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Category: 映画館へ行こう!

音楽映画3連発! 

2019/02/21 Thu.

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音楽を聴かなくなって久しいです。
聴かないって言うと語弊があるけれど、
わざわざCDを買ったり、録音したり、イヤフォンで聴いたり……。
そう言うことをしなくなりました。
なんて言うんでしょう、上手く言えないけれど、
独立して音楽だけに触れることがなくなったって言うのかな。
特に歌詞がウルサく感じるんです。



今日はそんな音楽を聴かない僕の音楽映画3本立てです(笑)


先ずはレディー・ガガの「アリー/スター誕生」から。
レディー・ガガの顔……初めてマジマジと見ました(笑)
それほど、毎回、毎回、ヘアメイクに技巧を凝らし、
カメレオン的に姿を変える女性なのだけれど、
音楽に興味がなくなった=レディー・ガガの楽曲も、
マドンナの「Express Yourself」とレディー・ガガの「Born This Way」が、
似ていると言う例の事件くらいしか知りませんでした。あと、肉のドレスね(笑)

「スター誕生」は過去に4回映画化されていて、
有名なのは、1954年のジュディー・ガーランド版、
それから1976年のバーブラ・ストライサンド版でしょうか。
そして最新作のレディー・ガガとブラッドリー・クーパーの、「アリー/スター誕生」です。
僕はこのタイトルの頭にくっ付いている「アリー」は余分だと思っているのですが、
今をときめくレディー・ガガと、こんなことを書くと怒られそうですが、
意外や意外、物凄い才能の持ち主であるブラッドリー・クーパー版、
何だか久し振りに「ボヘミアン・ラプソディー」以外の映画を観たって言う感じです(笑)
なかなかの力作、アカデミー賞に絡みまくることは予想通りでしたし、
主題歌「Shallow」が主題歌賞を獲るでしょうけれど、
惜しいかな、アリーがスターの座に上り詰め、
大スターだったジャックが次第に落ちぶれて行くように、
映画の高揚感も途中から次第に失速して行きます。
興奮のピークはアリーが初めてステージに立ち「Shallow」を歌うシーン。
その後は次第に熱気が失速しちゃうの……。
その点、バーブラ版は見事でした。
当時の人気のソングライターを結集したオリジナルの楽曲も素晴らしく、
ライブのシーンが非常に巧く出来ていて、
映画のストーリーのピークをラストに持って行くようになっていました。

このバーブラ版の傑作サントラ版には嬉しいオマケがあって、
あまりにも素晴らしい曲が出来すぎたため、
バーブラの次のオリジナルアルバム「Streisand Superman」に、
映画に未使用の曲の殆どを使うほどでした。その次に続く「Song Bird」と「Wet」……。
バーブラ・ストライサンドの一番の充実期じゃないでしょうか。
歌手、メリサ・マンチェスターの3つのBは、
確か……バッハ、ビートルズ、そして、バーブラ・ストライサンドでしたか。
人の声も楽器です。その完璧に調音された歌声を賞賛する人も多いです。
ブラッドリー・クーパー初監督作品……お見事でしたが今ひとつかな。

「アリー・スター誕生」……★★★★★★……60点。



さて、去年の11月に「ボヘミアン・ラプソディー」のことについて書きました。
実はですね、僕、あれから6回鑑賞しました(笑)気に入っちゃったんです。
ところが、上には上がいるもので、絶対音感を持つ気が利かないR子は、
な、な、な、なんと!初日2日から66回鑑賞の大記録を打ち立てました!(爆)
こうなるともう天晴れですね。お見事!偉業、偉業!(爆)
配給会社に連絡して表彰して貰おうかしらん(笑)
絶対にテレビの取材が来るハズ(笑)
公開中、どの劇場でもタダで入れるパスを貰うとかね。
全世界で900億円の配給収入のうち、日本が105億円と言われています。
その内、絶対音感を持つ気の利かないR子が、約12万円近い金額を使っています。
ハァ……本当に脱帽ものです。僕は人を褒めないけれど、今回は褒めちゃう!

この作品、口の悪い僕は「死人に口無し映画」と揶揄します(笑)
だって、主人公をはじめ、多くの関係者が亡くなり、生存の方たちも、
公に出てこない人が殆どで、要は、悪く言ってしまうと、
メンバーのブライアン・メイとロジャー・テイラー2人の、
思惑通り、理想の形の「クイーン」が描かれている訳で、
映画のストーリーと、クイーンの史実の間の違い、
映画的にボロが出ているところ(ここを指摘する人が多い。)
増長な部分もあるけれど、絶対音感を持つ気が利かないR子を、
66回も劇場に足を運ばせる圧倒的な魅力とは?
それは、ラストのライブエイドのシーンに向かっての高揚感、
きわめて映画的な間の取り方とカット割りにあると思うのです。
ラミ・マレックはよく見るとフレディに似ていないし、
ライブの動きもパーフェクトに同じな訳ではないです。
ただ、猿真似に終わらず、必然から体が動くところが凄い。
そして、ライブ・エイドのラストにこの映画の最大のピークを持ってが来る、
物語らせる手腕の巧み……。

 「こんな映画を見るのならライブの映像を見た方がいい。」

そう言う勘違いな発言をしている人もいます。
そうね、そう言う人はこの映画を観ない方がいいです。
これは映画なのです。例えば、ライブの冒頭の「ボヘミアン・ラプソディー」で、
フレディがピアノに座り、鍵盤を数回叩いて音を確かめてから、
歌い始めるまで実際の映像はスグに歌い始めるのに比べ、
映画は何と10秒以上もの間が開きます。
この10秒以上もの間の間に様々なカットが盛り込まれる訳です。
まさしくこれぞ映画と言うべきか、何と言う映画的なマジック!

