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Category: 映画館へ行こう!

「おくれ咲き」……芸術とは切り捨てる作業。 

2018/10/09 Tue.

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仕事の合間を縫って深谷まで映画を観に行って来ました。
合間を縫ってと言うより、仕事を1つ片付けて、
家に帰って荷物を放り投げ、着替えをしてから深谷へと……。
チョッとした小旅行ですかね。深谷では親友Tと待ち合わせ。


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わざわざ深谷まで映画を観に行った理由は、
いつも僕を可愛がってくださっている結城美栄子さんが、
今年の初め頃に「今度、映画に出るのよ……。」と仰有っていたのを聞きました。
しかも、結婚詐欺で出所したばかりの女を演じるって!(笑)
東京での上映がないとのことなので、そそくさと深谷詣で、
深谷シネマに馳せ参じたという訳です。
深谷シネマは造り酒屋、七つ梅酒像を改装したミニシアターです。

地元にこんな映画館があるなんて素敵ですよね。


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映画のタイトルは「おくれ咲き」……。
埼玉県の寄居町を拠点に活動している「Chocolate Box」が、
地元の活性化、町おこしの意味も含めて撮った作品です。
林家たい平演じる主人公は職業安定所でもなかなか扱って貰えない、
訳ありだったり高齢だったりする人々に職業を斡旋しています。
そこに集う超個性的な面々。そんな人々とのやり取りや、
自身の結婚問題を織り交ぜながら物語は進むのですが、
何とも勿体ないのは、あくまでも地域おこしの域を出ていないこと……。

映画の「地産地消」を目指しているそうです。
僕の中ではこれは多いに疑問でした。
地域に留まっちゃ困るじゃないですか……。
地域の活性化と言うのなら、地産地消に留まらず、
もっと大きなものを目指して行かなければ……それが映画です。
いい例が大ヒットした「カメラを止めるな!」もあることだし、
ことと次第によっては大きく化けることもあります。
映画製作の際に自治体をはじめ、数々の協力やボランティアがあったことと思います。
事実、結構、豪華なパンフレットの半分以上が、それらの掲載に割かれています。
ケンミン・パワー、ケンミン・キャスト、サポーター……。
全員の名前が列挙されています。
撮影に協力して戴いた方々、場所……それらがタップリ出て来ます。
でも、それでいいの?協力は有り難いけど、
作家たるもの必要じゃないものはバッサリ切らなきゃ。
バッサリ切る意志と思い切りがなくっちゃダメなんだと思います。
厳しいけれど書かせて貰うと、体育館でお囃子やフラダンスのシーンが、
延々と撮られていますが、果たしてこれらのシーンは本当に必要だったでしょうか?

 「アタシ、あのシーンに出た!」

 「お隣の◯◯さんが最後に出ているのよ!」

場内はそんな会話がチラホラ……。
皆さん、映画に映ることを条件に協力した訳じゃないですよね?
制作側もボランティアや協賛はその意味を考えないと……。
彼らに遠慮し、忖度してどうなると言うのです。
このボランティアに関してはそのうち記事にします。



林家たい平、熊谷真美、結城美栄子、横田栄司……。
他にも有名ではないけれど、非常に味のある役者が揃います。
普通なら彼らで立派な舞台が1本出来るじゃないですか。
それらの不要なシーンを切り捨て、各々のパートを掘り下げれば?
もっと深みのある作品になったのではないでしょうか。


林家たい平、今日の1枚目の写真の晴れやかな笑顔。
この美点を十二分に生かした役作りの方が良かったのでは?
笑顔を封印され本領発揮とはなかなか行かなかったようです。
ただ、自分の恋愛はからきしダメだけれど、
困っている人に尽力する姿は胸を打つものがありました。
熊谷真美は結婚問題に悩む主婦をしっとりと好演。
舞台で見せる明るく闊達な部分とはまた違った魅力の新しい境地。
盆栽職人を演じる横田栄司はまったく危なげのない演技で、
盆栽以外はまったくぶきっちょな男を静かに演じていました。
アカサギと呼ばれる結婚詐欺の女を演じた結城美栄子。
彼女の明るさとユーモアと気品がこの作品に一種のリズムを与えます。

勿体ないです、本当に勿体ない。
諸々のしがらみに捕われず、この主題で深く掘り下げた映画を撮っていたのなら……。
あくまでも地元のPR、自己満足の域を出ない映画でした。


「おくれ咲き」……★★★……30点。


2018年10月9日


ブノワ。


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僕のトムは……。 

2018/10/02 Tue.

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 「トムはね……スタンレーをやりたかったのよ……。」

この台詞……舞台女優、ジャニ・ブレンが僕にそっと教えてくれた秘密。
今日はどこにも書かれていないトム・ベレンジャーのことなどを……。
ホラ、今の世の中、どこを見回してもコピペばかりでしょう?
今日は僕が体験した懐かしいエピソードをチョッと披露です。


先日「午前10時の映画祭」で「プラトーン」を再見しました。
ロードショーの時以来、2回目になります。
僕は普段から「映画は女優で見るもの」と豪語していますが(笑)
唯一、好きな男優と言えばトム・ベレンジャーなんです。
今や、トムと言えば真紅さんのトム・ハーディか(笑)
新進気鋭のスパイダーマン、これまた真紅さんのトム・ホランド。
「IMDb」で「Tom」で検索すると面白いですよ。
今の「Tom」の役者としての序列が分かりますから(笑)
トム・クルーズやトム・ハンクスも未だに一線で頑張っていますけど……。
僕の中ではトムと言えばはトム・ベレンジャーなんです。

ダイアン・キートンの「ミスターグッドバーを探して」や、
今では珍しくなくなって来た、ヒット作の前日慓のはしり、
「新・明日に向かって撃て!」や「再会の時」など。
内容がチョッと過激だったので、所謂、ピンク映画を上映する劇場での公開だった、
「ブルーエクスタシー・官能の夜」。何じゃ、このタイトル!(苦笑)
ブルーエクスタシーって一体なに?(笑)誤解を招くとイケナイので……。
この作品の字幕は、かの高瀬鎮夫さんが訳しました。
高瀬さんと言えば格調高い翻訳で有名で、当時、字幕の翻訳のトップの方です。
この作品がキチンと評価されていた証拠ですね。
所謂、スタースターした派手さはないけれど、
僕は一時期のハリウッドで活躍したトム・ベレンジャーが好きでした。

さて「プラトーン」ですが、順当に行けば、
悪役面のウィレム・デフォーが冷血なバーンズで、
正義感溢れるエイリアスにトム・ベレンジャーなのでしょうけど……。
ヴィクター・フレミング監督の「ジキル博士とハイド氏」の時に、
バーグマンは初めに配役されたお嬢さま役が気に入らず、
イメージの固定を嫌って娼婦役を切に希望しました。
結局、順当なら娼婦役のラナ・ターナーがお嬢さま役に。
「プラトーン」でも、トム・ベレンジャーが冷血なバーンズを、
ウィレム・デフォーがエイリアスやることに……。
意外性を求めた配役の妙。その辺が意外にピッタリとハマり、
トム・ベレンジャーの役者としての1つの頂点になったのだと思います。



 「トムはね……スタンレーをやりたかったのよ……。」

テネシー・ウィリアムズ畢竟の傑作「欲望という名の電車」で、
主人公ブランチ・デュボアの妹、ステラを演った、
ジャニ・ブレンが僕に耳打ちしました。
時は今を遡ること約40年前の1981年6月7日、
東京は白山、今は閉館になって久しい三百人劇場でのこと。
ミルウォーキー・レパートリー・シアターが、
新進気鋭のハリウッドスター、トム・ベレンジャーをスタンレーに迎え、
東京で「欲望という名の電車」の公演を打った時のことでした。
何で見たんだろう……確か「ぴあ」だったのかな?
今となってはどのようにしてその情報を得たのか覚えていないんですが、
トム・ベレンジャーのファンの僕は、都合2回にわたって公演を見に行ったんです。
2回目の時、開場を待っていると、チョッと離れたところにタクシーが停まり、
中からトム・ベレンジャーが下りて来るではありませんか!
皆さん、遠巻きにしています。勿論、すかさず歩み寄って話しかける僕。
この辺の度胸と言うか図々しさと言うか、この頃からなんですね(笑)
舞台では大きく見えるけど、僕とさして変わらぬ身長、
済んだブルーグリーンの瞳……静かな物腰で感じが良かったです。
今日は劇場入りが遅れたから、もし良かったら、
終演後にここで待っていてくれないか?
ハイハイ、勿論、待ちますとも!(笑)

