浅田真央に学んだこと。 

 

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春の初め、愛らしいティンカーベルからメールがありました。

「ブノワ。さん、よかったらチケットがあるので、
フィギュアスケートにご一緒しませんか」

「ご一緒しませんか?」って……。
行く!行く!行く!行くに決まってるぅ(笑)


春の宵、愛らしいティンカーベルと連れ立って、
見て参りました、「スターズ・オン・アイス」……。
何しろフィギュアスケート大好き人間のクセに、
実際にリンクに行くのはこれが初めてのブノワ。さん。
もうドキドキでございます(笑) ワクワクでございました。
初もの尽くしだよ。初生真央ちゃん、初金メダリスト羽生弦結くん、
初生パトリック・チャン、初生イナバウアー by 静香荒川 etc、etc……。

テレビ中継はそれはそれで選手のアップが見られていいのだけど、
実際にリンクで見る選手たち。エッジが氷を滑る音、ひんやりした空気、疾走感。
何でもそうですが、矢張り、生で実際に自分の目で見るに限ります。

初めは大人しかった愛らしいティンカーベルは、
隣で我を忘れて「ヒュー!ヒュー!」奇声をあげています(笑)
もう、立ち上がってリンクに乱入するんじゃないかって勢い(笑)
思わず素敵な経験をさせて戴きました。

実はこの日、会場に行く前にティンカーベルと日本橋で待ち合わせ。
日本橋髙島屋で開催されていた「SMILE 浅田真央23年の軌跡展」を観てきました。
浅田真央の今までの衣裳(細かい細工で思いのほか良かった)や、獲得したメダル。
それから期間限定でしたが、1階の入り口に、マダム・タッソーの蝋人形館から、
浅田真央の人形が特別に展示されていました。



今日の写真はその蝋人形。
いやいや、少し前の真央ちゃんですが、実に良く出来ていました。
今にも滑りだしそうでね。写真に撮ってみると、
何やら良く描けているスーパーリアルイラストレーションみたいですが……。

この蝋人形を観ている時に気付いたんですが、周りの人集りが凄く遠巻きなんです。
2メートルくらい離れて円陣を作って遠慮がちに写真を撮っている……。
警備の人が思わず「もっとお近くでどうぞ……。」と、勧めるほど(笑)
何でしょう……そう、若干23歳にして、浅田真央には、
人々に畏敬の念を与える何かがあるんだと思います。
それは彼女が自らの競技生活を通じて体現してきた全てのもの、
素晴らしい成績もそうだけど、いつも明るい笑顔で、悪い時も消して弱音を吐かない気丈さ、
採点が思うように出なくても、体調が悪くても、決して言い訳をせず、
不平や不満を決して顔に出さず、黙々と己が目標を目指して精進する姿、
スポーツマンとしての真摯な姿勢がそうさせるのではないでしょうか。
成績の悪さを、怪我や体調のせいにし、言い訳する人が多いですからね。

会場内ではソチ・オリンピックのフリーの演技が解説なしで、
繰り返し繰り返しモニターに映されていました。
僕はティンカーベルと2回続けて鑑賞しましたが、
何度観ても飽きない演技構成と、それをほぼ完璧に演じ、滑り切り、
最後は感極まって、上を向いて嗚咽する浅田真央の姿に、
周りの皆は再び感動の渦に包まれるのでした。
今までのスケート人生の集大成と頑張った昨シーズン。
最後の最後に満足の行く演技ができたこと、
そして、今までの彼女の競技者としての真っすぐな姿……そういったもの全て。
我々ファンも浅田真央と一緒になって追体験をできたからこそ、
ビデオの最後に自然に拍手が起き、涙を流すファンが、
後を絶たなかったのではないでしょうか……。

浅田真央からは数えきれない程の素晴らしい何かを貰いました。
それは人それぞれ違うものなんだけど、彼女の前向きの姿勢や、
諦めずに全力を尽くす姿は全ての人の胸に共通して力強く響いた……。
そして、それぞれの人にとって、小さいけど明日への一歩を踏み出すための、
大きな「点」になったのではないか……僕はそう思います。

あらためて……ありがとう浅田真央!