「ボヘミアン・ラプソディー」……★★★★★★★★……5点上がって80点。



「ボヘミアン・ラプソディー」のお陰で興行的に割を食った、
「アリー/スター誕生」ともう1本、ディズニーの「メリーポピンズ・リターン」。
これねぇ……参りました。全編に渡って低空飛行なの。
僕の(笑)エミリー・ブラントは好演なんですけどね。
彼女って何を演じても気品がある。これは物凄いことだと思うんです。
イギリス女王を演っても、武器を持って汚れた兵士を演っても、
農家の嫁を演っても、そこはかとなく漂う気品が何と言っても魅力です。
演技も的確。「プラダを着た悪魔」の時に、メリル・ストリープが、

 「現在の若手の中で最も優秀。」と言いました。

当たり前なんです。脇がキッチリとしていれば、
主役の自分がもっともっと輝いて見えるんですから。
メリル・ストリープも褒めようと言うものです。

僕は前作の「メリー・ポピンズ」も観ていますが、結構、苦手。
ジュリー・アンドリューズが苦手なことも一因かな。
「サウンド・オブ・ミュージック」は好きなんです。同じジュリーなのに。
前作には素晴らしい歌曲が揃っていましたよね。
世界一長い英単語と言われる「Supercalifragilisticexpialidocious」や、
「Chim Chim Cheree」「A Spoonful of Sugar」……等々。
思わず口ずさみたくなるんですよねぇ……今回はそれがない。
もうね、眠気を押さえるのに必死でした(苦笑)

「メリー・ポピンズ/リターンズ」……★★★☆……35点。



映画には音楽が必要不可欠なんですが、
本当、使い方だと思います。あと、印象に残るメロディー。
昔の映画にはメロディーがありましたからね。

今日の写真は、絶対音感を持つ気が利かないR子に、
敬意と絶賛の気持ちを込めて著者近影(笑)
とよた真帆風なキラークイーンなワタシ。


2019年2月21日


ブノワ。


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「蜘蛛の巣を払う女」からあれこれ……。 

2019/02/02 Sat.

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何事にも頃合い、時期と言うものがあります。
旬って言うのかな?触れるのに適した時期みたいなもの。
遅きに失したり、チョッと間が空いて興がそがれたり……。
例えば「十五少年漂流記」や「ライ麦畑でつかまえて」などは、
いつ読んでもいいのでしょうけど、矢張り、多感な少年時代にこそ読みたい。


先日、観た「蜘蛛の巣を払う女」はまさにそんな感じ。
「蜘蛛の巣を払う女」と聞いて何かを思い出す人は少ないです。
そう、一世風靡した「ドラゴン・タトゥーの女」の続編なんですよねぇ。
続編と言っても、「ドラゴン・タトゥーの女」の次の2作目、3作目が端折られ、
スティーグ・ラーソン亡き後にデヴィッド・ラーゲルクランツが書いた、
4作目の「蜘蛛の巣を払う女」が原作です。もう8年も経っている……。
「風と共に去りぬ」のマーガレット・ミッチェル亡き後に、
アレクサンドラ・リプリーが書いた「スカーレット」みたいなもの?
僕は面白く観ましたけど、他の人はどうでしょう?
ストーリーは1作1作独立していますが、
大きく真ん中がすっぽ抜けている感じは否めません。
スタッフ&キャストもガラリと一変。
主人公のリスベット・サランデルがルーニー・マーラからクレア・フォイへ。
主役だったミカエル・ブルグム二ストがダニエル・クレイグから、
スエーデンのスベリル・グドナソンへ……助演扱いになりました。

全編に渡って小粒。1作目の壮大なミステリーは感じられません。
オープニングの艶っぽくてゴージャスなタイトルも素敵だったし、
クリストファー・プラマーの怪演の凄さを今更にして感じます……。
ダニエル・クレイグが出演をもたもたグズグズしている間に、
ルーニー・マーラがやきもきイライラしている間に、
作品の鮮度も興味もスッカリと落ち、普通の娯楽作品になってしまった感あり。
それでも最後まで観られたのは、稀代の天才ハッカー、
リスベット・サランデルの魅力でしょうか。


ミカエルを演じたスベリル・グドナソン……。
9月の北海道を訪れた際、台風の影響で道路が寸断されました。
どこにも行けないので、検索して向かったのは札幌のシネコン(苦笑)
そこで観たのはスベリル・グドナソンがビヨン・ボルグを演じた、
「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でした。
この手の実在の人物を描いた作品で、真っ先に話題になるのが、
先ず、どれだけ本人に似ているかって言うこと。
その点、スベリル・グドナソンのボルグはまるで本人かと見まごうほど瓜二つ。
冷静沈着、どんな時にも己を忘れないボルグを好演。
悪道と呼ばれたマッケンローをシャイア・ラブーフが。
死闘と言われたウィンブルドンの決勝戦に焦点を当てつつ、
実はボルブも少年時代は短気で切れやすい性格だったことを織り交ぜ、
緊迫感ある試合進行を映画の鼓動に変え、
ラストの2人の和解と理解のところまでグイグイ持って行くところはさすが。


実は、僕の少年時代のヒーローだったんです……ビヨルン・ボルグ。
勿論、テニスこそやらなかったものの、ポスターも集めましたし、
物事に向かう姿勢みたいなものを彼から学びました。

曰く、弱音は吐かない、言い訳はしない、冷静沈着に……。
どんな時にもコツコツと勝利に向かって行く姿には感動すら覚えます。
男は黙って……サッポロビールじゃないからね(笑)
苦しい時にも一つ一つこなせば必ず光は見える……。
その彼の姿を見て育ちましたから、今時のスポーツ選手には大いに疑問を持ちます。
負けるといい訳、風邪を引いていた、腰の調子が……。
試合前にチョッと保険でいい訳している選手も……語り過ぎだよ。
皆、一緒ですから!どこも調子が悪くないスポーツ選手なんていません。
とっくに引退ですけど、いましたよね、いい訳ばかりのフィギュアの女子選手とか。
そうそう、悲壮感漂わせる人も苦手だな。松葉杖の人とか。
試合中に大声を出す選手も苦手。自分が対戦相手だったら頭おかしくなっちゃう。
いますよね、テニスの野獣みたいな声を出す姉妹とか、
モデル並みの美しさと言われているけど、デシベルで計られちゃった人とか(苦笑)
卓球の雄叫び少年も大嫌い。あれは本当にどうにかならないものか?
子供の時はまだ我慢出来たけど、随分と育ちましたからねぇ。
雄叫びも凄いことになって来ている(苦笑)

去年の高校野球を見ていて、その才能に一目惚れ……。
これは凄い選手が出て来たものだと感心しきりでしたが、
例の侍ポーズを見た途端にどん引きのドラフト1位とか(笑)
何万人の視線が自分1人に集まっている時に、
あのポーズを出来ると言う強心臓、毛がボーボーに違いないです。
スタンドプレー的な仕草は好きではありません。
派手なガッツポーズとかね。僕だったら恥ずかしくて出来ないし。
50歳を超えて未だに頑張っているプロサッカー選手の、
ゴールを決めた時のあの股間を押さえるダンスとか(苦笑)


