藤田嗣治を推理する。 

 

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つい先日のこと……。
親友が「藤田、見て来た!」って……。
なに、なに、どこで藤田をやっているの?
全く余裕のないことが露呈してしまいますね。これだけ藤田好きの僕なのに……。
そう言えば、京都の親友も観に行ったって言っていたっけ……。
早速、会場と会期を確認……ところが!行ける日が殆どないじゃないですか!
無理矢理、算段して時間を作り、悪友Rと2人で行って参りました、
「生誕130年記念 藤田嗣治展 —東と西を結ぶ絵画—」です。




 「絵描きは絵だけ描いて下さい。
  仲間喧嘩をしないで下さい。
  日本画壇は早く国際水準に到達して下さい」

この言葉を残してフランスへ旅立ち、
生涯、二度と故国日本に帰らなかった画家の画業を、
6章に分けて展示されたとても見応えのある展覧会でした。

日本の画壇に嫉妬され見放された藤田ですが、
実に多くの作品が日本に存在します。それだけ日本人に愛されているんですね。
藤田の作品には個人蔵が多いのも特徴の一つではないでしょうか。
箱根ポーラ美術館の、圧倒的で膨大なコレクションをはじめ、
素晴らしい作品が国内で見ることが出来ます。
数年前のことですが、仕事の打ち合わせでお邪魔したお宅で、
藤田の聖母子像の水彩画を見て驚いたことがありましたっけ。
1人で炎天下の中、訪れたパリ郊外の藤田のアトリエや、
凍てつく冬のランスの藤田の礼拝堂など……今までの藤田に関する想い出も沢山蘇って来ます。
アトリエで聞いた音声ガイドの藤田の声は、どこか永 六輔に似た優しい響きでしたっけ。
それから、先日の有り得ないほど空虚だった小栗康平の映画も(苦笑)
府中と言う土地柄でしょうか……それほど、混んでいません。
まだまだ会期は残っていますので、是非、皆さんも足を運んでみてください。



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さて、藤田嗣治と言えば、ついこの間チョッと面白いことがありました。
それは、オークションで見かけた藤田の6号の油彩画を巡るあれこれです……。
その油彩画は、仕事に出る直前、朝のバタバタと慌ただしい時間に、
Yahoo!のトップページの片隅のオークションのコーナーに載っていた、
小さな油彩画の写真を見たのが切っ掛けでした……。
僕は一目見て、常日頃、大好きでコレクションしている、
栗原喜依子女史の油彩画だと思い、ページを開いてみると……。
な、な、な、な、何と、右下の片隅に「Foujita」のサインが……。

 「・・・・・・・・・えっ?おかしい……。」

絵のタッチはどこから眺めても栗原喜依子女史のものでした。
カンバスに下地材を丁寧に塗りこめ平らにした乳白色の肌、
面相筆で描かれた繊細な筆致……モチーフはオリーブの樹がある外国の一軒家の絵でした。
僕は実際に何枚か栗原喜依子女史の作品をコレクションしていますから、
見間違えようがないんですが、確認しようにもパソコンの画面でしか確かめられません……。
そこで、念のために出品者の他の商品を見てみると……。
出てくる出てくる……藤田以外にも、浅井 忠、岸田劉生、梅原龍三郎、ドガ、
モディリアーニ、川合玉堂、ロートレック、ピカソ、ルノアール、棟方志功……。
世界に名立たる大画家の作品が……しかも「肉筆」と明記されていました。
「肉筆」は誰かの手による「肉筆」でしょうから嘘ではありません。
そこに「真筆」と「贋作」を勘違いさせる巧妙な言い回しがあるのです。
ヤフーのオークションでは、少し前に偽物に対する取り締まりが厳しくなりました。
その辺をかいくぐる新手のインチキ商法なのでしょう。
パリ、サントノーレの一流の画廊じゃあるまいし(入り口に鍵が掛かっている。)
一介のオークション出品者にこれだけの名画が集まる訳がありません。
先ず、間違いありません、贋作ですね。他にも出ている藤田の作品を見ると、
カンバスの麻布の織り目が出ている画布に描かれた油彩画とか、
(題材は乳白色の肌の技法が完成したころのモチーフ。)
また、極細の面相筆で引かれているハズの線が、
まるでサインペンでなぞったような稚拙な模写……。