2014年4月29日


ブノワ。


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category: スターの時代。

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結城美栄子陶彫展 KARASU。 

 

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暖かな春の夕方、行って参りました銀座「一穂堂」へ。
恒例の結城美栄子さんの陶彫展「KARASU」の初日を見に。

今回は、陶人形、ドローイング、その展示作品のほぼ全てがカラスで占められています。
なぜカラス?何も変わったことではないし、不思議なことも全くありません。
結城さんの初期の作品を見ると、カラスが頻繁にモチーフになって出てきます。
擬人化されたカラスたち。時に愛らしかったり、時に賢そうだったり、計算高そうだったり……。
結城さんのカラス好きは有名ですもんね。因みに僕もカラスは大好き!
日本でカラスと言うと、どうも害鳥のイメージが強いのです。
悪の化身、不吉なことのシンボルみたいに言われていますが、
もともとカラスは神様の遣いとみなされることもあるし、
三本足の八咫烏(やたがらす)は太陽の化身とみなされていましたし。
今回の個展で頭が良くて愛情に富んだカラスの一面が見られるかもしれません。
そうそう、陶版に描かれた素敵な作品もあります。結城さんの新境地です。

今日は気に入った作品を何枚か……。
最近、釉薬の使い方が自在になって、一層、魅力的になった結城さんの作品。
最後の1枚は、今回僕のコレクションに加わったカラス……。

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 ♪……タラリラララァ〜ララァ……。

荒川静香のイナバウワーと言うよりは羽生結弦かな?(笑)
荒川静香は両手を大きく肩から後ろに振りかぶって仰け反りますからね。

結城さんの「KARASU」は今月の26日まで開催です。
ほぼ毎日、結城さんは会場に詰めていますので、気軽に声を掛けてみてください。
是非、感想など直接お話ししてみてください。凄く喜ぶと思います。
僕も最終日までにもう一回、観に行く予定です。

 結城美栄子展 KARASU 
 4月16日(水)〜4月26日(土)
 11時〜19時 ※月曜休廊

 [一穂堂サロン]
 〒104-0061 東京都中央区銀座1-8-17 伊勢伊ビル3階
 TEL 03-5159-0599


2014年4月17日


ブノワ。


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category: 展覧会の絵。

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変かねぇ? 

 

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2週間くらい前にパセリを買いました。
パセリなんて自分でお金を出して買うのはいつ以来?記憶にないや……。
それよりも長い人生で2回目かな?(笑)それ程、馴染みのない香草です。
スーパーで美味しそうな牡蠣を見付けたのね。牡蠣……好きなんですよ。
ただ、チョッと心配だったのは年度末で物凄く疲れていたでしょう?
だから貝は大丈夫かな?って。普通、疲れている時は避けて通るのですが、
あまりにも牡蠣が美味しそうだったから、火を通せばいいやって……。
効果はないけど、何となくパセリをみじん切りにして振ったらいいんじゃないかって思ったわけ……。

で、パセリってそうそう使う香草じゃないでしょう?
タップリ余ったパセリ……さて何に使うか?普段使い慣れていないから困る(笑)
翌日は山盛りサラダに微塵切りにしてトッピング。さてさて、残った1/3をどうする?
パセリ、パセリ、パセリ……呪文のように唱え、
連想ゲームよろしくあれこれ考えてみたんですが……。

そこで、ハタと膝を打って閃いちゃったのがボンゴレ・ビアンコ(笑)
あまりパセリが主役じゃないけど、これで買ったパセリを全て消費できる!
いいアサリが手に入りました。美味しそうな蛤に目移りしましたが、
こちらは中国産だったので却下。