僕の敬愛する山口百恵みたいに、引退後は第一線を退き、
普通の生活に戻る人や後進の指導に当たる人……好きなんです。
皆さん、スグに芸能界に入りますよね?そう、テレビに出たいの(苦笑)
先日、引退した女子レスリング選手もそう言っていました。
もうね、テレビに出たくて出たくてしょうがない。
でもね、今のうちだけですって。マスコミはスグに手の平返ししますから。
マラソンのQちゃんなんて可哀想でしたよね。
散々、持ち上げられてから盛大なバッシング……。
僕ね、そのテレビに出たい女子レスリングの人、苦手なんです。
選手としては史上最高峰です。空前絶後の実力の持ち主です。
もう2度とあのような人は出てこないと思う、認めちゃう。
やたらとチャラチャラ、テレビに出まくって、所謂、女子力を強調する姿がダメ。
あの健康ドリンクのCM苦手だわぁ……全身の毛が総立ちします(笑)
どうにもこうにも受け付けなくてスグにチャンネルを変えちゃいます。
引退発表の時なんか驚いちゃいました……まだ引退してなかったんだ!(苦笑)
あれだけCMやテレビに出まくっていたら選手生活は無理でしょう(苦笑)

引退と言えば、大相撲ね……。
やっぱり引退しました。もう無理ですよね。元々、実力が伴わない。
外人力士の横綱ばかりで、どうしても日本人力士の横綱が欲しい……。
その気持ちが作り上げた横綱だったのでしょう。
成績的には満たしていたのでしょうけど、
どうにも弱い……横綱たるもの憎らしいくらいに強くなきゃ。
日本人の願い、気持ちが作った横綱です。
満足な成績も出せず、周りの期待に圧し潰されそうになりながら、
随分と長い年月怪我と戦って来ましたが、ついに引退。
これからは素晴らしい後進を育てて欲しいものです。
だけど横綱っていいですよね……。
負けが込んで来ると怪我を口実に休場。
退路がない、厳しい立場、品格?……色々と言われているけれど、
旗色が悪くなったら休んじゃえばいいんだもの。
こんなに楽な立場ってないですよ……チョッと言い過ぎかな。
ボロボロになっても千秋楽まで戦って負け越した姿を見たら、
周りの人はどう思うでしょう?胸を打つと思うけどなぁ……。

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今年からブログの書き方をチョッと変えました。
通常なら映画1本で1つの記事ですが、
そうするとなかなか書けない作品がある……。
発想を飛ばして幾つか纏めることにしました。
そう「プレバト」の俳句査定で夏井いつき先生が仰言る「発想を飛ばす」。
これだったら幾つもの話題を纏めて書くことが出来ます。
そう、発想を飛ばすって言うよりも尻取りみたいな感じかな?
じゃんじゃん書くよ、毒舌になるけどね(笑)


「蜘蛛の巣を払う女」……★★★★☆……45点

「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」……★★★★★★……60点


2019年2月2日


ブノワ。


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ゴッズ・オウン・カントリー。 

2018/12/24 Mon.

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 「何でオレだけ……。」

いつもジョン・サグスビーは思う……。
幼なじみたちは街に出て大学に通い、
そこはかとなく都会の匂いをまとって折々に帰郷する。

 「アンタ、昔は面白かったのに……。」

 「現実を知るまではな……。」

笑える、笑うしかない。
美容師に憧れていた母親は小さい時に家を出、
父親は病に倒れて体が不自由と来ている。
牧場の仕事はオレ1人で、家事はバアちゃんが見ている。

 「牛舎の掃除は?
  寝る前に羊を見て来い。
  放牧地の石垣を早く直せ。」

オレの顔を見ると父親の指示が矢継ぎ早に飛んで来る……クソ喰らえだ。
連日のようにパブで泥酔。性の捌け口になるゲイの男は幾らでもいる。
家のベッドで?とんでもない。
牛を運ぶトレーラーの中やパブのトイレで立ったままで十分。

 「ビールでもどう?僕たち気が……。」

今しがたトレーラーの中で遊んでやった若い男が声をかけてくる。

 「僕たち?」

まっぴらゴメンだ。そんな気はさらさらないぜ。
若い男を後ろから押さえつけるジョンの無骨な手……。

本当にイヤになる、頭に来る……かと言って、
母親のように家を出る勇気も行動力もない……。
どツボじゃないか……この閉塞感タップリな状況はイヤになるけれど、
では、ジョン・サグスビーは何をやりたい?その夢も曖昧だ。
第一、体が不自由な父親と年老いたバアちゃんを置いて出て行くなんて……。
ジョン・サグスビーは優しい。本当は優しい青年なのだ。

羊の出産期を控えて父親が人を雇った。
冗談じゃない、オレ1人で出来るのに……。
駅まで迎えに行くと、ルーマニアから来た髭の青年ゲオルゲがいた。
ジプシー?マジ?勘弁してくれ……ゲオルゲの事情も理解しようとしないでそう思う。
憤る矢先から深酒で、父親との大事な朝の約束をスッポカす。
それを半ば軽蔑の目で見るゲオルゲ、ここにもバカ息子が1人がいた……。
朝から晩まで2人で顔を突き合わせる牧場生活が始まる。
ジョンは次第にゲオルゲの酪農に対する知識と働きぶりに目を見張るようになる。
言われなくてもテキパキと仕事をこなす姿……特に衝撃だったのは、
生まれたものの死にかけていた子羊を蘇生させるのを見たときはショックだった。
足をつかんで振り子のように体を揺らし頭に血を送ったのだ。

 「勝手にしろ!」
 
そんな感動の場面、自分にはゲオルゲにかける言葉すら持ち合わせていない……。
その子羊にミルクを与え育て可愛がるゲオルゲの柔らかい女性のような手。
もっと驚いたのは、死産だった子羊の皮を剥ぎ、可愛がっていた子羊に着せ、
子供を亡くしたばかりの母羊の元へやり匂いを嗅がせ、
再び人間の世界から羊の世界に戻してやるやり方は驚く他はなかった。
乳を吸う子羊の嬉しそうに振られる尻尾……。
良かった……初めてゲオルゲに笑顔を向けるジョン。
ゲオルゲは生かすことを本能で知っているのだ。

だけど、雇い主はオレ。仕事のことでは優位に立っていたい。
ついついゲオルゲが嫌う「ジプシー」という言葉が口をついて出てしまう。
背後からタックルされ、押し倒されて、
次は容赦しないと警告を受けた時のゲオルゲの体の重さ、
まるで口づけを交わさんばかりに近い唇の距離、
ジョージは初めて男としてゲオルゲを意識するようになる……。