ジャニ・ブレンが教えてくれたところによると、
当時「欲望という名の電車」の映画化の権利を、
シルベスター・スタローンが持っていたそうなんです。
スタローン……スタンレーをヤル気満々ですね。
スタンレーは、マーロン・ブランド以来、
所謂、肉体派の男優がやると言うお約束が出来上がっていたから。
「エイドリア〜ン!」じゃなくって「ステラぁ〜っ!」って叫びたかったのね(苦笑)
「欲望という名の電車」は、蜷川幸雄演出の帝国劇場版では、
日本が舞台になり、ポーランド人のスタンレーが在日韓国人に。
浅丘ルリ子と隆 大介の熱演もありましたが、何とも珍奇な仕上がり(苦笑)
スタローンはポーランド系をイタリア系に翻案したかったんでしょうね。
この時、まだ存命だったテネシー・ウィリアムズが、
実はブランチを演じて貰いたいと切に願ったのがメリル・ストリープ。
凄っごく分かる気がする……演技力、容姿、年齢的にもドンピシャですもんね。
結局、映画化は難航して実現せずに、1984年にアン=マーグレットと、
トリート・ウィリアムズのテレビ版に移行しちゃいました。
もしもこの時に、テネシー・ウィリアムズとトム・ベレンジャーの夢が実現していたら、
メリル・ストリープとトム・ベレンジャーのバージョンが出来ていたかもしれません。
皆さん「プラダを着た悪魔」をご覧になりました?
僕はまだこの頃の美しいメリル・ストリープなら、
ぎりぎりでブランチを出来ると思ったんですけど……。
もうチョッと無理かな?今ならケイト・ブランシェットでしょうか。
本国オーストラリアの舞台も踏んでいるみたいですし……。
でも「ブルージャスミン」でブランチもどきやっちゃったし。

電車で新宿に移動する途中で、カンパニーの皆さんと一緒に移動。
ジャニ・ブレンにベジタリアンを日本語で何と言うのか教えてあげたり、
他愛のない会話をしながら楽しい一時。
僕がトム・ベレンジャーの大ファンだと知ると、
これは内緒なんだけどと言いながら、
ジャニ・ブレンが当時の映画化の内幕を教えてくれたんです。
そのトム・ベレンジャーは、僕たちが話しているところに来て、
僕のショルダーバッグを褒めてくれたり、
最新作の「戦争の犬たち」のことを話してくれたり……。



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何だか懐かしいですね……遠い目になってしまいます。
写真はその時に貰ったトム・ベレンジャーのサイン。
僕の名前……間違っていますがご愛嬌(笑)


2018年10月2日


ブノワ。


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ピアノからベルイマンへ。 

2018/09/26 Wed.

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 「クラシックの華はピアノと声楽よっ!」

僕の35年来の親友で悪友で愛すべきべったらオネエのMが言った。
このエピソードを藤原真理さんに話したら苦笑いしていましたけど……。
僕はクラシックと言えば矢張りチェロの人ですから、
やっぱり、おクラシックってそう言うものなのかと思いながらも、
今までなかなかピアノを聴く機会がありませんでした。
リサイタルは数えるほどしか聴いていません。
イーヴォ・ポゴレリチをサントリーホールで聴いた時は、
2階席の通路を挟んだ隣に美しい美智子皇后がお座りになっていたり、
数少ないので、想い出も色濃く鮮明です。



さて、先日のこと……。
ジョス・ファン・インマゼールと伊藤綾子のリサイタルを聴いて来ました。
「ドビュッシーとフランス同世代の作曲家」です。
1877年生のエラールピアノを使っての連弾で、ドビュッシー没後100年だそうです。
曲目はエリック・サティ、モーリス・ラヴェル、クロード・ドビュッシー。
今年は区切りがいい企画が多いですね……。
レオナール藤田が没後50年、バーンスタインも生誕100年、クリムトが没後50年、
バルテュスが生誕100年、いわさきちひろも生誕100年、高校野球が100周年記念(笑)

ピアノを聴く機会も少ないので、連弾はまったくの初めてでした。
面白いですね。2人の身体とは別に4本の腕が違う生き物のように動きます。
お互いに尊重し、交差する4本の腕が1つになり曲を奏でる……。

実は、もうかれこれ10年くらい前になるでしょうか……。
伊藤綾子さんの宣伝用のポートレートを撮ったことがあるんです。
何だか懐かしいな……まだ少女の面影を残していた彼女が、
美しいマダムになっていたのには驚きました。
薔薇の蕾が満開に花開いたかのよう……。
今回、写真を撮ったのが親友のカメラマンのMちゃん。
これまた不思議な縁を感じます。



ピアノと言えば……。
つい先日のこと、イングマール・ベルイマンの晩年の傑作、
イングリッド・バーグマンの最後の映画作品「秋のソナタ」を劇場で観ました。
この作品……物凄く好きなのです。登場人物はたったの5人。
世界的なピアニストの母親シャルロット(バーグマン)と、
その娘で、田舎の牧師に嫁いだエヴァ(リブ・ウルマン)、
エヴァの夫の牧師ヴィクトル(ハルヴァル・ビョーク)と、
シャルロットの末娘で脳性麻痺で寝たきりのへレナ(レナ・ニーマン)。
そしてシャルロットのマネージャー、ポールに(グンナール・ビョルンストランド)。
ほぼ母娘2人の会話劇、心の内の感情をモノローグで語らせる構成が演劇的です。
久し振りの再会を喜ぶ母娘は、エヴァがシャルロットに内緒で、
妹のへレナを牧師館に引き取っていたことから雲行きが怪しくなります。
見捨てた脳性麻痺の末娘の存在に大きく心乱され、怒りが込み上げる母。
いたらない自分を辱めたと思い込む傲慢な母シャルロット。
幼少期の母への不満や、娘時代に一方的に堕胎させられた怒りが一気に吹き出す娘エヴァ……。
眠れぬ深夜のリビングでの、罵り合い責め合う恐ろしい母娘の対決は、
高圧的だった母がいつの間にか、まるで娘になったかのように娘に許しを請います。
大女優2人による圧倒的な台詞の応酬、千々に乱れる心は、
スヴェン・ニクヴィスとのカメラによってクローズアップされます。
だけれど、この映画の一番の観どころは、食後にショパンの前奏曲を2人が弾くシーンです。
映画とは斯くあるべき……映画史上最も恐ろしい傑作シーン。

是非、弾いてみるようにと促され、
たどたどしく弾く娘のピアノを横で聴きながら、
私に内緒で妹を引き取ったりしても、やっぱりあなたはまだまだだと、
薄らほくそ笑むバーグマンの一世一代の顔の演技……。
手本を見せてと懇願され、ショパンはこうあるべきと、
講釈を垂れながらこれ見よがしに弾く母親のピアノを複雑な思いで聴く娘……。
前奏曲の最初の部分を弾く手のクローズアップから、
カメラは引いてバーグマンの顔を捉えます。おぉ!バーグマン自身が弾いている!
勿論、その先はカットが変わって実際の音はプロの手によるものなのですが、
そこは映画のマジックです。極めて効果的な映画技法、見るものを騙すテクニック。
このシーンだけでもこの作品を見る価値があります。
大女優2人の火花が散るシーンです。

 「化粧もしないで出演したからもうハリウッドからオファーが来ないわ。」

と、冗談まじりで愚痴るバーグマン。
内緒で末娘を引き取られた怒りと戸惑いを隠すため、
夕食のために髪をセットし、真紅のドレスで階段を降り立つ、
バーグマンの美しいことときたら!


