リトル・ダンサー。 

 

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芸術作品には見るべき時というものがあります。
例えば、「赤毛のアン」シリーズや「十五少年漂流記」や「ライ麦畑でつかまえて」などは、
勿論、大人になってからでも感動を覚えることは間違いないのですが、
出来れば主人公と同じ年齢くらいの時に読みたいものです。
反対に、鑑賞した時はチンプンカンプンでも、ある程度、年齢を経て、
大人になってから再度、鑑賞して「なるほど!」……ストンと腑に落ちることもあります。
ベルイマンの映画とかね……って、僕はこの年になってもチンプンカンプンですが(笑)
神の不在とか言われてもねぇ……元々、無神論者だし(笑)

さて、最近お気に入りの「第3回午前10時の映画祭」にて「リトル・ダンサー」を見て来ました。
昔、ロードショーで観て感動したのに、2度目に観てガッカリ……なんて言うことも多々ある中、
「リトル・ダンサー」は感動も新たに、新しい発見もあり、なかなか楽しむことが出来ました。

先ず、俳優に「味」がありますよね。
バレエの先生を演ったジュリー・ウォルターズ。近年では「マンマ・ミーア!」で、
メリル・ストリープの親友を嬉々として演じ、伝統の水落ち芸まで見せてくれましたが(笑)
彼女はこの作品で軒並み演技賞を受賞しました。非常に巧いです。
生活に疲れ、自宅待機を余儀なくされている夫との夫婦関係も微妙……。
ヘビースモーカーで学校で女の子たちにバレエを教えていますが、
あながち才能を発見する才能もまんざらでもない。
少し投げ遣りな、かつ、まだ人生を諦め切っていない残り火のような燻った情熱を垣間見せます。
炭坑で働く父親を演じたゲイリー・ルイス。
いかにもイギリス労働者階級の父親らしく、直情的で、しかも家族への愛情はタップリ。
炭坑破りをしようとするシーンでは隣の親友は号泣(って、ここからズゥ〜っと泣いていましたが。)
ビリーの親友を演じたスチュワート・ルイス。
後に成人してからのメリン・オーウェンのキャスティングも絶妙ですが、
まだ右も左も分からない少年の性、ビリーに対する淡い恋心を巧みに見せます。
彼もまた、男はこうあらねばならぬ……的な閉塞感で凝り固まった地方社会を自由に生き抜き、
成人して自らの世界に生きる姿を一瞬で見せるラストシーンが素晴らしいです。

そしてなんと言ってもビリーを演じたジェイミー・ベルの素晴らしさ!
彼なしではこの作品は成り立たないのですが、少年の儚さの中に芽生えつつある自我、
自らの頭で考え、行動に移して行く様は見ていて気持ちがいいです。
今や押しも押されもしない立派な役者になりましたが、
そんな彼の輝かしいデビュー作、何度見ても清々しい気分になります。
そうそう、この年のアカデミー賞の授賞式で、
心細げに客席で小さくなって待機していたジェイミー・ベルに、
ラッセル・クロウがスピーチの中で「自分も昔はそうだったんだよ。」と、
優しく励まし、語りかけたのが印象に残っています。


ラストシーンで成人したビリーが「白鳥の湖」の出番待ちで舞台袖に待機しているシーン。
成人したビリー役のアダム・クーパーが、あたかも白鳥の羽根を上下するように、
肩と背中を動かしウォーミング・アップするシーン。
小さく華奢だったビリーが大きく成長し、プリンシパルまで上り詰めた年月を、
アダム・クーパーの大きな背中の煽動で一瞬で見せる監督、スティーブン・ダルドリーの手腕。
今、最も信頼できる監督の一人であるダルドリーの驚異のデビュー作でもあります。

夢は諦めるな、願えば叶う……人生の教訓は色々あれど、
決して一人では生きて行けない、周りの理解と愛情も含めて人生なんだ……。
この作品は、声高に訴えることなく、また、台詞でグジャグジャ説明することもなく、
明日へ向う勇気と、諦めそうになり、挫けそうになった気持ちを支えてくれ、
飛翔感と共にチョッと後押ししてくれる、そんな作品です。


今日の写真はかれこれ8年前にパリで撮影したポートレート。
このハンサムな青年のポートレートはあるバイク屋の前で撮りました。
街並の写真を撮っていると、バイク屋から出て来た青年に話し掛けられました。
僕が使っていたミノルタのカメラが珍しかったのでしょう。
日本から来たこと、美術館や薔薇園を見て歩いていること……。
ほんの少しの間でしたが、旅先で人と触れ合う楽しさ、
8年も経つのに今だに鮮明な想い出となって残っています。