さて、アサリ。
塩水で砂を吐かせるわけですが、海水と同等のパーセンテージの食塩水って?
皆さんどれくらいの塩辛さだか分かりますか?
結構、塩っぱいですよね。飲めないものね(笑)
ここで暫し、海水の塩辛さの水を作ることに……。
「えいやっ!」……とばかりに塩を放り込み、水道を捻ります。
フムフム、こんなものかな?うわぁ……しょっぱ!
3パック買ってきたアサリをガラガラっと食塩水の中へ。
さてさて、どうかな?アサリ、砂吐くかな?
ビックリしたのはね、みるみる内に貝が開き、ぴゅーびゅーってアサリが塩を吹きだしたの。
凄いでしょう?塩分濃度がピッタリだった(笑)
何でも目分量、勘に頼るブノワ。さん面目躍如(笑)

アサリ、暫く眺めていました。何だか可愛くてね。
眼鏡に塩を吹きかけられちゃったのでチョッと蓋しました。
そっと覗いてみると、な、な、な、な、なんと!
スゥ〜っと泳いでいるアサリがいるじゃありませんか(笑)
可愛いなぁ、アサリ(笑)でもね、フと思ったの、このアサリでパスタ作るんだって……。
何だか急に元気なくなっちゃった。アサリが可哀想で可哀想で(笑)
でもねぇ、アサリを飼育する訳にも行かないし(笑)
アサリ入れなきゃニンニクとパセリだけのパスタになっちゃうし……。
心を鬼にして調理しました(笑)大量殺戮でございます。
元気に砂を吹くアサリに手を合わせ、心の中で「ゴメンなさい。」と、一言。
改めて生きて行くって大変ですね。僕たち生かして貰っているのね。


2014年4月16日


ブノワ。


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category: バベットの晩餐会。

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見果てぬ夢のまた夢の夢……。 

 

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4月も中旬を迎え、随分と暖かくなってきました。
いいですよね、木々の新芽が青々として本当にいいです。
落葉樹の可愛らしい新芽がうっすらと霞のように樹全体を覆う時、
毎年、毎年、脳裏を過ることがあります……。

先ずは皆さん、小坂明子の「あなた」の節でサン!ハイ!♪(笑)


 「もしもぉ僕が家を建てたなぁらぁ。大きな屋敷を建てたでしょう。
  玄関に円柱ぅ……8本は欲しいな。ホールに大きな油絵掛けるのぉ。
  床はヘリンボーン、ベッドに天蓋、壁という壁には油絵掛けるのぉ。

  巨大なお屋敷。通称、薔薇御殿。ぐるりと高ぁい、塀を廻らせる。
  そして裏には広ぉ〜い庭園。庭園の中には、
  庭園の中には駄猫ぉ、駄猫ぉ、駄猫が走り回るのぉ!」


去年の年末の宝くじ当たる気満々で、獲らぬ狸の皮算用、
頭の中に御殿の設計図を引いちゃったブノワ。さん(笑)
皮算用はいつものこと、僕の性格を表す基本の基なんですが(笑)
あれこれ考えを廻らせ、あぁでもない、こぅでもない……考えるのは楽しいです。
場所はどこ?田園調布?(笑)世田谷もいいし、吉祥寺とかね。
杉並の井の頭線沿線もいいな……仕事を引退したならば鎌倉?
それともどこか温泉の出る田舎に引っ込んで……。
地名から決めるのもいいかも……御殿山、鎌倉山、桜山……いけない、また妄想が(笑)
田園調布も6億円あればなんとか行けるでしょうか。

お屋敷は建てるというより「建立」って言うニュアンス(笑)
神社仏閣じゃないけれど、それくらいの勢いで立派な屋敷を建てたい。
実は3世帯にしたいの。親友3人で住みます。養老ハウスじゃないからね(笑)
それぞれにバス&トイレ、キッチンも備え、僕は仕事部屋と書斎も欲しい……。
考えは限りなく大きく膨らみ、実現不可能なくらいに巨大化しています(笑)
でもね、今までの人生の教訓として、言ったもの勝ち、
言っている内に実現するのもまた真なりなんですよ!