その傑作「秋のソナタ」を……。
もう5年前にもなります。翻訳、台本を木内宏昌、演出を熊林弘高。
現在の日本演劇界で最も信頼出来る2人に加え、
佐藤オリエと満島ひかりの新旧実力派女優による2人芝居を観ました。
期待しない方が無理と言うものですよね……そして、見事にコケました。
これは2人芝居では無理です。映画のように、蚊帳の外の夫の視線があり、
末娘の母親への剥き出しの愛情がなければ。そして何よりもピアノがない!
ピアノを弾くシーンでは音すらありませんでした……想像しろって?
映画の一番の観どころがソックリ抜けているのです……。
映画を観ていない人たちは何が何だかまったく分からなかったハズです。
これだけの才能が終結しても化学変化が起こらないこともあります。


イングマール・ベルイマンと言えば……。
映画の魅力に取り付かれた高校生の時に、
「岩波ホール」で開催された「シーズン・オブ・ベルイマン」にて、
「冬の光」「儀式」「魔術師」「夜の儀式」の4本を観ました。
ベルイマンと言うと、その難解さや、
神の沈黙と言った重たいテーマで敬遠されがちですが、
大体が無心論者の僕にしてみれば、一大事に神からの啓示、
返答がないことに大いに苦しみ身悶えする登場人物に共感出来る訳もなく(苦笑)
まだまだお子ちゃまだったので、ただただ難解な監督と言うイメージしかなかったけど、
それでも「叫びとささやき」「秋のソナタ」は大好きな作品で、
唯一、劇場で見逃してしまい、心残りにしていたのが「ファニーとアレクサンデル」。
上映時間は休憩を入れると5時間30分にもなります。
見る方も体力勝負、でも、待てば海路の日和あり、
このほど晴れて劇場で鑑賞することが出来ました。
僕はベルイマン演出の舞台版「ハムレット」も見ていますが、
矢張り、ベルイマンは演劇的なんだと独りごち、
ある劇場を持つ一家を取り巻く魅力的な人々の、
愛すべきエピソードに我を忘れる5時間30分でした。

ハァ……やっぱり映画はいいですね。
今日は僕の愛すべきゲイの親友の一言からベルイマンへ(笑)
何だかとりとめがない話しでゴメンなさい!


2018年9月26日


ブノワ。


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怒髪天を突く……おねぎとピーマンで映画評。 

2018/09/02 Sun.

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 「バタンっ!!!!!」

大きな音をたてて玄関のドアが閉まった……。
そこには憤懣やるかたないと言った表情のおねぎが……。
靴を乱暴に脱ぎ捨てリビングに入ると、
優雅にシャンパン・グラスを傾けながらピーマンがソファーに座っていた……。


立て板に水の如く澱みなく、油紙に火が点いたようにペラペラと。
お互いの台詞を遮らんかのような勢いで、
丁々発止、息つく間も泣く台詞を言うこと……。


O  「あら、ピーマン。帰っていたんだ……。」
P  「チョッとぉ、おねぎ、ドアが壊れちゃうじゃないの!」
O  「あら、ウルサいのよ!アタクシお怒りモードなの。」
P  「まぁ、本当だ。顔がコワい。でも顔で言うならアナタいつもお怒りモードじゃないの。」
O  「ウルサいのよ!アタシ、今日は許さないわ!」
P  「まぁ、恐ろしい。でもって、一体何を許さないのよ。」
O  「あら、ピーマンも試写会で観たんでしょう?アレ。」
P  「アレ?アレってアレね?観たわよ『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』」
O  「だったらアタシのお怒り分かるでしょう?」
P  「分かるわ。アレはないわね、詐欺だもの。」
O  「そうよっ!詐欺よ、詐欺!東宝東和は詐欺会社よ!」
P  「まぁ、ハッキリと言い切るわねぇ(苦笑)」
O  「だってアナタ、メリルが最後の5分くらいしきゃ出て来ないじゃないの!
    これを詐欺と呼ばずして何と呼ぶ?アタシ、怒髪天を突いてんの!
    怒りがグラングラン沸騰してんのよ!」
P  「まぁ、コワい。おねぎ、顔が顔が鬼瓦みたいよ!」
O  「お黙りぃ、ピーマン!アナタ、予告編見たでしょう?
    頭に来るのはさ、前作の映像使っていない?
    さもメリルがメインで出て来るような印象を受けるじゃない。
    アレはないわ。冒頭に額縁に入ったメリルの写真が出て来た瞬間、
    あぁ……これってもしかしてヤバいかもって思ったわよ。
    本当に頭に来る、アタシは許さないわ!」
P  「くくくく……アナタ、おねぎったら浅香光代になったのね?(笑)」
O  「何なのよ、その浅香光代って?」
P  「ホラ、彼女言うじゃない『アタシャ許さないよ!』って(笑)」
O  「あら、アタシが浅香光代だったらアナタは野村サッチーじゃないの!がはは!
    アタシ、マジでお金も時間も返してって言う感じよ!」

ピーマン、ここでおねぎにグラスを渡してシャンパンを注ぐ。
一口シャンパンを煽ったおねぎ、ピーマンの隣に腰をおろす。

P  「ま、いいわよ、我慢しなさいよ。
    そんなことよりもさ、このところアナタの好みの男の映画が続いたじゃない?」
O  「そうっ!そうなのっ!アタシのクリスね?それからアタシのオールデンね?!」
P  「ふふふふ、アナタも単純ね。怒ったおねぎがもう笑った。
    でもさ、どうしてアナタって有名人を自分の所有物にしようとするのよ。」
O  「ウルサいのよ!いいじゃないの、凡人の細やかな楽しみよ!
    それに、映画は男で見るものなのよっ!」
P  「あら、アタシは監督と女優で見るわ!」
O  「フン!何言ってんのよ、映画評論家ぶっちゃって!
    アタシはさ、クリス・プラットってさ、
   『マネー・ボール』のチョッと太目の頃から目ぇ付てんの。」
P  「あら、今だって太目じゃないの!」
O  「ウルサい、ピーマン、お黙りぃ!」
P  「いいわよね、農耕民族体形で(笑)少なくとも騎馬民族系じゃない。
    でも、映画的に残念なのはさ、島を出ちゃうと恐竜の魅力が半減なのよ。」
O  「そうっ!アレは不思議だったわね、一気に輝きを失うのよ。
    クリスとラプトルのブルーの愛情って涙ものだわ……。
    もう1作作るでしょう?今度はどうするのかしらね?」
P  「アタシはクリスはどうでもいいけどオールデンが好き!」
O  「あら、アタシが最初に見付けて来たのよっ!」
P  「まぁ、おねぎ、相変わらず傲慢ねぇ……でも、可愛いわよね。
    その辺にいいるお兄ちゃんって言う感じでさ。」
O  「まだ何者でもないハン・ソロを朴訥と演じていたわ。」
P  「アタシさ『ヘイル、シーザー!』の時の物凄い訛りの西部劇スター役が好きなのよ。」
O  「ウン、アレは確かにウケた、良かったわね。」
P  「おねぎ、こっちなんかあと2作も作るのよ!
    コケたらしいけどどうするのかしら?」


O  「ねぇ、ピーマン、アナタご覧になったでしょう?『アイ,トーニャ』」
P  「観たわ。アタシはこっちにお冠。何なのあのタイトルは!」
O  「そうそう、センスの欠片もないあのタイトルね!今時、誰が分かる?
    トーニャ・ハーディングなんて余程のフギュアファンじゃないと知らないわよねぇ。」
P  「そうなのよ、それになぜ『、』じゃなくって『, 』なの?訳分かんないわぁ。」
O  「でもさ、なかなか面白かったわよね。あの強烈なおっかさんね(爆)」
P  「彼女さ、アリソン・ジャニーって『めぐりあう時間たち』の中でさ、
    メリルのレズビアンの恋人役やっていたわよね。」
P  「そう、映画は面白かった。3流映画のキワモノで終わるところを、
    よくぞアカデミー賞に絡む作品にまで仕立てたって感じ。
    でもさ、メリルってレズビアン役多いわよねぇ……。」
O  「そう!『マンハッタン』『めぐりあう時間たち』『シルクウッド』……って、3本か。」


P  「アナタ、一緒に観た『カメラを止めるな!』はどう?」
O  「うぅ〜ん、アタシは可もなく不可もなくだわ……。」
P  「アタシは結構、好きなのよ。初めはさ、ヘッタクソなゾンビ映画観せられてさ、
    ムンムンしていたんだけど、その後に段々と映画としての体裁が整うじゃない。
    カメラの向うにまたカメラがあって、そのまた向うにカメラがあって……。」
O  「そうなんだけどさ、アタシはやっぱりキッチリした映画が観たいわ。」
P  「でも思うのよ、この作品が東京のど真ん中の大劇場で上映されている不思議。」
O  「ウン、それはあるわね、口コミって本当にバカに出来ない。」


