」が僕の好みにピッタリなのではなくて、
知らず知らずの内に、僕が多大な影響を「雪之丞変化」から受けていた事実を、
改めて再認識したことに驚いたと言った方が正しいです。

市川 崑のシニカルな視点。皮肉の中にも愛情を感じる温かさ……。
日本古来の、浮世絵から連綿と続く平面の中で構成するデザイン力。
例えば、分かりやすく写真に例えて言えば、
正面切って被写体を切り撮るのが基本中の基本なんですが、
それでは、所謂「日の丸弁当」になってしまいます。

下の写真は比率から言うと、
映画のスタンダード・サイズ(カメラ・フィルムの3:4)で撮った場合。

483A6286 - バージョン 3

それをマスターした上での画面構成……そこに各人の個性が出る訳です。
市川 崑が映画のワイドスクリーン、所謂、スコープサイズで処理するとこんな感じ……。

483A6286 - バージョン 2

因に、今日の1枚目の写真は僕が通常のクセで撮った1枚。
常日頃、無意識の内に「市川 崑ごっこ」をしている訳です。



市川 崑の晩年の傑作は「細雪」ですが、脂が乗り切った頃の「雪之丞変化」、
市川 崑ならではの斬新な画面構成は、決して古くなるどころか、
今のどの作品と比べてみてもモダンで斬新です。
往年の巨匠ヴィスコンティでさえ持て余したシネマスコープの横長の画面(1:2.35)を、
縦横無尽に使いこなすカメラワークは驚きの他ありません。
一部を抜かして全編スタジオ撮影。ほぼ室内か夜の景色の中での撮影は、
左右に大きく余白を取り、俳優の顔や姿だけにスポットライトを当てる、
いわば舞台のピンスポットのようです。特に顔、それも目の辺りにだけ照明を当て、
長谷川一夫がケレン味タップリに、まるで歌舞伎役者のような目の芝居をします。
この作品が撮られた当時(1963年)は勿論CGなどと言うものはありません。
女形と盗賊の2役を演じる長谷川一夫を巧みに一つの画面に納める他、
冒頭の舞台のシーンで降りしきる雪を激しく見せるために、
後からフィルムに雪を描き足すことしかしていません。
真っ暗闇の夜陰に煌めく白刃、岡っ引きの捕りものの縄が右から左に闇を走ります。
兎に角、世界の巨匠たちが持て余した横長のスクリーンの余白をデザインし、
まるで浮世絵の構図さながら、日本画の特徴である平面の構成、
それを完璧に使いこなした市川 崑のセンスは凄いです。


長谷川一夫が女形の雪之丞と、盗賊の闇太郎を怪演。
美貌の盛りは過ぎているものの、ねっとりとした男の魅力は二枚目役者の面目躍如。
山本富士子が女スリ、軽業のお初で好演。
この方は、はんなりしっとりの美貌のご婦人の役よりも、
はすっぱで気っ風のいい小股の切れ上がった女賊の方が性にあっているかも……。
優れた女優は殆どの人が気質が男……そんな一面が出ているのかもしれません。
兎に角、美しい若尾文子!先だってはCMで足がタコになっていましたが(笑)
わざと大きめの鬘をかぶり、華奢でウブな娘を演じます。
将軍の寵愛を一身に受けていると言う設定が納得です。
中村鴈治郎のふてぶてしさと、いかにも「悪」って言う面構えは、
どの作品を見てもお約束ごとの一つになっていて、
中村雁治郎と三島雅夫の喰えない坊主役は、日本映画史に燦然と輝きます。
他に、長谷川一夫300本記念作品と言うことで、
勝新太郎、船越栄二、市川雷蔵など、
そうそうたるスター俳優がゲスト出演です。

改めて自分が多大な影響を受けた作品を観ると、
驚きの他に、まだまだなってない、頑張らなくっちゃ!
……と、一層の精進を誓うのでした。


「雪之丞変化」……★★★★★★★★☆……85点。


2017年6月11日


ブノワ。


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コメント

 