一方、豊かに生きる術を知っているゲオルゲ……。
テーブルを整え水仙を飾り、料理をしパスタの塩味を調整する。
それも自分の皿を先にせずに、先ずジョンの皿のパスタの味を整えてやる。
天井の裸電球を外し、ランプに付け替えて、
ジョンが「クソ溜め」と呼ぶトレーラーを優しい光で一変させる。
パブやトレーラーで男を引っ掛けて、
一方的に相手を羽交い締めにして性処理をしていたジョンに、
本当のキス、言葉で言わなくても「愛している」と伝えることが出来る、
心がこもった本当のキスを教えたのもゲオルゲだ。
上位に立っていたジョンは瞬く間にゲオルゲに信頼を寄せ、
本来の優しさを自然に表に出せるようになって行く……。

ジョンの変化は頑な父親とバアちゃんにも伝播する。
父親の目もバアちゃんの目も節穴じゃない。
父親は放牧地から帰って来たゲオルゲが小さくジョンにウィンクをするのを見たし、
バアちゃんは酸いも甘いも噛み分けた人だ。孫のことは何でも知っている。
2人の関係はスグに分かったし、決定的な証拠も発見!
バアちゃん、そんなものトイレに流しちゃダメなんじゃない?
チョッと突っ込みたくもなったけれど、
ジョンが愛情を知ることによって起きた小さな変化、
投げられた小さな石はやがて大きな波紋になって周囲の人間を変えて行く。
父親が入浴時に「ありがとう」と言う言葉の重さ……。

紆余曲折の末、やがて2人は一緒に歩む決心をする。
男手2人の労力、やがて羊の乳でチーズも作り売り上げも出るかもしれない。
でも、果たしてハッピーエンドと喜んでいいのだろうか?
片田舎でのパブでの外国人ゲオルゲに対する冷たい対応や、
牧場の経営を見ても、2人の行く末は前途多難、波乱含み……。
それでも手放しで喜び、応援したくなるのは、
ゲオルゲという触媒によってみるみる変わって行くジョンに、
何やら心温まるものを、そして未来を感じるから。

 「変わりたいんだ……。」

ゲオルゲにそう言うジョンは、もう既に以前のジョンではない。
その顔は自信に満ちて穏やか、愛の何たるかを知った青年の顔だ。

この映画には「愛している」という台詞は出て来ない。
それがなくても十分に登場人物たちの気持ちは伝わるし、
最低限の台詞で物語る、非常に映画らしい映画と感動しきり。
もう一つ、「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー監督……。
何と言うストリーテリングの巧さ……改めてそう思います。


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いつも記事を楽しみにしている関西在住の真紅さん。
真紅さんのお陰で素晴らしい作品に出会うことが出来ました。
ボォーっと近所のシネマコンプレックスにばかり通っていたら、
そして、真紅さんのブログを読んでいなかったら、
この「ゴッズ・オウン・カントリー」のことは知らずにいたでしょう。
大阪と東京で開催された「のむコレ」において、隠れた商品や佳作の上映がありました。
「ゴッズ・オウン・カントリー」……大阪1回、東京4回だけの上映です。
2日前からのインターネットのチケット販売……パソコンの前に座って時を待ちます。
午前0時……ヨォ〜イどん!でアクセスしましたが全く繋がらず(苦笑)
15分経ってようやく手にしたプラチナチケットです。
即完売、当日は立ち見も出ての大盛況でした。
僕は一番前の端っこと立ち見で鑑賞……。
「ゴッズ・オウン・カントリー」は日本最終上映だそうです。
見る機会を作って下さった真紅さんに感謝、感謝です!

来年の2月から一般公開が決まったそうです。
是非、皆さんもこの感動を劇場で!



今日の写真、僕はブログに自分の写真を使うことを課していますが、
外国映画って困るんですよねぇ……手持ちになかなかいい写真がない(苦笑)
今日の写真は熊本で撮った一枚。阿蘇山の近くだったかな?


「ゴッズ・オウン・カントリー」……★★★★★★★★☆……85点


2018年12月24日


ブノワ。


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圧巻……「ボヘミアン・ラプソディー」。 

2018/11/16 Fri.

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親友で悪友の気が利かないR子は絶対音感を持っている。
僕は、かれこれもう10年以上もカラオケに行っていないけれど、
気が利かない絶対音感を持つR子と一緒に行くと、
気が利かない絶対音感を持つR子は、
先ず一番最初に「クイーン」の「ボヘミアン・ラプソディー」を歌う(苦笑)
この難曲を……なんと大胆な!しかも喉が開いていない1曲目に!(苦笑)
イタズラが大好きな僕は、気が利かない絶対音感を持つR子が、
気分を出して「Is this the real life ? Is this just fantasy ?……。」と、歌いだすと、
気が利かない絶対音感を持つR子の後ろで、
コントローラーを持って、音程を上下させるのだけれど、
気が利かない絶対音感を持つR子は全くお構いなしに、
伴奏なんかまるで耳に入らないかのように、
元々、伴奏も聞かないから歌が下手なのかもしれないけれど(笑)
嵐の大海原のように上下する伴奏を物ともせず、
陶酔しきって、一つの音程も外さずに、
音痴丸出しで歌い続けるのだった……。
絶対音感で音痴って?(爆)


その、気が利かない絶対音感を持つR子が泣いた。
映画「ボヘミアン・ラプソディー」を観て泣いた……。
気が利かない絶対音感を持つR子は自他ともに認める「クイーン」ファン。
僕も大好きなバンドなので、公開を待って劇場に駆けつけたという訳。
やはり、音楽&サウンドも主役の映画です。
TOHOシネマズの大きいスクリーンで、
恋人が手を繋げないプレミアムシートにて鑑賞です(笑)


圧巻でした。
冒頭の「20世紀フォックス」のファンファーレの途中から、
ブライアン・メイ風のギターの音に変わります。
僕はここから一気に映画に引き込まれちゃいました。
「クイーン」においてブライアン・メイのギターがどれほど重要か、
再認識させられる瞬間です。

映画は実在の人物を主人公にした映画にありがちな、
ソックリさん芝居に埋もれることなく、稀代のボーカリスト、
フレディ・マーキュリーの半生をラミ・マレックが熱演。
確か、4年くらい前にも記事を書きました。
見かけは完全なコピーではなく50パーセントくらいで、残りは役者の技量……と。
全く似ていないのは問題外だけれどね。
「クイーン」のオリジナルメンバーのブライアン・メイと、
ロジャー・テーラーの全面的なサポートもあるけれど、
フレディ・マーキュリーの全てを自分の中に取り込み、
租借して新たにラミ・マレックなりのフレディ像を構築。
衣装、メイク……さらに、元々、顔が似ているとは言え、
どうにもならない容姿の部分はカメラアングルが助けます。
当時の映像を見ると、鼻から下が長いフレディを撮る時は、
カメラは上から顔を捉えることが多かったのに対し、
ラミ・マレック演じるフレディを撮る時は、
下からのカメラアングルを多用しています。
当時を再現する映像的マジックも助けになるのだけれど、
圧巻のラスト、バンド・エイドのコンサートの再現シーン。
最も素晴らしいパフォーマンスにも選ばれたステージの熱気を、
余すところなく再現した映像には息を飲みます。
鳥肌が立つくらいの感動とはこのこと。
映像と観客が一体となる瞬間。理屈抜きで身を委ねる快感。
拳を高く突き上げ、軽やかなステップを踏み、視線を流し……。
そこにはフレディ・マーキュリーが立っていました。

