フローレンス・フォスター・ジェンキンス。 

 

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 「アナタ、チェロなんか邪道よっ!
  クラシックの華はピアノと声楽よっ!」

僕の長年の大親友(一番古いかも……。)でゲイのMが、
クラシック、特にチェロに目覚めた僕に、
引っ繰り返るような甲高い声で言い放った(笑)
彼は目から鼻に抜けるように頭が切れるのだけど、
僕からは頭抜けて変人の評価を貰っている。兎に角、本物の変り者、
辞書で「変」と引くと名前が載っていそうなくらい(笑)

そのMが、ある日「これ聴いてみて。」と1本のカセットテープを僕に手渡してきた。

 「何だろう……。」

……訝しく思いつつ、家に帰って聴いてみると……。

超絶ヘタクソな「夜の女王のアリア」がスピーカーから流れてきた。

文字通り、息も絶え絶え、絶叫ともつかぬ歌声は、
音程どころかリズム感の欠片もない代物……。
伴奏のピアノがテクニシャンで、テンポが歌の息の都合で、
上がったり下がったりするに難なく合わせてる(笑)
間奏では、それまでイライラしながら歌のテンポに合わせて弾いていた、
ピアノが正しいテンポで軽快にリズムを刻みます……。
暫し、絶句した後、ははぁ~んと思い当たったのは、
オペラ好きで「夜の女王のアリア」好きのMがピアニストを雇い、
スタジオで録音したものに違いない(笑)
そこまでやるか、そんなにこのアリアが好き?(爆)
コロラトゥーラの超絶難曲をどうにか歌い終えたあと、
どちらからともなく沸き上がるMとピアニストの笑い声……。

この笑い声さえなければ、この録音は、かの有名な歌姫、
フローレンス・フォスター・ジェンキンスの「夜の女王のアリア」そのものでした。
そのフローレンス・フォスター・ジェンキンスの晩年をメリル・ストリープが演じた、
「マダム・フローレンス!夢見るふたり」を初日と1日おいて3日の2回観てきました。
しかしこのタイトル……口にするのもイヤじゃ!センスの欠片もない(苦笑)



監督スティーブン・フリアーズで映画化されると聞き、
大層楽しみにしていた作品です。劇中で歌を披露することが多いメリル・ストリープですが、
今回ばかりは勝手が違います。いくら実在のヘタクソな歌手の役とは言え、
歌う楽曲はオペラのアリア、「ラクメ」や「鳥のように」……。
中でも最も難曲とされるモーツァルトの「魔笛」の中の、
「夜の女王のアリア」をメインで歌わなくてはなりません。
先ずは、いかにヘタクソに似せて歌うかではなくて、
キチンと歌えるようにレッスンを受けてから、
フローレンスだったらどのように歌うかを考えて崩して行ったそうです。
聴いている内に、ひょっとしたら完璧に歌える?そう思わせるくらいの歌唱力。

ヒュー・グラントが暖かくフローレンスを見守るシンクレアを好演。
「シング・シング・シング」で華麗なステップを見せます。
「モーリス」から約30年、いい役者になりました。
こう言う洒脱な役者っていませんよね。演じて出来るものじゃないし。

ピアノ伴奏のサイモン・ヘルバーグ……。
有り得ないくらいの超絶音痴のフローレンスに実際に接するうちに、
共感し、自らの夢に重ね合わせて共に活動するコズメを好演。
もしかするとアカデミー賞の助演賞も夢ではありません。

ただチョッと残念だったのは、監督のスティーブン・フリアーズのキレが今一だったこと。
往年の「グリフターズ/詐欺師たち」や「危険な関係」などを思い出すに付け、
そう思わざるを得ません……チョッと残念。

「マダム・フローレンス!夢見るふたり」……★★★★☆……45点。


今日の写真は僕のコレクションから……。
グレッグ・ゴーマン撮影のメリル・ストリープ(部分)。とても美しいです。
メリル・ストリープ本人は、フランス人の写真家、
ブリジット・ラコンブが撮ったポートレートがお気に入りですが、
僕はグレッグゴーマンとアニー・リーボヴィッツが撮ったポートレートが好き。
メリルが顔に砥の粉を塗って両手で顔の皮膚を引っ張っているポートレート。
この写真、アニー・リーボヴィッツの個展が新宿の三越で開催された時、
エージェントに幾らで手に入るか聞いて貰ったんです。
確か80万円弱とか……泣く泣く断念しました。勿論デパート価格と言うこともあるけれど、
既に美術館入りしている彼女の作品です。それに、欲しいからと言って、
1枚だけプリントする訳にはいかないんです。彼女みたいな大御所の場合、
1作品に付き、15枚から25枚プリントをしてエディションを付けます。
中には、ジャンルー・シーフみたいに図録から好きな写真を選び、
1枚だけプリントしてくれる作家もいますけど……。

そう言えば、ハーブ・リッツにお目に掛かった時、
「メリル・ストリープの写真は撮らないんですか?」と、聞いたところ、
「彼女は近くに住んでいるからいつか撮るよ。」そう答えていたのが懐かしいです。
バブルの終わりの頃、チョッと背伸びをすれば、ブルース・ウェバー、マイケル・ケンナ……。
まだまだオリジナル・プリントに手が届いたいい時代でした。
今や美術館に入っちゃってマルが一つ違うものねぇ……。



2016年12月28日


ブノワ。


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