真理さんでハイドンを聴く。 

 

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 「ねぇ、アッちゃん……あの台はなに?」

 「アレ?アレは真理さんが乗って演奏する台だよ。」

 「えっ!真理さんって偉いんだ!ビックリ!」

僕の方がビックリでした(苦笑)
池袋の東京芸術劇場に藤原真理さんのドヴォルザークの協奏曲を聴きに行った時のこと。
親友Tが休憩時間に僕に聞いたのです。舞台袖から男性が独奏楽器のために台を運んで来た時に。
「真理さん偉いんだ!」って……(苦笑)
でも、考えてみれば、それまで親友Tは真理さんの無伴奏ものの独奏や、
ピアノなどとの室内楽しか聴いたことがなかったのです。
多くの演奏家を後ろに従えてチェロを弾く真理さんがとてつもなく偉く感じたのでしょう。

さらに追い討ちをかけるように……。

 「ねぇ、アッちゃん……協商曲ってなに?」

 「それは……えっと……独奏の楽器と管弦楽による曲ね。」

心臓が止まるかと思いました(笑)
だって、廻りに大きく聞こえるような大声で聞くんだもの……。
僕に集まる周囲の視線……答えられたからいいようなものの、
もしもモゴモゴしたらとんだ赤っ恥を掻くところでした(苦笑)
まぁ、Tは真理さんに「真理さんはバッハは弾けるの?」
と、面と向かってタメ口で聞いちゃった人ですし(笑)
(僕にそう聞いて来るから「本人に聞いてみな。」って言ったら本当に聞いちゃった……。)
演奏後は真理さんに「真理さん上手い!」とか「真理さんって上手なんだ……。」とか、
平気で言っちゃうヤツなので仕方ないかもしれませんが……。


さて、つい先日のこと……横浜に藤原真理さんのハイドンを聴きに行って来ました。
ハイドンの協奏曲第2番、なかなか実演に触れることは珍しいです。
とてもいい演奏でした。華やかな1番と違って、一見、ロマンチックな曲調ですが、
素人の僕から見ても、結構、超絶技巧が随所に散りばめられた曲で、
指使いなど、スポーツ的な要素も見え隠れする難曲だと思います。
美しい和音、重音奏法、低音からハイポジションまで圧倒的な演奏でした。

以前の真理さんはどちらかと言うと男勝りの演奏をすることがありました。
力で難曲をねじ伏せる感じ……ところが、年々、女性らしさとまろやかさが加わり……。
円熟の極みなのですが、そこには計り知れない努力と鍛錬があります。
日々の稽古に加え、体調を管理するための食事やジム通いなど。
晩年のピエール・フルニエが奥さまに「もっといい新しい運指を発見したよ!」と、
喜びながら帰宅したエピソードに見るように、ベテランになっても、
より良い演奏に向けての努力は決して怠らないのです。


チェロ協奏曲と言うと、誰しもがNo.1に挙げるのは、
矢張り、ドヴォルザークのチェロ協奏曲です。チェロ協奏曲のカテゴリーのみならず、
協奏曲の中でも最も重要で完成度の高い名曲、演奏時間40分超の大曲、圧倒的です。
他に、今回聴きに行ったハイドンや古典派のボッケリーニ、バロックのヴィヴァルディ、
ロマン派になると、僕が愛してやまないシューマン、ラロ、サン=サーンス、
近代になると、ドヴォルザークと並ぶ偉大なエルガーの協奏曲があります。
シューマンは僕の中で別格なんですが、サン=サーンスの協奏曲はいいですよねぇ。
オーケストラが八分音符で「ジャン!」すかさずチェロのメロディーが……。
何かこう、洒落ていて、ピリリとエスプリが効いていて、まさにフランス、
決して大曲ではないのだけれど、この曲を抜かしてチェロ協奏曲は語れない感じ。

いつも真理さんと話していて上る話題があります。
なぜ、モーツァルトにチェロ協奏曲がないのか?……です。
これだけ研究し尽くされているモーツァルトですから、
この先、世紀の大発見でチェロ協奏曲の楽譜が見付かるとは思えませんが、
フルート、ホルン、オーボエ、クラリネット、ファゴットなどの協奏曲があるのに、
なぜ、チェロ協奏曲がない……音楽会の七不思議ではないでしょうか。
真理さんと僕は、いつも同じ意見に落ち着きます。
モーツァルトの廻りにチェロの名手がいなかったこと、
晩年、お金に困っていたモーツァルトは依頼されて曲を作っていましたが、
チェロ協奏曲を依頼する人がいなかったこと、
また、当時は通奏低音の楽器だったチェロを独奏の楽器とあまり見なしていなかったこと……。
そんなところではないでしょうか。しかし、クラリネットの協奏曲などは、
本当にこの世のものとは思えない天上の美しい旋律を持っています。
天国に行ったら必ず流れているであろうメロディー……。
もし、モーツァルトがチェロ協奏曲を書いていたら……そう思います。


2016年10月20日


ブノワ。


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コメント

 