それは才能です

時代劇の映画が苦手で「雪之丞変化」と聞いても、
へーー なんて間抜けな声が出るばかり・・・

「細雪」はブノワ。さんの記事であらためてDVDを買って見たのでした。
谷崎の本を読んでいましたが映像になるとまた違う美しさがあった。

で、市川崑監督。
抜けた前歯のところへタバコを挟んでいたあのかたですね。
私が敬愛していたTVの監督(すでに故人)が一番尊敬していた人で、
「おとうと」だけでもいいから見なさい。と言われていて見ずじまい。
大好きな岸恵子さんが市川崑さんの映画にはいっぱい出ているのにね。

映画からたくさん学んだ。とブノワ。さんはおっしゃるけど、
私の死んだ父は年間360本映画を見て照明室へ入り込んで芝居やレビューも見たという話ですが、
う~~ん(笑)
人間的にそう見上げた人物ではなかったぞ(苦笑)

父は感受性の才能が無いのに数だけは見たんでしょうね。
私だって「あーおもしろかった」で忘れちゃうんだし。
あーあ。です。




ムー #qiVfkayw | URL | 2017/06/12 22:02 | edit

僕も苦手なの。

ムーさんへ。
おはようございます。
メッセージどうもありがとう!
何だか梅雨寒ですかね……窓開けて寝ると寒い!(苦笑)
さて、僕も実は時代劇が苦手でございます。
でも、やっぱり時代や国が違っても、お話が面白いと別ですね。
「雪之丞変化」は本当に面白いです。
だから市川春猿が改名した時は「?」が100個飛びました。
チョッと荷が重くない?名前負けしていない?って。
市川 崑って前歯抜けてたの?タバコは知っているけれど(笑)
好きなんですよ……市川 崑。ビリー・ワイルダーと並んで好き。
岸さんは一番最初の鶴子じゃなかったんですよね。
山本富士子だったんですが、山本さんはもう映画は出ないって。
そこで白羽の矢が立ったのが岸さん。
監督がパリに電話して二つ返事だったんじゃないかな?
全然、鶴子のイメージじゃなかったけど、お見事でした。
お父さま、そんなに観ていらしたんですか……。
羨ましいなぁ……でも何かしら糧になっていたんじゃありませんか?
それだけ観ていて何も変わらないハズないものね。
「雪之丞変化」はテレビじゃダメなの。
画面の半分簡単にカットされちゃうから。
映画館でやることがあったら是非、ご覧になってみてください。
今日はこれから「イヴの総て」を観ます!

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2017/06/13 08:23 | edit

時代劇、好きです。

ブノワ。さん、こんばんわ。時代劇、好きなんですよね・・・・・・。どち
らかというと、戦国時代が好きだったりします。

「雪之丞変化」。映画は観たことがないです。長谷川一夫さんなの
ですね。ドラマで滝沢秀明さんが演じられていて、毎週、観ていま
したが、どうも迫力がないです。やはりテレビの世界だからなんで
しょうか。映画の世界で、市川監督の「雪之丞変化」を観てみたいです。
新潟、上映されるのかな。

ブノワ。さん、カタツムリのオブジェを用いての説明、とっても、わかり
やすいです。

愛 #pdK/Zy5g | URL | 2017/06/14 21:50 | edit

へぇ、意外(笑)

愛ちゃんへ。
おはよう!元気にしている?
メッセージどうもありがとうね。
時代劇、それも戦国時代が好きなんだ……チョッと意外かも。
僕は名前が覚えられなくてダメ。よく出来た作品は別だけどね。
「雪之丞変化」はもう終わっちゃったよ……「新午前10時の映画祭」ね。
前もって言っておけばよかったね、ゴメンちゃい。
滝沢くんねぇ……やりたがる気持ちは分かるけど、
まだまだお子ちゃまじゃん。あれは成熟した大人がやらないと。
映画のスクリーンサイズって、写真に繋がるものがあります。
比率ってそれぞれだけど、如何に画面を構成するか?
映画の場合、絵が動くから写真よりももっと大変だと思うの。
1本の映画を初めからお仕舞いまでキッチリとコントロールするデザイン力。
写真は写真でまた大変だよね。風景や静物はまだいいけれど、
被写体が動く場合、先ず、ピント、それから構図です。
瞬時に構図を考えなければいけないでしょう?
こちらもまた勘と瞬間の判断力かな。
タップリと勉強して来ました。これからの写真に生かせますように!
愛ちゃん「イヴの総て」観てね、こちらも傑作だよ!

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2017/06/17 06:19 | edit

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