庭はねぇ……フランス式の成形型の庭も素敵だし、
自然を取り入れたイングリッシュガーデンも捨てがたい。
基本はノルマンディーはディエップから車で15分くらい走った小村、
海に程近いヴァランジュヴィル・スュル・メールにある、庭好き垂涎の庭園、
パルク・フローラル・ドゥ・ボア・ドゥ・ムティエ……かな。
ここはウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツの教えを受け継ぐ、
エドウィン・ラッチェンスが屋敷をデザイン、
かのガートルード・ジーキルが庭を手懸けたことでも有名です。
屋敷の正面に広がる素晴らしいボーダー、石塀に囲まれたホワイトガーデン。
薔薇に関しては世界中のガリカとモスを全種類収集したいです。これ真面目な夢ね。
そうだ、皆さんは偉大な俳優としてだけじゃなく、文筆家としても有名だったダーク・ボガードの著書、
「レターズ/ミセスXとの友情」を読まれましたか?(未だでしたら是非!)
彼が手に入れた田舎の広大な敷地に建つコテージハウスと、
そのコテージハウスを手放しアメリカに渡った前の持ち主の女性……。
決して会うことのなかった2人の書簡集……これがねぇ、素晴らしい内容なんですが、
家や庭を描写するくだりがまた何とも素敵なんです。
ヴィヴィアン・リーが「Belle de Crecy」を育てているくだりも出てきますが、
ヴィヴィアン・リーが育てていただけで「Belle de Crecy」の格が上がろうと言うものです。
ダーク・ボガードのコテージハウス……こちらは夢、またその夢の夢かな。

木々はオリーブの巨木を抜かして全て落葉樹、大きな桜と、あと白の大きな木蓮も欲しい……。
庭全体として大きな花を付ける草花、樹木は避けて、イネ科の植物も上手に使いたいです。
下草は常緑のハコベや豆科の植物、オオイヌノフグリ、それからタイムなどのハーブも巧く使いたい。
そうそう!おクレマチスは全品種コレクションしたいかな(笑)
でね、庭園は親友のガーデナー2人にメインでやって貰います。
僕はお金だけ出して口は出さず。最小限のアイデアを出すだけ。自分では作業しないの。
僕の薔薇?勿論、植えますよ。自分の薔薇を植えずしてどうする(笑)
そうそう、交配した薔薇の圃場も欲しい……。

こうして文章にしてみると、またまた話が大きく膨らみます。
某高名なガーデンライターのAさまが、

 「見せて!見せて!アタシにも見せてぇぇぇぇっ!」

と、絶叫しますが……絶対に見せてやんないの(笑)
庭は原則として非公開なのです。どうする?また宝くじ買うか?
僕と連絡が取れなくなったら、消息不明になったら宝くじが当たって、
薔薇御殿を建立したと思ってください(笑)

今日の写真は、アメリカのイラストレーション界の巨匠、
マーク・イングリッシュの油絵の一部分。
少し前にオークションで落としたそれは、一口で言うと畳一畳くらいの大きさがあります。
僕は普段、作家の名前で絵を買うことはしないのですが(作品の出来が第一)、
この時は別、尊敬するマーク・イングリッシュの油彩だし、
画題も素晴らしかったので迷うことなく落札しました。
ただ、絵を掛ける部屋の壁面の大きさは測りましたけどね(笑)


2014年4月9日


ブノワ。


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「おそるべき親たち」ふたたび。 

 

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まるで絵画のようでした……そう、ラ・トゥール、
ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール……光と影の画家。
舞台奥にしつらえた巨大な額縁と薄暗い照明……。
特に蝋燭の灯りがそれを連想させたのかもしれません。

蝋燭の灯り……これほど明るいと思ったことはありません。
揺らぐ炎が役者たちの細かい表情をことさら浮き立たせます。
舞台にはない「クローズアップ」の技法。
この映画独自の表現方法が、俳優たちの丁寧な演技と、
中劇場と言う条件や巧みな照明のお陰で舞台上で再現されました。