暇で、そのくせ芸術にはさっぱりワケワカメの凡人です。
音には特に鈍感で、記憶に遺されたわずかな物しかわかりません。


今宵もご飯食べながら、たまたま、今日の学校行事の稲刈りの話になって、オルセー美術館で見たミレーの「落ち穂拾い」の話になりました。
妹の孫娘がしっかりと覚えていて、それからダビッドの「ナポレオンの戴冠式」や「モナリザ」の話になりました。ゴッホにも話が及びましたが、ゴッホの絵には恐ろしいほどの生命力がないと観ていられないのも実感しました。生命力を吸い取られてしまうのです。なにやらゴッホが短命なのも分かったような分からぬような。

それは別にしても、ハイドンは懐かしい。「水上の音楽」ぐらいしか分かりません。
ブノワさんは芸術に堪能でいらして、単純に感性だけで生きている私にはわからぬ世界を持っていらっしゃるのでしょう。
モーツアルトも不思議と言えば不思議で、あれほど華麗な楽曲をもってして、時代の寵児ともてはやされながら、短命でなおかつ貧困の中の人生でした。
ヴィバルディも時代の異端児でしたし、芸術の世界は正当な評価を時には下さず、やはり私には訳の分らぬ世界なのでした。

hibari #O5sb3PEA | URL | 2016/10/21 19:34 | edit

至福の時間

いいなー生音は。
夢の時間ですね。
チェロといえば私はバッハの無伴奏チェロ組曲。
もうこれしかないぐらい、
いつでもどこでも誰とでも(笑)
というより一人で聞くのがベストです。
前にも書きましたが最初に買った無伴奏がフルニエで偶然ブノワ。さんといっしょ。
ドボルザークのチェロ協奏曲もロストロポーヴッチのDVDまで持っているのに、
ほとんど聞いていません。
もっぱら無伴奏です。ぶれません(笑)

チェロという楽器の音そのものが気持ちがいいんです。
ブルッフ「コル・ニドライ」
サンサーンス「白鳥」
「鳥の歌」
小品ばかりだ。

そんな私が若手の宮田大を聞きに行ったら、
若者らしく(?)マニアックな曲が多くてちょっとまいった。
ゴダーイの無伴奏チェロソナタを初めて聞いた。
アンコールは皆さまお待ちかね「鳥の歌」ほっとしましたー(笑)










ムー #qiVfkayw | URL | 2016/10/22 22:21 | edit

真理さんのLP版を発見。

ブノワ。さん、こんにちわ。すっかり秋も中盤に。1日が早いですね。
来週、タイミング逃しましたが丘陵公園に出かけようと思います。
光が現れるといいのですが・・・・・・。予報だと、寒そうです。

真理さんのアルバム、休みの日に聴いています。チェロの音色って
穏やかでね。真理さんの奏でるチェロを生演奏で2回聴いていますが
ずっと聴いていたいなあって公演が終えた後の余韻がね、とっても
よかったんですよ。機会があったら、じっくりと真理さんの公演に
伺いたいです。

私、ずっとピアノしか好きでなくて。だからピアノリサイタルのみな人
だったんです。いちようショパンまでは頑張ったのね。

そんなオーケストラが今一真剣に聴いたこともない私が初めて真剣に
聴いたのが真理さんのチェロでした。真理さんは、素敵な方だなあって。時折、ブノワ。さんの記事で真理さんの可愛らしい話を読むと、さらに可愛らしい方なんだなあって思うんですよ。華奢な方なのにスキーが好き
なお話を聞いてびっくり。スポーツウーマンだったんですね。

そうそうLP版の棚を整理していたら、若き頃の真理さんのLP版が
ありました。父が札幌勤務の時に中古レコード店に訪れて購入して
いたんです。音楽の教科書の作曲家のページの顔にいたずら書き
していた父なのに。

なんと、素敵だなあと思って真理さんのことを知らない父が、ジャケ
買いしたんです。私が聴くかなあと思ったとか。ピアノのみだったの
で当時は聴いたことがありません。

オレンジのドレスを着ていらっしゃる真理さんの写真なんですよ。
レコードの針を交換したら、聴いてみたいなあと思っています。

バッハの無伴奏をチェロ組曲から、他の作曲家の曲もじっくりと
楽しみます。ブノワ。さん、また芸術のこと、教えてくださいね。

リンゴジャムできました。真理さんのチェロを聴かせながら仕込んだ
ので、どうでしょうか・・・・・・。

愛 #pdK/Zy5g | URL | 2016/10/23 11:11 | edit

放置じゃないからね!