P  「そう言えばさ、アナタおねぎ、どう思った?『オーシャンズ8』」
O  「あら、アタシは好き。アタシのケイトが出ているし。」
P  「ねぇ、その『アタシのケイト』って言うのやめてくれる?」
O  「あら、いいじゃないの。アタシのケイトなんだもん。
    でもさ、これって確かに面白いけどさ、1つ水を差してもいい?」
P  「あら、いいわよ。お説拝聴しようじゃないの。」
O  「アタシ思うんだけどさ、カルティエが幻のネックレスを貸し出すじゃない?
    アナタ、あれって本物を貸し出すと思う?
    今時さ、名だたる宝石には必ずレプリカが存在するのよ。
    メトロポリタンに展示してあった宝石の数々もそう。
    アタシは全部、偽物を飾っていたと思うの……。」
P  「まぁ、おねぎ、急に現実的になっちゃって……映画が成立しないじゃない!」
O  「アタシだってたまに現実的になるのよ。でもさ、笑ったのはさ、
    全員、役作りなんかしていないわね。素のままじゃないの!」
P  「そうなのよ!(笑)そのまんまサンドラ・ブロック、いつものアン・ハサウェイ、
    どこをどう切ってもケイト・ブランシェット!(爆)」
O  「ヘレナ・ボナム=カーターなんか最近は全部一緒よ!(爆)
    なんかさ、悪いけど、皆、オカマみたいなのよ!(爆)
    アタシのケイトなんてモロにオカマのタチよね!」
P  「やめなさいよ、おねぎ!オカマなんて言っちゃダメ!」
O  「あら、じゃぁなんて言うのさ。オカマはオカマよ!
    いいじゃないの、オカマのアタシが言うんだからさ!
    オカマじゃなかったら、皆、女装した男みたいじゃないの!がはは!」
P  「確かに!それは認めるわ(笑)」
O  「はぁ……オカマでもいいんならアタシも出てみたかった!」
P  「まぁ『オーシャンズ8』に?それは無理だわよ。
    だって、アナタには何一つとして特技がないじゃない!
    ドン臭いし機会音痴、運動神経マイナスだし……。」
O  「ウルサいのよ、あるわよ、アタシにだって特技が。」
P  「あら、何かしら?美人局?それとも恫喝?(笑)」
O  「フン、バッカねぇ、ピーマン!アタシにはこの美貌があるじゃないの、美貌が!」
P  「あら、アナタが美貌ならアタシは展示されていた宝石だわ!」
O  「バッカねぇ!だからアレは偽物だって言ったじゃない!
    そうよ、ピーマン、アナタは偽物なのよ!」
P  「フンだ!何か1つ忘れていませんか?って。
    アタシたちは双子なのよ!一卵性双生児なの!
    アタシが偽物って言うことは、アナタも偽物よっ!」
O  「はぁ……ピーマン、そうだったわ。
    アタシとアナタは出来の悪いバロック真珠な双子の兄弟……。」
P  「おねぎ……。」
O  「ピーマン……。」
P&O「アタシたちは……因果だねぇ……。」 

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「マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー」を観て参りました。
そして怒髪天を突いています。テーブルを引っ繰り返したいくらい。
映画の出来とか言うのではありません。
こういう詐欺まがいの宣伝をする映画会社に腹が立ちます。
元々前作からしてそれ程、好きな作品ではないけれど、
大好きなメリル・ストリープが出ているんです。
劇場に駆け付けますよね?駆け付けてみれば……。

この怒り、どこにぶっつけよう(笑)
早く口直しの映画が観たい!


「マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー」……★★……20点。
「ジュラシック・ワールド 炎の王国」……★★★★★★☆……65点
「ハン・ソロ・スター・ウォーズ・ストーリー」……★★★★★★★……70点
「カメラを止めるな!」……★★★★★……50点
「オーシャンズ8」……★★★★★★……60点


2018年9月2日


ブノワ。


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Call me by your name, and I'll call you by mine.  

2018/05/03 Thu.

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…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

2人は太陽と月なのだ……。

いかにも自信たっぷりで快活で背が高く、
頑丈な体躯に金髪、深い海のように澄んだ青い目……。
少年の父親の軽いジョークにも快活に、そしてウィットに富んだ応酬する、
まるで太陽かと見まごうばかりに眩いアメリカ人の青年に少年は恋をする。
到着した青年を2階の窓から観察しながら、

 「自信家だね。」

たった一言、女友達に対して話すでもなく恋に落ちる予感の少年。

エリオは少年と言ってももう17才だ……。
でも、まだ恋に焦がれる熱病の年頃。
恋愛の対象が男とも女とも付かない曖昧な年代だ。


教授に招かれて、避暑のために北イタリアの別荘に到着した青年は、
どこか自信なさげで憂いを秘めた教授の息子に自分にないものを見る。
自分にないものと言うよりは、自分の弱さとして過去に封印して来た同じ匂い。
1980年代とは言え、まだまだ周囲の厳しい差別と侮蔑の視線の中で、
ゲイとして生きることの難しさを身を以て感じ、
息を殺してクローゼットの中に身を隠して来た、
無意識の内に抹殺して来た己の化身、分身を見たに違いない。


母親は「シャイなのよ。」と一言で、青年、オリバー評するけれど、
一瞬にして地元の女の子たちの視線を釘付けにし、
街にやって来て数日もしないのに、よそ者には冷たいであろう、
地元のオヤジさん連中に見事に溶け込んでカード遊びに興ずる、
人懐こいオリバーの一面をエリオは誰よりも知っている。
熱い視線は送らない。でも、意識の片隅の常に気になる存在。
そして、背中で、心の中で眩しい眼差しで見つめます。



丁寧に丁寧に、日常のシーンを積み重ねて行きます。
風光明媚な北イタリアの田舎町、青い空、澄み渡る水、
風の音、さえずる小鳥の声、虫の音、草いきれ、深夜の星の瞬き……。
そんな中、人々の生活の音や色がアクセントになります。
食器が触れる音、騒音かと思われる会話の声(笑)
ページを捲る音、立ち上る紫煙、桃の赤、アプリコットのオレンジ、
オリバーが脱ぎ捨てたスイムウェアの色、色、色……そしてピアノの音。

映画はハッキリと2人が恋に落ちる瞬間を見せません。
触れる肌の汗ばんだ感触、抱きついた時に思い切り吸い込む体の匂い……。
曖昧なまま、戯れ付く子犬のように積極的なエリオに押され、
一気に燃え上がる恋心。年上とは言いつつ、オリバーもまだ24才。

 「そう言う話しはしてはいけない……。」

 「僕たちはまだ恥じることは何もしていない……。」

初めてのキスのあと、
少しだけ年長の自制心でエリオを諌めてはみたものの、
絡む視線、触れる指先、吐息の中に熱い感情を感じ、
堰が切れたように今度は自らが積極的にエリオの愛情を乞うオリバー。
結ばれた後は自責の念に苛まれ、エリオを傷つけてはいまいか、
何か重大な過ちを犯してしまったのではないか……と、不安になります。
それを口にしてエリオに訪ねるオリバーはまだ24才。
結ばれた後に立場が逆転するのが面白いです。

避暑地の開放的な空気がそうさせたのではない……。
エリオは、未来のこうありたい、理想の自分の姿をオリバーに見い出し、
オリバーは、自らが封印して来た過去の自分をエリオに懐かしさを感じたのでしょうか。

映画は淡々と小さな事柄を積み重ね、
そして、やがて訪れる駅での別れ……。

駅での別れを描いた作品は数多いです。
「旅情」「ひまわり」「終着駅」……枚挙にいとまがないけれど、
「君の名前で僕を呼んで」ではエリオの後ろ姿だけしか見せません。
感動する気満々、泣く準備万端の人たちは大いにはぐらかされます(笑)
あっさりとしたラストシーン?……と、思いきや、
その後のシーンの数シーンでエリオの成長と、
オリバーに対する愛情の深さを改めて描き切ったところが秀逸です。

大きな感動を期待し、大いに泣くことを期待した人たちは、
少しはぐらかされるかもしれません。
シャツの下りがあるので、どうしても思い起こし、比較してしまう、
アン・リー監督の傑作「ブロークバック・マウンテン」のラスト、
クローゼットに大事に仕舞われたジャックのシャツが引き起こす、
劇場の椅子が大きく揺れるほどの、心臓を鷲掴みにされ、
感情を大きく揺さぶられるような嗚咽、感動はないけれど、
それはそれで構わないと思うのです。

僕が敬愛する、北は札幌のリズこと vivajiji姐さんがいみじくも仰有いました。

 「不覚にも涙がこぼれた・・・
  思わず笑ってしまった・・・
  そういう作品がいい映画。」


僕は諸手を挙げて絶賛はしません。
幾つか気になる部分もありました。
脚本が饒舌すぎるのです。書ける作家が往々にして陥る落とし穴。
語り過ぎるのです。映画は映像で見せて欲しい……僕はそう思います。