2015年4月24日


ブノワ。


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コメント

 

王さまこんばんは!
お元気ですか?
リトルダンサーはアダムクーパー自身の話だと思い込んでいて
最後のシーンなんて、もう涙がド~ッととまらなくて。
そうじゃないってわかったのは何年か経ってからなんです。
ビックリしました。
あぁ、でも素敵な映画でしたね~

綺麗な横顔の方ですね。
自分の横顔は見られないから彼はこの姿を知らないっていうのが
勿体ないわ~

May #2Z5jlXfU | URL | 2015/04/24 21:55 | edit

私もそのうちに…

こんにちは ブノワ。さん
はまってられますねぇ「午前10時の映画祭」。
過去作品がスクリーンで観られるって貴重ですものね。ただ、ラインナップ見てると売れ筋商品で(笑) もう一歩突っ込んで監督特集とか、テーマ特集とかってやってほしいなぁって思うのが強いので、積極的に観に行こうって気持ちが私の中では沸いてこないなぁ(今のところはね)
さて「リトル・ダンサー」
ダルドリー監督って、一度目よりも二度目さらに三度目って観るごとに味わい深い監督だなぁってのが「リトル・ダンサー」を2度目に観た時に思いました。多分に私の感受力の鈍さもあるんでしょうけど、何気ないシーンに込められたモノってのが伝わってくる。
やっぱり主人公の少年はジェイミー・ベルなんだわって思ったのも2回目鑑賞で(最初は、どうも魅力的じゃなくってねぇ。親友の少年の方に目が行ってた)。
アダム・クーパーの肩甲骨ぐるりのあのシーンに「おおっ」って思ったのも2度目で。ほんと何を観てたんでしょうねぇ1度目は。
でも、こうやって2回、3回と観て、観るたびに新しい発見があり、新鮮な思いで映画と再会できるって、そんな作品って素敵ですよね。
もう一度観たいって思える作品って大切にしたいですよね。
今はまだ週末に公開作品観るのが精一杯だけど、もう少し時間があれば午前10時の映画祭も悪くないかなって思えるかしら。

シュエット。

Chouette #- | URL | 2015/04/27 17:06 | edit

多いですよねぇ……。

Mayのお姐さま!
こんばんは。メッセージどうもありがとうございます。
スッカリご無沙汰です、元気にしていらっしゃいますか?
「リトル・ダンサー」のアダム・クーパーは鮮烈でしたよね。
アレ、真面目に勘違いしている人凄く多いです。
アダム・クーパーも映画でドッと知られるようになったし……。
本当にいい映画でした。この前観た「スタンド・バイ・ミー」が、
意外にあっさりしちゃってビックリだったんです。
初めに観た時はもっと感動したハズなんですけど、
僕も大人になって性格ヒネましたかね?(苦笑)
この青年、綺麗な顔でしょう?パリもたまにハンサムがいますね。
大体、ジャン・ギャバンとかイヴ・モンタン系ですけど(笑)
僕も自分の美しい横顔を見ることが出来ないのが残念です!
あはは、おほほほほほほほほほほほほっ!
今年は遊びに行きますからね!ごちそう用意しておいてね!

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2015/04/29 18:30 | edit

ハマってるの(笑)

chouetteさんへ。
こんばんは。いつもメッセージ恐縮です。
スッカリ暖かくなって……って言うより暑いですよね!
庭の様子はどんな感じですか?薔薇は順調?
そろそろ蕾み大きくなって来たでしょう?
さて、そうなんです。すっかりハマっています(笑)
近くのシネコン2つで違うローテーションなので、
時間を調整して観て歩いています。邦画も増えて来たので嬉しいです。
今回は「新幹線大爆破」と「赤ひげ」と「東京物語」ね。
chouetteさん「新幹線大爆破」ご覧になりました?
高倉健の陰の大傑作だと僕は思っていますのです、ハイ。
でも、なかなか仕事していると無理ですね。
週末は他の用事もしたいし、朝の10時に映画館にいられるって可成りのことですもん。
chouetteさんも行かれるとしても週末だけでしょう?厳しいですよね。
でも、是非、足を運んでみてください。感動新たに!
それから思ったほどじゃなかった感にガッカリしたり(笑)
2度目の方が発見が多いって凄いですよね。
僕も真面目に1回目は何していたんだって思っちゃう(笑)
ダルドリーは好きな監督です。僕、監督で見ないのに珍しいでしょう?
そうそう、このところ観たのは「ソロモンの偽証」の前後編、
それから昨日は「シンデレラ」と「バードマン」を続けて観ました(笑)
多分、記事にすると思うので読んでみてくださいね。

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2015/04/29 18:39 | edit

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