それから、この手の映画にありがちな手法、
死の床のフレディが回想するみたいな陳腐な構成を取らず、
「クイーン」の成り立ちから絶頂の時代でスパッと終わるところも趣味がいいです。
フレディがなぜエイズに罹ったかあれでは分からないという人もいるけれど、
一体どこを見ているんだか(苦笑)映画とは、全てを見せられなくとも、
自分で想像力を働かせるのだよ。十分に描かれています。

 「Any way the wind blows doesn't really matter to me.」

傑作「風と共に去りぬ」の、
「After all... tomorrow is another day.」と同じですね。
厳しい人生における処世術みたいなもの。
この映画のテーマと「ボヘミアン・ラプソディー」の歌詞がリンクします。


気が利かない絶対音感を持つR子は翌日も劇場に足を運びました……そして涙。
またその翌日も、翌日も、気が利かない絶対音感を持つR子は劇場へ……。
な、な、な、何と!今のところ6日連続で劇場に足を運んでいるとか(苦笑)
ファンとは厳しいものです。どれだけ良く出来ていても点数は辛い。
その大ファンの気が利かない絶対音感を持つR子を6日も連続で劇場に足を運ばせ、
また涙させる……その事実がこの作品の全てを物語っています。
「ローズ」「スター誕生」(バーブラ・ストライサンド版)など、
優れた音楽映画は数沢山ありますが、
また一つ、音楽映画の金字塔が生まれました。


写真は6月のイギリス旅行で入った地元のパブ。
「Queen's Head」の外観です。


「ボヘミアン・ラプソディー」……★★★★★★★☆……75点。


2018年11月16日


ブノワ。


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「イコロの森」にて「FIVE SEASONS : The Gardens of Piet Oudolf」。 

2018/10/21 Sun.

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既に懐かしい感じもする6月の旅……。
イギリスとフランスに行って来たのが遥か昔のようです。
天候に恵まれ、素晴らしいガーデンを巡り、
ズッコケながら、僕らの前に立ちはだかる、
タイタニックの目の前に突如現れた、
巨大な氷山のようなゴタゴタ、詰めの甘さから来るトラブルも、
今となってはいい想い出になって来ました……(笑)

その旅のフィナーレを飾る素晴らしい庭……。
エイドリアンさんとクレアさんが丹精こめる庭……。
眩しい午後の光、そよぐ風、耳に優しい羽虫の音……。
今、思い出してもその素晴らしさには溜め息が出ますが、
一通り庭を案内して戴き、お茶を楽しみながら、
エイドリアンさんがわざわざ家の中に取りに行ってくださり、
僕らに見せてくださった本、仕事をリタイアした後、
庭作りにおいて、如何に自分が影響を受けたかを、
熱く語ってくれた本があります……。
マイケル・キングとピート・アウドルフ共著、
序文はベス・チャトによる「Gardening with GRASSES」です。

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写真を撮らせて貰いましたが、
何度も何度も繰り返しページを捲られたその本は、
エイドリアンさんのガーデニングにおけるバイブルです。

 (1)花が終わっても美しいこと。
 (2)自立していること。
 (3)タフであること。

これは僕がエイドリアンさんの言葉を聞いて訳したのですが、
要は、花殻を切らない、支柱を立てない、潅水をしない……と言うことですかね。

いまだに日本では薔薇が中心の庭が多いように思います。
矢張り、花と言えば薔薇、花の女王は薔薇です。
そこにクレマチスが共演し、冬の花が少ない季節はクリスマスローズ……。
それが最近は少し皆さんの意識が変わって来たように思えるのです。
薔薇だけが何も特別なのではない。薔薇もガーデンを彩る他の植物と一緒……。

僕の気持ちの変化の切っ掛けとなったのは、初めて訪れた「イコロの森」です。
勿論、「イコロの森」にも工藤敏博さん監修の素晴らしいローズ・ガーデンがあります。
北の大地の栽培に即した薔薇が華やかに絢を競います。
そしてローズガーデンとホワイトガーデンをグルリと囲む静寂の土地。
初めて「イコロの森」を訪れた時のことは今でも忘れられません。
傾く太陽に透けるグラスや、樹々のざわめき、頬をくすぐる北の風……。
居住まいを正すと言うのはこのことでしょうか。
その思いは何度訪れても変わりません。
ある意味、僕のそれまでの植物に関する考え方を変えてしまった「イコロの森」。
植物だけではないかもしれません。もしかしたら物の見方も変わったかも。

春先の芽吹きから秋の実り。そして枯れているように見えて、
その実、終わることなく次の春へと命をつなぐ植物のけなげな姿……。
その美しいことときたら!人工的な美しさは足元にも及びません。
主役は等しく全ての植物……。
その美しさを最大限に見せてくれる「イコロの森」……。


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「FIVE SEASONS : The Gardens of Piet Oudolf」……。
「おとなのあきじかん」で上映されると聞いてからとても楽しみにしていました。
今回の日帰り旅行の一番の目的はこの作品を見ることでした。
映画はピート・アウドルフさんの手がけたガーデンを見せながら、
その美しいガーデンが出来るまでの過程や、
植栽の秘密など、植物好きには堪らない仕上がりになっていました。
秋からまたその次の秋へ……5つの季節、言葉にかえられない植物の美しさ。
蜘蛛の巣もそのままなんですね……朝露に彩られ、
太陽光線で光り輝く蜘蛛の巣の何と美しいことよ……。
僕も6月の旅にて「Hauser & Wirth Somerset」を見学し、
親友はわざわざニューヨークに趣いて「ハイライン」を見に行って来ました。
日本のガーデンではなかなか再現は難しいことと思いますが、
ピート・アウドルフさんの信望者も多いと聞きます。


もう1つ、とても良かったのは日本語の字幕。
過不足なく、程よい文字量に加え、翻訳者、田辺沙知さんの、
植物に関する知識も完璧に織り込まれ、
読みやすく、植物にはあまり詳しくない人にも親切な字幕になっていました。