件の栗原女史のものと思われる油彩を帰宅してからPCの大きな画面でよく観察します……。
カンバスが張られている「6号」と刻印された木製の枠。
その時代をまったく感じさせない新しい今の時代の日本製の額は、
木枠の組み方が藤田の時代のフランスのものとまったく違います。
そこから推測されるのは、おそらく、栗原喜依子女史の作品をオリジナルの枠から外し、
(女史は木枠の右側に作品のタイトルを、左側にサインを入れている。)
新しい木枠に張り替え、絵の表面の右下に入っていた女史のサインを消し、
その上に藤田のサインを入れたのに違いありません。
さらに写真には、栗原喜依子女史の作品の額縁をよく制作する銀座の老舗、
「古径」のたとう箱や作品を包むウコンで染められている黄袋まで一緒です。
もっともらしく「東京美術倶楽部鑑定委員会」の鑑定書なるものが作品に張り付けてあります。
鑑定は長年美術商をされて来た著名な方の名前が……。
「東京美術倶楽部鑑定委員会」……一体どんな組織なのでしょう?
よく、この手の鑑定書や、遺族による鑑定書がまことしやかに添付されていますが、
果たしてその真偽のほどは?僕たち素人に追跡不可能です。


では、何故このようなことをしたのでしょうか。
藤田の独特な作風を苦労して真似て作品を描くより、
(乳白色の下地を再現したり、面相筆で極細の線を引いたり……。)
藤田の作風に似ている栗原女史の作品のサインだけを入れ替えたほうが、
格段に容易く「それらしい」贋作を作れるからです。
実際に「ヤフオク」で「藤田嗣治」で検索してみてください。
夥しい数の藤田の偽物が横行していますから(苦笑)
僕がオークションで見掛けたこの作品、ほぼ99.9パーセント、
いやいや100パーセントの確立で贋作と断定していいでしょう。
贋作と言うよりはサインを捏造したまがい物。
よく中島誠之助氏が仰言るように、贋作を捏造し、変な銘を入れなければ素晴らしい作品なのに、
そこに偽物の印が押されたがためにただの偽物になってしまったパターン。
藤田の偽のサインが入らなければ、栗原女子の素晴らしい風景画だったのに……。


10万円まで覚悟してオークションに臨みましたが、
最終的には16万円チョッとまで上がり断念しました。
絵は間違いなく栗原喜依子女史のものに間違いありませんから、
偽物の藤田のサインを丁寧に除去して、本来の輝きを取り戻そうと思ったんですけどね……。

落札した人はその辺のことを承知で落としたのでしょうか?
藤田の真作として落としたのなら……。
ほんの半日でしたが、チョッとした推理小説を読むような感覚を楽しみました。



今日の1枚目は、ランスにある藤田のチャペルの入り口から祭壇を望みます。
チャペル内は撮影禁止なのですが、日本から来た僕たちが熱心に見ていたからでしょうか……。
受付のマダムが「入り口からだったら写真を撮ってもいいわよ。」って。
その辺の個人の判断が自由に出来るところが日本とは大違いです。
それからチョッと前に僕が落札した栗原喜依子女史の油彩画2枚、
手前は「サンマルタン運河付近」です。これ、大好きなのです。
どうですか、チョッと藤田を彷彿とさせませんか?


2016年11月23日


ブノワ。


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コメント

 

こんばんは。
Foujita、 お好きだったのですね。
以前に比べればFoujitaの展覧会は多くなりましたね。
現在DIC川村記念美術館と府中市美術館で開催されて
いますね。 分かっちゃいるけど時間とお金の両方がない
私としてはどうにもならない。
あとはフランスに行ったら晩年の家と教会に行くことを
心に固く誓っていまは我慢。
そのうち我慢できなくて朝一の新幹線に乗り込んでいるかも
しれません。
今 次に手に入れたいバラを考えていました。
Under the Roseとブノワマジメルも
候補に入っていますよ。

saito #njsd7PZY | URL | 2016/11/23 21:43 | edit

全部買ってくださいね!(笑)