例えば、市川崑の「細雪」での雪子のお見合いシーン。
見合い相手の東谷子爵本人に酌をされ、
猪口から目を上げた雪子の上気した頬と何とも言われぬ笑み。
これまで幾多の見合いをことごとく断って来た雪子が見せた少女のような笑み。
それを見た、姉、幸子の視線。次に雪子にどこかで恋心を抱いていた貞之助の視線……。
これだけで1つの台詞もないままに3人の千々に乱れる感情を描く訳です。
これぞ映画、映画技法の到達点としては最高峰の一例だと思うのです。

父親が息子に諭すように言い含める人生の教訓。
これらはこの作品の大事なテーマでもあり、
監督と作家が観客に語りかける重要なポイントです。
自らの過去を告白しながら愛情たっぷりにエリオに語りかけます。
少し余計ではないでしょうか。肝心なところで語り過ぎてしまった。
2つ3つの台詞で描けたのでは?あとは表情のアップとカットバック……。
台詞を映像に置き換えて!映画芸術は映像で見せて欲しい……僕はそう思うのです。
テーマは決して台詞で語ってはいけない……僕の持論です。
台詞を語り過ぎるのは、書ける作家の悲しい性です。


初日2日目とその翌日、立て続けに2回鑑賞しました。
また観に行きます、きっと違ったものが見えて来るハズだから。
オリバーとエリオに「Later !」と、言いましょう。

 「Call me by your name, and I'll call you mine.」

清々しくも余韻があって、行間を読ませてくれる秀作です。


「君の名前で僕を呼んで」……★★★★★★★……70点。


2018年5月3日


ブノワ。


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アプローチの違い。 

2018/04/18 Wed.


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超絶スーパー、バタバタな年度末が終わり、
ホッとする間もなく禁断症状が出てきました。
そう、映画館に行きたい病ね、ここ暫く殆ど行かれなかったから。

本当に久し振りの休日、
いてもたってもいられずに映画館に駆け込みました。
この日、立て続けに観たのは、
「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」と、
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の2本。
両方とも本年度のアカデミー賞の主演賞にノミネートされ、
「〜チャーチル」のゲーリー・オールドマンは晴れて初受賞となり、
一方のメリル・ストリープは、なんと21回目のノミネーション、
さらに驚くべきは、この10年間で7回のノミネート!
そんな世界最高峰の演技を堪能すべく、
いそいそと劇場に行って参りました。

チョッと驚いたのは、ゲーリー・オールドマンと、
メリル・ストリープの役作りへのアプローチが全く違っていたこと。
2人が演じるキャラクターはどちらも実在の人物です。
実在の人物を演じるにあたっての苦労は並大抵ではないと聞きます。
ある程度、見かけが似ていることも必要だろうし、
実在の人物ですから、生前の、あるいは今の本人を知っている人も数多いでしょう。
ただのソックリさんに終始していては役者としての名前が廃るし、
その辺りの兼ね合い、そして本人に似せてなお、
その隙間に自らの工夫と感性を入れ込むテクニック。

チョッと前にこんな記事も書いています。
宜しかったら併せてご覧になってみてくださいね。


チャーチルを演じたゲーリー・オールドマンは、
こちらもアカデミー賞を受賞された、辻 一弘さんの、
素晴らしい特殊メイクの力を借り、限りなくチャーチルの外見に似せます。
ゲーリー・オールドマンの面影があるのは目元だけ。
そしてリズムよくキングス・イングリッシュの台詞をスタッカートで刻み、
まるで名優の舞台の華麗な台詞術を観ているかのよう。
もはやゲーリー・オールドマンのワンマンショーです。

一方、ワシントン・ポストの実在の経営者、
キャサリン・グラハムを演じたメリル・ストリープは、
計算された押さえた演技で終始します。
声を荒げることなく、殆ど囁くような穏やかな台詞術。
緻密に計算された目の演技は映画特有のクローズアップあってこそのもの。
その辺は舞台の表現技術に近い撮り方と、
映画ならではの技法の違いをまざまざと見せつけられました。

驚くべきことは、アカデミー賞が同業の仲間の、
投票によるノミネーションだと言うこと。
詰まりは、押さえた押さえた地味なメリル・ストリープの演技を、
仲間の役者陣はキッチリと見極めて評価していると言うことなんです。
ノミネートされた全ての候補者が全員受賞者で、
その中から最優秀賞を選ぶどこかの国の馴れ合いのアカデミー賞の生温さとは違い、
勝つか負けるか、オール・オア・ナッシング的な厳しさの中に、
仲間の演技を公平に見極める眼力、相手の仕事に対する尊敬、
及び、確かな審美眼があることに驚かされます。


そうそう、ゲーリー・オールドマンに付いては面白いエピソードがあります。
それはまた今度、何れかの機会に書くとしましょう。
この時期はいい作品が目白押し……トーニャ・ハーディングのとかね。
引き続き、映画館に通うとしましょうか……。


2018年4月18日


ブノワ。


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星空に想いを馳せる……「スターウォーズ 最後のジェダイ」。 

2017/12/25 Mon.

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「スターウォーズ・最後のジェダイ」……既に2回鑑賞です。
TOHOシネマズの大きなスクリーン、TCX、ドルビー・アトモスにて。

「スターウォーズ」の第一作目が公開されたのは今を遡ること39年前のことです。
本国アメリカから半年も遅れての公開……有り得ません(怒)
公開前は「惑星大戦争」と言う仮のタイトルが付いていたことは有名です(笑)
実は、その僕らの度肝を抜いた「スターウォーズ」が、
9作品あるスターウォーズ・サガの、第4作目であること、
先ずはエピソード4からエピソード6まで制作し、
その後は、前日慓のエピソード1からエピソード3までを作り、
最後にエピソード7からエピソード9まで作られると聞いた時には、
全9部作!果たして、生きて前作を見ることが出来るのか?
そんな冗談が出るほど壮大な計画に思えました。
そして、どうやらエピソード7からエピソード9までは制作されないとニュースが流れ、
ガッカリしたのも束の間、その後、撤回されて今回のエピソード8の公開となった訳です。
どうやら生きている間に9作目まで全部、見ることが出来そう(笑)
何でも、今の主人公たちでその後の3部作が作られるそうなので、
果たしてそっちはどうか甚だ疑問ではありますが……(苦笑)

さて、シリーズ物の、それも3部作の真ん中の作品は非常にハードルが高いです。
物語の始まりが前作の続きで、しかも、エンディングが次作へ続く……。
この難しい条件を見事にクリアしたのが、「スターウォーズ/帝国の逆襲」です。
全編を重苦しい空気が立ちこめる第エピソード5でしたが、
職人芸的な監督、アーヴィン・カーシュナーの見事な手腕で、
見応えのある作品になるとともに、映画史上、第一作を凌ぐ、
クォリティーの作品になったのです。

今回の「スターウォーズ/最後のジェダイ」も、
なかなか見事な仕上がりになっていました。
「帝国の逆襲」の作り方を踏襲し、レジスタンスを、レイア将軍率いる宇宙船と、
レイがルークスカイウォーカーにフォースの極意を教わる惑星オクトー、
それからファーストオーダーを倒すために、
カント・バイトのカジノから敵陣に乗り込む、フィンとローズの2人の3組に分け、
カット割りの時間を次第にを短くしてテンポを上げる辺りはさすがです。
152分はチョッと長いけど、最後まで楽しめ、
また、次回作への期待も盛り上がったまま観終わることが出来ました。
後から思えば、数多くの御都合主義も目立ったけどね……。
例えば、全能のスノークがあんなことが分からなかったとか(笑)
大体、スノークって言えばノンノンのお兄さんだし(爆)
宇宙空間に投げ出されたレイア姫がフォースの力で宇宙遊泳!(苦笑)
抑制の利いたCGはシリーズの中でも白眉。
但し、カジノのシーンなど、宇宙人が沢山出て来る場面や、
イウォークもそうだったけど、今回は変な鳥のキャラクターが出て来ます。
その辺って何やら作り物感満載(苦笑)子供っぽさが出てしまうのだけれど……。