春がそこまで迫った3月中旬、
待ちに待った「おそるべき親たち」の再演を観てきました。
僕は友人を連れて都合4回、合計32人を引き連れて、
類い稀な役者たちのアンサンブルを楽しんできました。
初演の素晴らしさ、麻実れいが読売演劇大賞を受賞した、
演技陣のクォリティーの高さは以前のブログにて書きましたね。

諸般の事情で再演が1年延びましたが、演出が熊林弘高、翻訳と台本が木内宏昌。
この、現在の日本で最も信頼のおけるコンビに加え、
5人の出演者……前回と同じ顔触れが揃い、いやがおうにも期待が高まります。

会場は俳優が一番嫌がる三方を観客席に囲まれた舞台、
しかも円形の舞台の中心がターンテーブルのようにゆっくり廻ります。
この戯曲のテーマは人間のエゴと欲望。
登場人物の中で唯一、イヴォンヌの息子のミシェルだけが無垢な心を持っている他は、
自由奔放で、息子を盲目的に溺愛する母のイヴォンヌ、
若い愛人に溺れ、捨てられそうになり地金が出る父のジョルジュ、
一家のしっかり者、理知的な叔母のレオ、そしてミシェルの恋人のマドレーヌさえ、
ギリギリの瀬戸際で己の保身、幸せのために策を弄そうとします。
緊迫した台詞のやり取りは、時折、織り交ぜられる、
ウィットに富んだ会話で笑わせる他は、一気に驚愕のクライマックスへ傾れ込みます。
鍛えられた役者の発声は後ろを向いていても、
囁くような小さな台詞でも観客席の隅々まで響きます。
後ろを向いていて、表情が見えなくても、ほんの半歩、後ろずさっただけで、
心の動揺や落胆、千路に乱れる心を表わす巧み。
手の表情や、落とした肩で気持ちの高揚を表現するテクニック。
最近、マイクロフォンを当たり前のように使う学芸会的な舞台が多い中、
鍛えられた役者の肉声の豊かな響きに酔いしれる贅沢は何物にも代えられません。
だって、マイクロフォンを使って台詞を言ったり、小手先で歌を歌ちゃって……、
それでミュージカルと言えるのかい?(苦笑)しかも決して上手くない(怒)
身体ガチガチ台詞棒読み、客席後方の一点を凝視して仁王立ち(笑)
歌なんて音程メチャクチャ、お金取って人様に聞かせられるようなレベルじゃないものね。
鐘1つ鳴らしてやりたいヤツばっか(笑)これだったら声が通らない僕にも出来る、
カラオケだったらアタシにも歌える……と、素人の僕たちに思わせる舞台が多いです。

テレビで見る俳優や歌手を生の舞台で間近に見られる……。
ファンにとってはこの上ない喜びでしょう。ことによっては人生のハイライト?
観客動員が見込めるタレントを掻き集め、てんでバラバラのアンサンブル(笑)
舞台のクォリティは兎も角、連日〜劇場が満員御礼になれば劇場側もウハウハです。
今の劇場やテレビ局がプロデュースする舞台はこの形。
ロビーに溢れんばかりに飾られた盛大な楽屋見舞いの花は、
見事で盛大であればあるほど業界内の内輪受けにしか見えません。
このままでは日本の舞台の行く末は?そんな風に思うのは僕だけでしょうか?
マイクロフォンを通した役者の声……あまり好ましいとは思いません。
日比谷の某劇場は、役者の声が全て舞台下手から、
音楽が上手からハッキリと分かれて聞こえてくることがあります。
役者は上手で台詞を言っているのに声は下手から聞こえてくる……この不自然さ!
それから役者の声が掻き消されてしまうほどの大音量の音楽を使う必要あるでしょうか?
先ずは役者ありき、音楽は役者を引き立てるためのものなんじゃない?