saitoさんへ。
こんばんは。メッセージどうもありがとうございます。
昨日の雪は大丈夫でしたか?今日は一転ポカポカ……。
調子狂っちゃいますね。体調管理が大変です。
藤田は好きなのです。物凄く好き。
そうそう、藤田の展覧会が可成り頻繁に開催されるようになりましたよね。
作品が多いって言うこともあるんじゃないでしょうか。
ポーラ美術館なんて物凄いですよ!数年前のフジタ展……。
これでもかって言うくらいに壁一杯に作品が並んでいて、
しかも、新収蔵作品のお披露目と来ました(苦笑)
またやらないかなぁ……受付のお姉さんには言って来ました。
「またやってね!」って(笑)川村記念美術館は行けるかもです。
時間が出来たらサッと行っちゃわないといけません。
パリ郊外の藤田のアトリエは是非!ここも凄いです。
建物、丸々「Foujita」なんです。藤田の手仕事で出来ています。
ランスのチャペルは寒い時期は閉まっていますから気を付けてくださいね。
「Under the Rose」「Benoit Magimel」……いい薔薇ですよねぇ(笑)
候補と言わず、シリーズ全部買ってくださいまし。
すみからすみへ、ズズぅ〜いとお願い申し上げます!

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2016/11/25 21:40 | edit

ブノワ。さんへ
こんばんは。行けれたんですね!
僕たちも神戸まで態々行った甲斐がありました。二人ともモロにブノワ。さんの影響を受けていますからね!ほら、お陰様で(笑)店にも飾ってあるし!知識も持っておいた方がねぇ・・・
で、オークションですけど、たまに二人で何か落とす?って冗談交じりに見てたんですけど、偽物ねぇ・・・見る目が無いから危うく買うところでしたよ(笑)今度からその気になったら相談します!でも確率でいうと買っちゃだめですね!
ところで写真の絵、素敵ですね!藤田だとばかり思ってしまいました。
僕も好きです、これ。う、うちに飾ります?(爆)
ちょっと話がそれますけど、僕も負けじと大きい画面のMac買いました(笑)

やす

やす #4ARdecsc | URL | 2016/11/27 01:25 | edit

1年ぶりくらいにコメントします。
こちらのブログを見て、今日、府中美術館に行ってきました。
初めて行った美術館でしたが、想像以上の点数の多さ、
見たことのない作品も多くて大満足です。
ありがとうございました。
いつかランスの教会や、藤田のアトリエにも行ってみたいです。

mina #QXRaNfI. | URL | 2016/11/27 23:55 | edit

ようやくね!

やすさんへ。
こんにちは。メッセージどうもありがとうね。
元気にしている?店は順調かな?クリスマスとかで12月は大変だよね……。
さて、ようやく行って来ました。展覧会って結構、全国を廻るでしょう?
ウッカリすると危ないのが、東京が一番最初とは限らないこと(笑)
よくよく見たら既に終わって地方を廻っていることがあります。
今、千葉でも別の藤田をやっているんですよね……日本人は藤田好きね。
オークションですけどね、自分が知っているジャンルですることをお勧めします。
絵画なんかは名前に騙されないこと。幾つか見るべきポイントはあります。
例えば、やっぱりいい絵はいい額縁に入っていることが多い……とか。
気になるものがあったら教えてください。僕が鑑定して差し上げましょう(笑)
お金は入りませんからね、お手製のアイスクリーム1キロでいいや。
偽物ってそんなに簡単には作れないのと、
いいものってそんなに沢山一カ所から出て来ないものです。
ゴッホが蚤の市で……殆ど確率ゼロです(苦笑)
デカいMac買ったの?イヤだなぁ……真似して(爆)
でも、本当にMacintoshhはいいですよねぇ……。

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2016/12/01 16:19 | edit

お元気でしたか?

minaさんへ。
こんにちは。メッセージどうもありがとうございます。
もうそんなになりますかね?お元気でしたか?
府中に行かれたとか……良かったです!なかなかいい美術館ですよね。
東京よりも地方都市の方がいい美術館があったりします。
国立西洋美術館だって結構、寂しい収蔵作品ですもんね。
ゴッホなんか1枚しかないんじゃないかしら?
いい作品ですけど小品の「薔薇」。
府中には来ていませんでしたけど、藤田の夫人像も素敵です。
パリ郊外の藤田のアトリエはアクセスが分かりにくいですけど、
ランスのチャペルはスグに分かります。ただし冬は閉まっていたかな?
是非、是非、とても素敵ですよ!

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2016/12/01 16:30 | edit

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