少し気になったことがあります。
この作品に漂う自己犠牲の精神……そう、特攻精神です。
自らの命を犠牲にしてまでレジスタンスのために、
ファーストオーダーに一矢報いるために自らの命を犠牲にするの。
冒頭では、ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)が単独でメガ・デストロイヤーに攻撃を仕掛け、
今回、重要な役を担うローズ・ティコ(ケリー・マリー・トラン)の姉、
ペイジ・ティコ(ゴー・タイン・バン)が自分の命と引き換えに、
メガ・デストロイヤーに爆弾を落とし(重力のない宇宙空間で爆弾が落ちて行く不思議……。)
フィン(ジョン・ボイエガ)が新たなレジスタンスの基地をキャノン砲から守るために、
ポンコツな戦闘機を駆って単身突撃します。
百歩譲って、見事体当たり出来たとしても、蚊に刺されるくらいの効果しかないハズ。
ローズはローズで愛するフィンを助けるために、フィンの戦闘機に体当たりで突っ込む……。
それは正義とかの大義名分のためではなく、フィンに抱いたほのかな愛情のため……。
ホルド提督(ローラ・ダーン)は、全員が脱出完了した母艦で、
脱出した輸送船を守るためにメガデストロイヤーに突っ込みます。
そして、ルークス・カイウォーカー……ラストでアレですから(笑)
皆、自分を犠牲にして正義を守ろうとする……。
今ってそんな風潮なのかしらン?一見、美談だけれどチョッと薄気味悪いなぁ。
長いものに簡単に巻かれ、即座に寝返る、
飄々としたDJ(ベニチオ・デル・トロ)が却って新鮮(笑)
チョッとスリムになってますます古谷一行に似て来たことを書き添えておきます(爆)

第9作目が待ち遠しいです……。
前作でハン・ソロがあんなことになり、今回、ルークがアレで、
キャリー・フィッシャーがお亡くなりになったので、
果たして、エピソード9は若手3人の主役で大丈夫だろうかと心配もしますが、
有名どころを配して大いにコケた(内容的に……。)
エピソード1からエピソード3みたいな例もあるし、何とも言えないのだけれど……。
(ブノワ。さん的にはなくてもいい3部作だと思っている。)
ハン・ソロもレイア姫もルークも最初は無名だったものね。
だけど、ざっと数えて、反乱軍はドロイドを入れて15人くらいしか残ってないのよ……。
SOSを全宇宙に送って梨の礫だったのに、
さてさて、これからどうやって体制を立て直して行くのか……。


フランク・ハーバートの「Dune/デューン」を読んでも明らかなように、
悪を倒して天下を盗った途端に、今度は追われる立場になるのは必定で、
エピソード9が終わった時、新たにどのような物語が始まるのかも楽しみの一つです。
ラスト、帚を持つ少年が、レジスタンスに相対する時代が来るのでしょうか。
この少年、現に少しフォースがあるのかも……帚を念力でたぐり寄せていましたから。



今日の写真は9月に訪れた「イコロの森」の「スターウォーズ」な夜空(笑)
スタッフの皆さんと楽しく食事をして宿まで送って貰い、
皆さんが帰った後、虫の音一つ聞こえない静寂の中、夜空を見上げます。
そこにはクリスマスのイルミネーションなんかものともしない星空が……。
そうだ!とばかりにカメラを持ちだして撮影です。
宿の辺りは真っ暗なの……外灯の一つもないし(苦笑)
本当、コワいのですよ。1メートル先も見えないもの。
凄いですね、東京ではここまで星は見えません。
ISO25600だけど、こんなに綺麗に撮れるんですよ。
勿論、根性の手持ちで撮影でございます(笑)
a long time ago in a galaxy far far awayでは、
この地球に光りが届く遥か昔「スターウォーズ」な戦いがあったのでしょうか。
チョッと遠い目になってしまいますね……。


「スターウォーズ/最後のジェダイ」……★★★★★★☆……75点。


2017年12月25日


ブノワ。


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クリスティの通奏低音は愛……「オリエント急行殺人事件」。 

2017/12/10 Sun.

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「オリエント急行殺人事件」を観て参りました。
勿論、初日です。劇場は思ったよりもガラガラ……。
物凄く楽しみにしていたんです。43年振りのリメイクだものね。

結果から言うと、全くダメでした。突っ込みどころ満載でございます(苦笑)
もうね、これはポワロの「オリエント急行殺人事件」じゃない。
ミス・マープルや隅の老人、リンカーン・ライムみたいな安楽椅子探偵ではないにしろ、
ポアロが活劇を演じちゃいけないのですよ。鷹揚に構えて灰色の脳細胞を使わなければ。
それから雪に閉ざされたオリエント急行、それも一等車両の中、密室で起こる惨劇なんです。
橋桁の追い掛けっこや、ピストルで撃たれてみたり、外に出ての尋問、
それからダ・ヴィンチの最後の晩餐をイメージしたラストの謎解きのシーンなんて余分です。
全てをオリエント急行の車両の中でやるからこそ、濃密な雰囲気が醸し出される。
息が詰まるほどのスリリングさが生まれるんです。
冒頭の嘆きの壁の推理のシーンなんてまったくいらないし、
そもそもが、才気あふれる人が作るとオリジナルをイジりたくなるのがイケない。
自分なりにイジってオリジナリティーを出したい……。
イジればイジるほど綿密に織りなした原作が綻んで行きます。
何も原作を無理に変える必要なんてどこにもないのですよ。
カメラワーク……凝り過ぎ。もっとジックリと舞台を撮るように撮らなきゃ。
不必要な人種の配置も首を傾げる点。何故、アーバズノット大佐が黒人の医者に変更?
「スターウォーズ」の第一作の時に、黒人俳優がまったく出ていないと批判され、
(そう言うどうでもいいことに目くじら立てるバカが多い。)
第二作目の「帝国の逆襲」で要の役に黒人を配置したり、
この15日に公開される最後の3作の主人公が女の子だったり……。
僕は「スターウォーズ」は少年が男になる物語だと思っていますから、
何ともこの辺の世の中のご機嫌取り的な配役にはウンザリ。
ホワイト・オスカーと揶揄された翌年に、黒人俳優が大挙してノミネートされたり……。
こう言うのを「忖度」って言うんですよ。忖度、忖度、忖度っ!(苦笑)
何故、人目を気にするの?黒人がいない社会もある。
黄色人種が出て来ない世界もある。男だけの世界もありだし、
逆に女だけの世界があってもおかしくない。
そう、色々な時代や世界がある……それでいいじゃない。

役者陣も小粒(苦笑)シドニー・ルメット版の「オリエント急行殺人事件」には、
バーグマン、バコール、コネリー、パーキンス、レッドグレーブ……。
一時代を築いた往年の大スターたちがキラ星の如く出ていて圧巻でした。
ドラゴミロフ公爵夫人を演じた、今や老境に達してなお、
飛ぶ鳥を落とす勢いのジュディ・デンチも、
醜悪なメイクでしかめ面のウェンディー・ヒラーには敵わないし、
どこの馬の骨とも分からぬ隣のネエちゃんアンドレニ伯爵夫人なんて、
ルメット版は、一番美しい時のジャクリーン・ビセットだものね、
品位と格が違う。はぁ……ルメット版は良かった……。
全体を飾るアールデコの装飾に、リチャード・ロドニー=ベネットの流麗なワルツの調べ、
各階級を見事に衣装で表した格調高いトニー・ウォルトンの仕事!
そして仕上げはリチャード・アムゼルの手による映画ポスターの傑作!
「マイ・フェア・レディ」からブームになったイラストによる映画ポスターの紛れもない最高峰!
事件の核になるアームストロング事件を冒頭でフラッシュバックで見せちゃうルメットの慧眼。
原作は推理小説史上、最も有名なトリックの1つです。
映画を観る者がトリックを先刻承知であることを前提に、
大胆に料理して極上の1皿に仕上げた手腕は凄いです。

トリックの女王、アガサ・クリスティーの作品は、
出来不出来はあるにせよ、どれを取っても読ませるものが多いです。
その根底にあるのは「愛」です。通奏低音は愛……。
その愛があるからこそクリスティーの作品は読ませるし面白い。
果たして、この作品にはその愛が描かれていたかな?
母の、祖母の、恋人の、恩人の……それぞれの無償の愛は、
殺人を犯すほど強く描かれていたのかな?甚だ疑問です。

次作「ナイル殺人事件」が決まっているみたいですね。
ラストでポワロが「ナイル川の事件」で呼ばれていましたが、
事件が起こった後に駆け付けて、どうやってポワロが解決するのさ?(笑)

「オリエント急行殺人事件」……★★★★☆……45点。


2017年12月10日


ブノワ。


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変幻自在な「雪之丞変化」。 

2017/06/12 Mon.