「おそるべき親たち」の原作は読んでいませんが、
主役は叔母のレオです。彼女の失われた23年の愛情への復讐と、
再び愛を取り戻そうとする葛藤が描かれています。
5人の素晴らしい俳優が揃ったことにより、レオ以外の役が膨らみ、
思いもかけなく絶妙なバランスが出来たのではないか……僕はそう想像しています。

佐藤オリエは一家の大黒柱、良き理解者レオの仮面の陰に隠れた欺瞞と情念を熱演。
レオの着る衣装は濃いグレーから黒で統一されていましたが、
その裏地や靴の裏、スリップの肩紐、手袋、そして口紅とマニュキュア!
ひた隠した情熱を表す真紅が使われています。
それらが見事にレオの心情を表す手助けをしているのね。
もうお見事!素晴らしい仕事をしたのは原まさみ。
衣装とかメイクとか、音響とか、本来、役者を助ける裏方の仕事って、
こう言うプロの仕事のことをいいます。役者を顧みずそれだけが突出していちゃダメなんですよ。
中島しゅうは、ひょうひょうと、いかにも愚かな父親、夫を好演。
誰だったかなぁ……あのヨレヨレ感がいいって言っていたのは(笑)
中島朋子の技巧!この人は声がいいなぁ。
自然で奥行きの深い演技は父と息子の間で揺れ動く女心を見事に表現していました。
3年前、鮮烈な舞台デビューを「おそるべき親たち」初演で果たした満島真之介は、
新鮮さを失うことなく無垢なミシェルを熱演。
老練な他の4人の役者の触媒として晴れ晴れとした青年像を構築。
手垢がつかず、どうぞこのまま育って欲しいです。

さて、イヴォンヌを千変万化の移ろいで、時に儚く、時に猛々しく、
優雅に体現した麻実れいの大きさ。この大河の流れのような雄大さ、
希有な女優の個性(エレガンス)は唯一無二です。
麻実れいが円形の舞台をおり、こちらに歩いてくる様は、
まるで殺人の呪いに取り憑かれたマクベス夫人のようでした。
兎に角、美しくてゴージャス!
最愛のミシェルが無断外泊して心千々に乱れる母親から一転、
ミシェルが帰ってきた時の抑えきれずに浮かべる笑顔!
ミシェルに恋人ができたことを知った衝撃の後、実は事の真相を知るに及び、
萎れる息子を傍らに、吹きこぼれるように笑いを禁じえない姿は絶品です。
これほど素晴らしい大女優に薔薇の名前を戴けただなんて、
なんと言う幸せなのでしょう……でも、改めて恐れ多かったりして。

一つだけ残念だったのは、初演が3年前のことなのでハッキリ記憶がないのですが、
各々の愛情表現が少し度を越していたように感じたのは僕だけでしょうか。
もう少しヴェールに包み、オブラートに包んだ方が、より優雅でコクトーの文学の行間を、
観客が各々自由に読み解く余地があって良かったのではないか……僕はそう思います。



今日の写真はある雑誌掲載のために撮った1枚。結局ボツでした(笑)
蝋燭の炎はいいですね……揺らぐ光と陰が、
素晴らしい役者たちの演技とシンクロして効果抜群でした。

「お手伝いだったわ……何もすることはないって言っておいた。
  もう綺麗に片付いていますって……。」

最後に1つ……ラストシーンのレオの幕切れのセリフを聞くと、
ジャン・コクトーが三島由紀夫に与えた影響の大きさを感じずにはいられません。
三島由紀夫は戯曲を最後の台詞から書くと言われています。
コクトーのスタイルに心酔した三島由紀夫の姿が見えるようです。

芝居はいいなぁ……なかなか心からそう思える舞台は多くはありません。
役者の肉声、打ち震える身体、同じ空気を吸う快感を貰える舞台は稀有です。
また学芸会か……そう思いつつも、いつかまた素晴らしい経験が出来ることを、
期待しながら劇場巡りは続くのです。


2014年4月3日


ブノワ。


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