映画字幕には文字制限と言うものがあります。
一般に人間が1秒間に読める文字の数は4文字とされています。
映画字幕はそれを踏まえ、台詞の本来の意味を守りながら、
超訳、意訳も取り混ぜながら映画の内容を観客に伝える重要な仕事です。
字幕ばかり目で追っていて、肝心の画面に物語に、
目が行かなくては本末転倒ですからね。
完全に全ての台詞を字幕にするのは不可能です。例えば、

 「What were you doing yesterday night?」

は、極端に訳すと「何してたの?」でいい訳です。

それは、観客の耳に残る最後の「yesterday night?」が、
字幕に書かれていなくても、観客の耳から脳裏に残り、
字幕と一体化して文章を補うからです。
田辺さん、初めての映画の翻訳?チョッと驚きかもしれません。


「FIVE SEASONS : The Gardens of Piet Oudolf」は、
来年の1月に横浜でも上映されるそうですね。
何人かの親しい友人にも打診されていますし、
僕も時間を作ってもう一回、観に行こうかな?もしかしたら字幕が変わるかもです。
その辺も踏まえて、再び素晴らしい作品に触れてみたいです。


今日の写真は会場の入り口を飾る秋の草花。
スタッフの皆さんによるこう言う趣向もまた嬉しいです。
「イコロの森」での上映に尽力してくださった皆さん、
本当にありがとうございました。飛行機飛ばして良かったです(笑)


2018年10月21日


ブノワ。


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「おくれ咲き」……芸術とは切り捨てる作業。 

2018/10/09 Tue.

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仕事の合間を縫って深谷まで映画を観に行って来ました。
合間を縫ってと言うより、仕事を1つ片付けて、
家に帰って荷物を放り投げ、着替えをしてから深谷へと……。
チョッとした小旅行ですかね。深谷では親友Tと待ち合わせ。


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わざわざ深谷まで映画を観に行った理由は、
いつも僕を可愛がってくださっている結城美栄子さんが、
今年の初め頃に「今度、映画に出るのよ……。」と仰有っていたのを聞きました。
しかも、結婚詐欺で出所したばかりの女を演じるって!(笑)
東京での上映がないとのことなので、そそくさと深谷詣で、
深谷シネマに馳せ参じたという訳です。
深谷シネマは造り酒屋、七つ梅酒像を改装したミニシアターです。

地元にこんな映画館があるなんて素敵ですよね。


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映画のタイトルは「おくれ咲き」……。
埼玉県の寄居町を拠点に活動している「Chocolate Box」が、
地元の活性化、町おこしの意味も含めて撮った作品です。
林家たい平演じる主人公は職業安定所でもなかなか扱って貰えない、
訳ありだったり高齢だったりする人々に職業を斡旋しています。
そこに集う超個性的な面々。そんな人々とのやり取りや、
自身の結婚問題を織り交ぜながら物語は進むのですが、
何とも勿体ないのは、あくまでも地域おこしの域を出ていないこと……。

映画の「地産地消」を目指しているそうです。
僕の中ではこれは多いに疑問でした。
地域に留まっちゃ困るじゃないですか……。
地域の活性化と言うのなら、地産地消に留まらず、
もっと大きなものを目指して行かなければ……それが映画です。
いい例が大ヒットした「カメラを止めるな!」もあることだし、
ことと次第によっては大きく化けることもあります。
映画製作の際に自治体をはじめ、数々の協力やボランティアがあったことと思います。
事実、結構、豪華なパンフレットの半分以上が、それらの掲載に割かれています。
ケンミン・パワー、ケンミン・キャスト、サポーター……。
全員の名前が列挙されています。
撮影に協力して戴いた方々、場所……それらがタップリ出て来ます。
でも、それでいいの?協力は有り難いけど、
作家たるもの必要じゃないものはバッサリ切らなきゃ。
バッサリ切る意志と思い切りがなくっちゃダメなんだと思います。
厳しいけれど書かせて貰うと、体育館でお囃子やフラダンスのシーンが、
延々と撮られていますが、果たしてこれらのシーンは本当に必要だったでしょうか?

 「アタシ、あのシーンに出た!」

 「お隣の◯◯さんが最後に出ているのよ!」

場内はそんな会話がチラホラ……。
皆さん、映画に映ることを条件に協力した訳じゃないですよね?
制作側もボランティアや協賛はその意味を考えないと……。
彼らに遠慮し、忖度してどうなると言うのです。
このボランティアに関してはそのうち記事にします。



林家たい平、熊谷真美、結城美栄子、横田栄司……。
他にも有名ではないけれど、非常に味のある役者が揃います。
普通なら彼らで立派な舞台が1本出来るじゃないですか。
それらの不要なシーンを切り捨て、各々のパートを掘り下げれば?
もっと深みのある作品になったのではないでしょうか。


林家たい平、今日の1枚目の写真の晴れやかな笑顔。
この美点を十二分に生かした役作りの方が良かったのでは?
笑顔を封印され本領発揮とはなかなか行かなかったようです。
ただ、自分の恋愛はからきしダメだけれど、
困っている人に尽力する姿は胸を打つものがありました。
熊谷真美は結婚問題に悩む主婦をしっとりと好演。
舞台で見せる明るく闊達な部分とはまた違った魅力の新しい境地。
盆栽職人を演じる横田栄司はまったく危なげのない演技で、
盆栽以外はまったくぶきっちょな男を静かに演じていました。
アカサギと呼ばれる結婚詐欺の女を演じた結城美栄子。
彼女の明るさとユーモアと気品がこの作品に一種のリズムを与えます。

勿体ないです、本当に勿体ない。
諸々のしがらみに捕われず、この主題で深く掘り下げた映画を撮っていたのなら……。
あくまでも地元のPR、自己満足の域を出ない映画でした。


「おくれ咲き」……★★★……30点。


2018年10月9日


ブノワ。


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僕のトムは……。 

2018/10/02 Tue.