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このところ旅の記録、ガーデンの記事ばかり続くので、
閑話休題、最近、観た「雪之丞変化」のことなどをチョッと……。


僕の人生の学校、学びの場は映画館と前に書きました。
本当、学校ではまったく勉強しませんでしたから(笑)
よくぞ卒業できたもんだと自分でも不思議に思います。
何となく行かせて貰った学習塾ではレタリングに熱を入れていたし、
高校時代は授業中にイラストレーターの山藤章二の書き文字を真似る練習(笑)
今の僕の書き文字はそのころの名残なのでございます(爆)
漢字の読み書きが得意なのは、ただ単に好きだからに他ならないし、
科学、物理、数学……全滅でした(笑)本当にイヤだった。
卒業?……まぁ、ギリギリ?

大人になってから、改めて誰かに何かを習ったのは、
三味線と金継ぎのみ……これは新鮮でした。
この技術系のテクニックは先生に習う必要があるけれど、
例えば写真!これは今やシャッターを押せば何かしら写る、
素晴らしいカメラのお陰で、素人でも可成りいい線の写真が撮れる……。
勿論、偶然の産物であることの方が多いのですけどね。
誰かに習う必要なんで全くないと思っています。



 「流す涙が芝居なら……♪」

さてさて、5月から6月にかけて2回、
久し振りに市川 崑の「雪之丞変化」を劇場で鑑賞し直しました。
往年の大スター、長谷川一夫の300本記念映画です。
兎に角、面白い!岩下志麻主演の「五辯の椿」もそうですが、
よく出来た復讐劇ほど面白いものはありません。
「雪之丞変化」は、前に1度、20才の頃に映画館で観たことはありましたが、
こうして大人になってみると、ピッタリと僕のツボに填まることにビックリしました。
それは、良く考えてみると「雪之丞変化」が僕の好みにピッタリなのではなくて、
知らず知らずの内に、僕が多大な影響を「雪之丞変化」から受けていた事実を、
改めて再認識したことに驚いたと言った方が正しいです。

市川 崑のシニカルな視点。皮肉の中にも愛情を感じる温かさ……。
日本古来の、浮世絵から連綿と続く平面の中で構成するデザイン力。
例えば、分かりやすく写真に例えて言えば、
正面切って被写体を切り撮るのが基本中の基本なんですが、
それでは、所謂「日の丸弁当」になってしまいます。

下の写真は比率から言うと、
映画のスタンダード・サイズ(カメラ・フィルムの3:4)で撮った場合。

483A6286 - バージョン 3

それをマスターした上での画面構成……そこに各人の個性が出る訳です。
市川 崑が映画のワイドスクリーン、所謂、スコープサイズで処理するとこんな感じ……。

483A6286 - バージョン 2

因に、今日の1枚目の写真は僕が通常のクセで撮った1枚。
常日頃、無意識の内に「市川 崑ごっこ」をしている訳です。



市川 崑の晩年の傑作は「細雪」ですが、脂が乗り切った頃の「雪之丞変化」、
市川 崑ならではの斬新な画面構成は、決して古くなるどころか、
今のどの作品と比べてみてもモダンで斬新です。
往年の巨匠ヴィスコンティでさえ持て余したシネマスコープの横長の画面(1:2.35)を、
縦横無尽に使いこなすカメラワークは驚きの他ありません。
一部を抜かして全編スタジオ撮影。ほぼ室内か夜の景色の中での撮影は、
左右に大きく余白を取り、俳優の顔や姿だけにスポットライトを当てる、
いわば舞台のピンスポットのようです。特に顔、それも目の辺りにだけ照明を当て、
長谷川一夫がケレン味タップリに、まるで歌舞伎役者のような目の芝居をします。
この作品が撮られた当時(1963年)は勿論CGなどと言うものはありません。
女形と盗賊の2役を演じる長谷川一夫を巧みに一つの画面に納める他、
冒頭の舞台のシーンで降りしきる雪を激しく見せるために、
後からフィルムに雪を描き足すことしかしていません。
真っ暗闇の夜陰に煌めく白刃、岡っ引きの捕りものの縄が右から左に闇を走ります。
兎に角、世界の巨匠たちが持て余した横長のスクリーンの余白をデザインし、
まるで浮世絵の構図さながら、日本画の特徴である平面の構成、
それを完璧に使いこなした市川 崑のセンスは凄いです。


長谷川一夫が女形の雪之丞と、盗賊の闇太郎を怪演。
美貌の盛りは過ぎているものの、ねっとりとした男の魅力は二枚目役者の面目躍如。
山本富士子が女スリ、軽業のお初で好演。
この方は、はんなりしっとりの美貌のご婦人の役よりも、
はすっぱで気っ風のいい小股の切れ上がった女賊の方が性にあっているかも……。
優れた女優は殆どの人が気質が男……そんな一面が出ているのかもしれません。
兎に角、美しい若尾文子!先だってはCMで足がタコになっていましたが(笑)
わざと大きめの鬘をかぶり、華奢でウブな娘を演じます。
将軍の寵愛を一身に受けていると言う設定が納得です。
中村鴈治郎のふてぶてしさと、いかにも「悪」って言う面構えは、
どの作品を見てもお約束ごとの一つになっていて、
中村雁治郎と三島雅夫の喰えない坊主役は、日本映画史に燦然と輝きます。
他に、長谷川一夫300本記念作品と言うことで、
勝新太郎、船越栄二、市川雷蔵など、
そうそうたるスター俳優がゲスト出演です。

改めて自分が多大な影響を受けた作品を観ると、
驚きの他に、まだまだなってない、頑張らなくっちゃ!
……と、一層の精進を誓うのでした。


「雪之丞変化」……★★★★★★★★☆……85点。


2017年6月11日


ブノワ。


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おねぎとピーマンでコングとパッセンジャー。 

2017/04/02 Sun.

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おねぎとピーマン、映画会社の試写室から出て来る……。
おねぎ、興奮冷めやらぬ顔で。ピーマンは顔を赤く上気させて。
2人の会話は間髪置かず、お互いの台詞の最後にチョッとだけ被さるように、
また、立て板に水、油紙に火が点いたように早口で喋ること……。
イメージは舞台役者がツバを飛ばしながら喋るような勢いで……。