ムーさんへ。
おはようございます、メッセージどうもありがとう。
スッカリ返事が遅くなりました。なんて言ったってパソコンの前に殆ど座らないのだ。
もう疲労困憊+記憶喪失+死亡寸前でございます……。
今日はようやく休みでこれからお出掛け……また疲れます(苦笑)
さて、チェロ!僕もチェロが大好き!クラシック好きの悪友に言わせると、
ピアノと声楽以外はクラシックじゃないそうなんですが(笑)
若かりし気頃、クラシックを聴き始めて片っ端から買ったCDの中に、
フルニエのドヴォルザークのチェロ協奏曲があったのね。
もう、ガガァ〜ん!ビックリ仰天して次に買い求めたのが、
フルニエのバッハ無伴奏組曲……だから僕のチェロはフルニエからなんです。
チェロの貴公子って言われていましたね。足が悪くなってピアノを諦めたとか。
その昔知り合いがくれた東京文化会館での全曲演奏会の録音テープ、
擦り切れるほど聴きました。舞台に上がる時に「コツコツ」杖の音が入っている。
フルニエと言えば、僕、サイン入りの写真持っているんですよ。
サンジェルマン・デプレに有名人のサインを専門に扱う店があったのね。
中を見せて貰い、そこの女性が「何かお探しですか?」って言うから、
お値段もお値段だし、買う気もなかったので「フルニエは?」って言ったら、
奥から出して来ちゃったの(苦笑)だから買いました(笑)
サイン入りのポートレートとどなたかに送った礼状のセット。
宮田大って聴いたことないけれど、どんな感じでしたか?
コダーイはなかなか実演されないけど名曲ですよね。
僕が聴きに行かないだけかもしれないけど、最近は若い世代が育っているのかな?
現代の作曲家の作品が殆ど聞こえて来ないのも気になる……。
ムーさん、今度、クラシッ・クデートしましょ!(笑)

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2016/10/31 10:25 | edit

知ってる!

愛ちゃんへ。
おはようございます。いつもメッセージありがとう。
丘陵公園ねぇ……全く考える余裕もなかった(涙)
この週末で出掛けたのかな?キチンと辿り着けた?
おじさんにまた帰りの案内図を貰ったとか?(爆)
様子は知らせてね、楽しみにしているから。
真理さんのバッハ……いいですよねぇ。ジャケット写真も素晴らしい!(笑)
来年はないのだけど、再来年の誕生日のバッハ演奏会に出てくれば?
チケット真理さんに頼んでおくから。いいでしょう、楽しみが増えて。
真理さんのLPって、オレンジのドレスと着て立っているヤツでしょう?
バッハの無伴奏はヴァイオリンのものも素敵ですよ。
「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」ね。
誰の演奏がいいかなぁ……僕はヘンリク・シェリングのが好き。
時間があったら聴いてみてくださいね。
ところで愛ちゃんがピアノ?あの子供が弾く小さなおもちゃの?(笑)
僕もピアノは弾けますよ。勿論「猫踏んじゃった」!(爆)
凄いね、チョッと尊敬してあげる。
はぁ……時間とお金の余裕ができたらもう一回チェロ買おうかな?
真理さんが一年に一回だったらタダでレッスンしてくれるって言うし(笑)
古い飴色の素敵なチェロが欲しい……お高いんだよねぇ。
愛ちゃん、僕のためにチェロ貯金しなさい!(笑)

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2016/10/31 10:34 | edit

あら、抜けてる……ゴメンなさい。

hibariさんへ。
こんばんは。寒くなって来ましたね……。
メッセージどうもありがとうございます……って!
お返事したつもりがスッカリ抜けていました……ゴメンなさい。
相変わらず、貧乏ヒマなし、バタバタドタバタでございます(涙)
さて、ワケワカメが分からない僕ですが(笑)
芸術なんて元々そんなに大層なものじゃないと思いますよ。
例えばゴッホの「向日葵」……ただ綺麗と思ってもいいし、
そこから何らかの情念みたいなものを感じてもなおいい……。
ピカソの「ゲルニカ」絵画や音楽に政治の意味を込めることもあるけれど、
作家が思ったことと少しでも同じことを感じればいいんじゃないですか?
よく「僕は絵が分からない。」って言う人がいるけれど、
何も感じない訳がないので、その感じたことが感想でいいんだと思います。
hibariさんご一家だってオルセーで「落ち穂拾い」をご覧になって、
その経験に加えて、他の絵画にまで話題が広がるじゃないですか。
凄く贅沢ですよね。素敵です。なかなかそう言う経験って出来ないもの。
僕が大嫌いな言葉「共有」ってまさにそう言うことなんですよね。
ツインズがおばあさんになって思い出す「落ち穂拾い」にhibariさんがいる訳でしょう?
ルーヴルの大広間に掛かっている絵ね、見る度に「どれだけ絵の具使ってる?」
そう思っちゃうんです(笑)だって足が僕の上半身くらいあったりするでしょう?
「生命を吸い取られる……。」分かるような気がします。絵から感じるパワーと、
それから常に上を向いて歩いているから余計に疲れるんでしょうね。
僕は芸術には詳しくないですよ。それこそhibariさんが仰言るように、
感性、感覚だけで泳ぎ回っていますです、ハイ(笑)
でも、なるべくいいものを見ること……そうすると本物が見えて来ます。
モーツァルト、ゴッホもそうですけど、後世認められても、
もし、生前に豊かであったらあの芸術が生まれていたかどうか……。
そんなこんな、凡人には分からない部分でもあります。
正当な評価ってなんなんでしょうね……不思議です。

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2016/11/07 20:55 | edit

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