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 「トムはね……スタンレーをやりたかったのよ……。」

この台詞……舞台女優、ジャニ・ブレンが僕にそっと教えてくれた秘密。
今日はどこにも書かれていないトム・ベレンジャーのことなどを……。
ホラ、今の世の中、どこを見回してもコピペばかりでしょう?
今日は僕が体験した懐かしいエピソードをチョッと披露です。


先日「午前10時の映画祭」で「プラトーン」を再見しました。
ロードショーの時以来、2回目になります。
僕は普段から「映画は女優で見るもの」と豪語していますが(笑)
唯一、好きな男優と言えばトム・ベレンジャーなんです。
今や、トムと言えば真紅さんのトム・ハーディか(笑)
新進気鋭のスパイダーマン、これまた真紅さんのトム・ホランド。
「IMDb」で「Tom」で検索すると面白いですよ。
今の「Tom」の役者としての序列が分かりますから(笑)
トム・クルーズやトム・ハンクスも未だに一線で頑張っていますけど……。
僕の中ではトムと言えばはトム・ベレンジャーなんです。

ダイアン・キートンの「ミスターグッドバーを探して」や、
今では珍しくなくなって来た、ヒット作の前日慓のはしり、
「新・明日に向かって撃て!」や「再会の時」など。
内容がチョッと過激だったので、所謂、ピンク映画を上映する劇場での公開だった、
「ブルーエクスタシー・官能の夜」。何じゃ、このタイトル!(苦笑)
ブルーエクスタシーって一体なに?(笑)誤解を招くとイケナイので……。
この作品の字幕は、かの高瀬鎮夫さんが訳しました。
高瀬さんと言えば格調高い翻訳で有名で、当時、字幕の翻訳のトップの方です。
この作品がキチンと評価されていた証拠ですね。
所謂、スタースターした派手さはないけれど、
僕は一時期のハリウッドで活躍したトム・ベレンジャーが好きでした。

さて「プラトーン」ですが、順当に行けば、
悪役面のウィレム・デフォーが冷血なバーンズで、
正義感溢れるエイリアスにトム・ベレンジャーなのでしょうけど……。
ヴィクター・フレミング監督の「ジキル博士とハイド氏」の時に、
バーグマンは初めに配役されたお嬢さま役が気に入らず、
イメージの固定を嫌って娼婦役を切に希望しました。
結局、順当なら娼婦役のラナ・ターナーがお嬢さま役に。
「プラトーン」でも、トム・ベレンジャーが冷血なバーンズを、
ウィレム・デフォーがエイリアスやることに……。
意外性を求めた配役の妙。その辺が意外にピッタリとハマり、
トム・ベレンジャーの役者としての1つの頂点になったのだと思います。



 「トムはね……スタンレーをやりたかったのよ……。」

テネシー・ウィリアムズ畢竟の傑作「欲望という名の電車」で、
主人公ブランチ・デュボアの妹、ステラを演った、
ジャニ・ブレンが僕に耳打ちしました。
時は今を遡ること約40年前の1981年6月7日、
東京は白山、今は閉館になって久しい三百人劇場でのこと。
ミルウォーキー・レパートリー・シアターが、
新進気鋭のハリウッドスター、トム・ベレンジャーをスタンレーに迎え、
東京で「欲望という名の電車」の公演を打った時のことでした。
何で見たんだろう……確か「ぴあ」だったのかな?
今となってはどのようにしてその情報を得たのか覚えていないんですが、
トム・ベレンジャーのファンの僕は、都合2回にわたって公演を見に行ったんです。
2回目の時、開場を待っていると、チョッと離れたところにタクシーが停まり、
中からトム・ベレンジャーが下りて来るではありませんか!
皆さん、遠巻きにしています。勿論、すかさず歩み寄って話しかける僕。
この辺の度胸と言うか図々しさと言うか、この頃からなんですね(笑)
舞台では大きく見えるけど、僕とさして変わらぬ身長、
済んだブルーグリーンの瞳……静かな物腰で感じが良かったです。
今日は劇場入りが遅れたから、もし良かったら、
終演後にここで待っていてくれないか?
ハイハイ、勿論、待ちますとも!(笑)

ジャニ・ブレンが教えてくれたところによると、
当時「欲望という名の電車」の映画化の権利を、
シルベスター・スタローンが持っていたそうなんです。
スタローン……スタンレーをヤル気満々ですね。
スタンレーは、マーロン・ブランド以来、
所謂、肉体派の男優がやると言うお約束が出来上がっていたから。
「エイドリア〜ン!」じゃなくって「ステラぁ〜っ!」って叫びたかったのね(苦笑)
「欲望という名の電車」は、蜷川幸雄演出の帝国劇場版では、
日本が舞台になり、ポーランド人のスタンレーが在日韓国人に。
浅丘ルリ子と隆 大介の熱演もありましたが、何とも珍奇な仕上がり(苦笑)
スタローンはポーランド系をイタリア系に翻案したかったんでしょうね。
この時、まだ存命だったテネシー・ウィリアムズが、
実はブランチを演じて貰いたいと切に願ったのがメリル・ストリープ。
凄っごく分かる気がする……演技力、容姿、年齢的にもドンピシャですもんね。
結局、映画化は難航して実現せずに、1984年にアン=マーグレットと、
トリート・ウィリアムズのテレビ版に移行しちゃいました。
もしもこの時に、テネシー・ウィリアムズとトム・ベレンジャーの夢が実現していたら、
メリル・ストリープとトム・ベレンジャーのバージョンが出来ていたかもしれません。
皆さん「プラダを着た悪魔」をご覧になりました?
僕はまだこの頃の美しいメリル・ストリープなら、
ぎりぎりでブランチを出来ると思ったんですけど……。
もうチョッと無理かな?今ならケイト・ブランシェットでしょうか。
本国オーストラリアの舞台も踏んでいるみたいですし……。
でも「ブルージャスミン」でブランチもどきやっちゃったし。

電車で新宿に移動する途中で、カンパニーの皆さんと一緒に移動。
ジャニ・ブレンにベジタリアンを日本語で何と言うのか教えてあげたり、
他愛のない会話をしながら楽しい一時。
僕がトム・ベレンジャーの大ファンだと知ると、
これは内緒なんだけどと言いながら、
ジャニ・ブレンが当時の映画化の内幕を教えてくれたんです。
そのトム・ベレンジャーは、僕たちが話しているところに来て、
僕のショルダーバッグを褒めてくれたり、
最新作の「戦争の犬たち」のことを話してくれたり……。



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何だか懐かしいですね……遠い目になってしまいます。
写真はその時に貰ったトム・ベレンジャーのサイン。
僕の名前……間違っていますがご愛嬌(笑)


2018年10月2日


ブノワ。


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ピアノからベルイマンへ。 

2018/09/26 Wed.