P 「チョッとぉ!!!!!!」
O 「な、な、な、なんなのよぉ、ピーマン、コワい顔しちゃってさ。
   まんまキングコングじゃない!がはは!」
P 「ねぇ、おねぎ、お願いだからやめてくれない?」
O 「あら何が?」
P 「アナタ、上映中に絶叫したでしょう!」
O 「がはは!……アレね?だってコワかったんですもの。」
P 「アレね?じゃないわよ、がはは!じゃないわよ。館内に響き渡っていたわよ!
   もう本当に恥ずかしくて、アタシ穴があったら入りたかったわ。」
O 「あら、勝手に入りゃぁいいじゃないの。
   アタシなんて平気よ。皆だってコワくてそれどころじゃなかったハズよ。」
P 「あら、そんなことないと思うわ。皆、こっち振り向いていたもの!」
O 「あら!皆って誰よ、言ってご覧なさい!」
P 「Y川さんにKのおばちゃま、Mの晴郎もこっち見ていたわよ!」
O 「だって、本当にコワかったんですもの……あのクモ!」
P 「あら、アタシはやっぱりトカゲがコワかったわ。」
O 「アナタ、ピーマン、あのトカゲ前脚しきゃないのよ!」
P 「足がない?!アタシ、コワくて指の間からしか見てないからよく分からなかったわ。」
O 「なにカマトトぶってんのよっ!目ぇ見開いて見てたじゃないの!」
P 「あはは!バレたか。アレってさ、やっぱり地獄の底から現われた幽霊トカゲなのよっ!キぇぇぇぇっ!」
O 「アタシたちなんてスグに食べられちゃって一巻の終わりね!」
P 「あら大丈夫よ。アタシたちって見るからに不味そうじゃない?(笑)」
O 「がはは!でもさ、今って何でも描けちゃうのね。」
P 「そうよ、アタシたちの時代ってレイ・ハリーハウゼンのコマ撮りか着ぐるみじゃない?」
O 「凄いわよね。アタシ『ジュラシック・パーク』の時に、
   懐中電灯でティラノサウルスの虹彩が閉じた時はビックラしたもの。」
P 「アタシなんてオシッコちびりそうになったわ。」
O 「あらイヤだ、ピーマン、ちびるだなんてお下品な(笑)」
P 「ねぇ、それよりさ、やっぱりキングコングっていつも人間の味方なのよね?」
O 「そうよ、じゃなきゃお話が成り立たないじゃないの。」
P 「でも、今回のヒロインはブリー・ラーソンだったわね。」
O 「チョッと美女と野獣って訳には行かなかったけど……。」
P 「よく出たわよね、アカデミー賞受賞の後でさ。アナタ、主演女優賞よぉ。」
O 「カメラマンって言うのがいかにもって感じだったけど、
   軽々しく絶叫せずに感じ良かったじゃないの。」
P 「でも、ビックリばかりしてないで、もっと写真撮らなきゃダメよねぇ。
   報道カメラマンなんだから(笑)」
O 「今までの絶叫女優や、この手の冒険映画に付き物の、
   書き割りみたいな魅力もこそも全くないペラペラな女優より良かったわ。」
P 「あら、書き割りみたいな女優って誰よ、言って御覧なさいよ。」
O 「フン!言える訳ないじゃないの。あるのよ、色々と大人の事情が。
   アタシだって一応、映画業界人だし。」
P 「フェイ・レイは古すぎるからジェシカ・ラングかしら……。」
O 「あら、ジェシカはオスカー獲ったじゃないの。」
P 「じゃあ、ナオミ・ワッツ?」
O 「違うわよ!ナオミ・ワッツは結構、演技派よ。
   『レイダース』シリーズのケイト・キャプショーとかアリソン・ドゥーディよっ!」
P 「あはは、結局、名前言っちゃったわね(笑)
   アタシ、アリソン・ドゥーディなんて三流女優知らないわ。
   大体、スピルバーグって女優の趣味悪いから。」
O 「あら、三流ってことは知ってんじゃないの(笑)」
P 「でもさ、ケイト・キャプショーはスピルバーグの奥さんに納まったわよ……。」
O 「凄いわよね、一発逆転満塁ホームランって感じ?(笑)やるわよねぇ。
   アタシも絶叫女優やって誰かの玉の輿に乗ろうかしら?」
P 「フン!アナタは無理。「ギぇぇぇぇ~っ!」って絶叫して御覧なさい。
   キングコングの相手役の怪獣に大抜擢よ、ネギラとかさ……がはは!」
O 「三流って言えばさ、何なの?あの中国の貧相な女優。」
P 「あら、仕方ないのよ。今回、中国の資本が入ったんだもの。」
O 「あら、だからってあんな女優を使うわけ?」
P 「だって、アナタ、今更、コン・リーとかチャン・ツィイーって訳行かないじゃないの。
   ミシェル・ヨーが出てきたらどうすんのよ(苦笑)」
O 「まぁ、確かにね……ワイヤーで空飛ばれても困るか。」
P 「仕方ないのよ、大人の事情よ。だからアタシは大人になりたくないのよ……。」
O 「ブァッカねぇ。アナタとっくに大人を通り越してババアじゃないの!」
P 「オダマリ、おねぎ!アタシがババアならアナタもババアよっ!」

O 「ねぇ、ところでトムはどうだった?」
P 「あのさ、何なのよ、トムって!呼び捨てにしたりして。アナタのお友達なの?」
O 「あら、違うわ。いいじゃないの、そんなことどうでも。」
P 「アタシはトムだったらベレンジャーがいいわ。」
O 「あら、ハンクスもクルーズもいるのに?アタシはトムだったらハーディがいいわ……。」
P 「あっ!トム・ハーディ……遠い目になっゃうわね(笑)
   でもアタシはやっぱりトム・ベレンジャーがいいの。
   観たのよ、若い頃に『三百人劇場』でトムのスタンレーを!」
O 「あら、アタシだって観たわよ!最前列で!『欲望という名の電車』!確かに素敵だったわよね。
   Tシャツ脱いでさ、パウダーを脇の下に掛けるじゃない?
   アタシ、漂って来るパウダーを大きな深呼吸で全部吸ったわ!
   あの時さ、トムって映画化でスタンレーやりたかったんだって。」
P 「あら、アナタって本当に変態ね(苦笑)でも、何でおねぎがそんなこと知ってんのさ。」
O 「だって、トムから直接聞いたんだもの。おほほ!
   でね、その時、映画化権を持っていたのがスタローンだったんだって!」
P 「きぇぇぇぇぇぇぇぇ〜っ!『ブランチ〜ぃ!』じゃなくって、
   『エイドリア〜ンっ!』って叫んでいた方がお似合いよねぇ(苦笑)」
P 「でも、皆、年取ったわね……あのトムもこのトムもそこのトムも。」
O 「仕方ないわよ、アタシたちだって立派なババアなんだから……。」
P 「ところで、これってさ、続編があるじゃない?」
O 「あるある!エンドクレジット見ないで帰っちゃった人には分からない、あはは!」
P 「アレって、アレでしょう?」
O 「そうよ、アレよ(笑)」
OP「東宝はボロ儲けね!(苦笑)

2人は近くのビストロに席を移し、
シャンパンで乾杯した後、今度は2日前にロードショーで観た映画の話しになった。

O 「ところでピーマン、アナタ御覧になった?」
P 「アレでしょ?」
O 「そう、アレ『パッセンジャー』!
   アタシ、好きよ。ラストなんか、まんまアダムとイブじゃない。」
P 「あら、アタシも好き。アタシのクリスが出ているし。」
O 「ホラ、始まった。アナタの所有物って沢山いるのね。アタシはジェニファーが好き。」
P 「あら、アンタだって一緒じゃないの。何がジェニファーよ。
   アタシなんか『マネーボール』の時からクリスに目ぇ付けてたんだから。
   それに、アナタ、最初、ジェニファーを見た時に『あんぱん女優』って言ったじゃない。」
O 「あら、アタシそんなこと言ったかしら?」
P 「言ったわよ!得意技ね。都合が悪いとスグに忘れたフリ。」
O 「いいのよいいのよ、そんなこと。顔が丸くたって大女優は沢山いるわ。」
P 「あら、誰よ。3人以上言って御覧なさい!」
O 「フン!言えるわよ!えっと、えっと……あっ!クローデット・コルベール、
   山口淑子、京マチ子、高峰秀子……山口百恵だって顔丸いわ!」
P 「うぅ~ん、古い!いつの時代よぉ!」
O 「だけどさ、この映画ってほぼ2人しきゃ出ないじゃない?」
P 「そうっ!今、一番売れている証明よね。」
O 「適度に裸も出るし、見た?クリスのお尻!
   ジェニファー・ローレンスなんてファッションショーみたいだったじゃない。」
P 「でもさ、クリス・プラットみたいな男と2人きりで宇宙船で過ごすなんて素敵よねぇ……。」
O 「バカね!クリスがアナタを選ぶ訳ないじゃない!」
P 「そっか、カプセルに布掛けられたりして、がはは!
   でもさ、こう言う時ってアタシたち女のことはどうでもいいのね」
O 「当たり前じゃないの、だって、女は敵ですものぉ!(笑)
   ま、それはいいとして、ラスト、手に汗握らなかった?」
P 「握った!握った!」
O 「結局さ、絵空事なんだけど、たまにはいいわよね。」
P 「うん、たまにはいい。アタシたちに一番欠けているのはファンタジーだから、がはは!」
OP「そうよ、夢も希望もないのよ!アタシたちって、因果だねぇ……。」




年度末の忙しい日々でしたけど、
時間を見付けてはマメマメしく映画館に通っていました。
家でゆっくりしていれば身体も休まるのだけど、明日への活力!
泳いでいないと死んでしまう鰹よろしく映画館の暗闇へ……。


「キングコング髑髏島の巨神」……。
サービス精神満点、見所、満載の娯楽作でした。違う意味での続編も出来ますね。
アレらの素材をどうやって料理するのかハリウッドのお手並み拝見……と、行きますか。

「キングコング 髑髏島の巨神」…………★★★★★…………50点。

僕のジェニファーと大好きなクリス・プラットが共演の「パッセンジャー」……。
ほぼ2人しか出て来ません。あとはドロイドのバーテンダーくらい。
幾ら技師だって宇宙船をあれこれ弄れる訳がないと思いつつ、
そこは映画の御都合主義。存分に楽しませて貰いました。
ジム(クリス・プラット)がオーロラ(ジェニファー・ローレンス)を見詰めて言います。
「君は夢のように美しい!」……本当にそうなんです。
ジェニファー・ローレンス……好きだわぁ(笑)
まさに2人とも今が一番美しい真っ盛りかも。
楽しく最後まで見られたので……。

「パッセンジャー」……★★★★★……50点。


2017年4月1日


ブノワ。


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