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 「クラシックの華はピアノと声楽よっ!」

僕の35年来の親友で悪友で愛すべきべったらオネエのMが言った。
このエピソードを藤原真理さんに話したら苦笑いしていましたけど……。
僕はクラシックと言えば矢張りチェロの人ですから、
やっぱり、おクラシックってそう言うものなのかと思いながらも、
今までなかなかピアノを聴く機会がありませんでした。
リサイタルは数えるほどしか聴いていません。
イーヴォ・ポゴレリチをサントリーホールで聴いた時は、
2階席の通路を挟んだ隣に美しい美智子皇后がお座りになっていたり、
数少ないので、想い出も色濃く鮮明です。



さて、先日のこと……。
ジョス・ファン・インマゼールと伊藤綾子のリサイタルを聴いて来ました。
「ドビュッシーとフランス同世代の作曲家」です。
1877年生のエラールピアノを使っての連弾で、ドビュッシー没後100年だそうです。
曲目はエリック・サティ、モーリス・ラヴェル、クロード・ドビュッシー。
今年は区切りがいい企画が多いですね……。
レオナール藤田が没後50年、バーンスタインも生誕100年、クリムトが没後50年、
バルテュスが生誕100年、いわさきちひろも生誕100年、高校野球が100周年記念(笑)

ピアノを聴く機会も少ないので、連弾はまったくの初めてでした。
面白いですね。2人の身体とは別に4本の腕が違う生き物のように動きます。
お互いに尊重し、交差する4本の腕が1つになり曲を奏でる……。

実は、もうかれこれ10年くらい前になるでしょうか……。
伊藤綾子さんの宣伝用のポートレートを撮ったことがあるんです。
何だか懐かしいな……まだ少女の面影を残していた彼女が、
美しいマダムになっていたのには驚きました。
薔薇の蕾が満開に花開いたかのよう……。
今回、写真を撮ったのが親友のカメラマンのMちゃん。
これまた不思議な縁を感じます。



ピアノと言えば……。
つい先日のこと、イングマール・ベルイマンの晩年の傑作、
イングリッド・バーグマンの最後の映画作品「秋のソナタ」を劇場で観ました。
この作品……物凄く好きなのです。登場人物はたったの5人。
世界的なピアニストの母親シャルロット(バーグマン)と、
その娘で、田舎の牧師に嫁いだエヴァ(リブ・ウルマン)、
エヴァの夫の牧師ヴィクトル(ハルヴァル・ビョーク)と、
シャルロットの末娘で脳性麻痺で寝たきりのへレナ(レナ・ニーマン)。
そしてシャルロットのマネージャー、ポールに(グンナール・ビョルンストランド)。
ほぼ母娘2人の会話劇、心の内の感情をモノローグで語らせる構成が演劇的です。
久し振りの再会を喜ぶ母娘は、エヴァがシャルロットに内緒で、
妹のへレナを牧師館に引き取っていたことから雲行きが怪しくなります。
見捨てた脳性麻痺の末娘の存在に大きく心乱され、怒りが込み上げる母。
いたらない自分を辱めたと思い込む傲慢な母シャルロット。
幼少期の母への不満や、娘時代に一方的に堕胎させられた怒りが一気に吹き出す娘エヴァ……。
眠れぬ深夜のリビングでの、罵り合い責め合う恐ろしい母娘の対決は、
高圧的だった母がいつの間にか、まるで娘になったかのように娘に許しを請います。
大女優2人による圧倒的な台詞の応酬、千々に乱れる心は、
スヴェン・ニクヴィスとのカメラによってクローズアップされます。
だけれど、この映画の一番の観どころは、食後にショパンの前奏曲を2人が弾くシーンです。
映画とは斯くあるべき……映画史上最も恐ろしい傑作シーン。

是非、弾いてみるようにと促され、
たどたどしく弾く娘のピアノを横で聴きながら、
私に内緒で妹を引き取ったりしても、やっぱりあなたはまだまだだと、
薄らほくそ笑むバーグマンの一世一代の顔の演技……。
手本を見せてと懇願され、ショパンはこうあるべきと、
講釈を垂れながらこれ見よがしに弾く母親のピアノを複雑な思いで聴く娘……。
前奏曲の最初の部分を弾く手のクローズアップから、
カメラは引いてバーグマンの顔を捉えます。おぉ!バーグマン自身が弾いている!
勿論、その先はカットが変わって実際の音はプロの手によるものなのですが、
そこは映画のマジックです。極めて効果的な映画技法、見るものを騙すテクニック。
このシーンだけでもこの作品を見る価値があります。
大女優2人の火花が散るシーンです。

 「化粧もしないで出演したからもうハリウッドからオファーが来ないわ。」

と、冗談まじりで愚痴るバーグマン。
内緒で末娘を引き取られた怒りと戸惑いを隠すため、
夕食のために髪をセットし、真紅のドレスで階段を降り立つ、
バーグマンの美しいことときたら!


その傑作「秋のソナタ」を……。
もう5年前にもなります。翻訳、台本を木内宏昌、演出を熊林弘高。
現在の日本演劇界で最も信頼出来る2人に加え、
佐藤オリエと満島ひかりの新旧実力派女優による2人芝居を観ました。
期待しない方が無理と言うものですよね……そして、見事にコケました。
これは2人芝居では無理です。映画のように、蚊帳の外の夫の視線があり、
末娘の母親への剥き出しの愛情がなければ。そして何よりもピアノがない!
ピアノを弾くシーンでは音すらありませんでした……想像しろって?
映画の一番の観どころがソックリ抜けているのです……。
映画を観ていない人たちは何が何だかまったく分からなかったハズです。
これだけの才能が終結しても化学変化が起こらないこともあります。


イングマール・ベルイマンと言えば……。
映画の魅力に取り付かれた高校生の時に、
「岩波ホール」で開催された「シーズン・オブ・ベルイマン」にて、
「冬の光」「儀式」「魔術師」「夜の儀式」の4本を観ました。
ベルイマンと言うと、その難解さや、
神の沈黙と言った重たいテーマで敬遠されがちですが、
大体が無心論者の僕にしてみれば、一大事に神からの啓示、
返答がないことに大いに苦しみ身悶えする登場人物に共感出来る訳もなく(苦笑)
まだまだお子ちゃまだったので、ただただ難解な監督と言うイメージしかなかったけど、
それでも「叫びとささやき」「秋のソナタ」は大好きな作品で、
唯一、劇場で見逃してしまい、心残りにしていたのが「ファニーとアレクサンデル」。
上映時間は休憩を入れると5時間30分にもなります。
見る方も体力勝負、でも、待てば海路の日和あり、
このほど晴れて劇場で鑑賞することが出来ました。
僕はベルイマン演出の舞台版「ハムレット」も見ていますが、
矢張り、ベルイマンは演劇的なんだと独りごち、
ある劇場を持つ一家を取り巻く魅力的な人々の、
愛すべきエピソードに我を忘れる5時間30分でした。

ハァ……やっぱり映画はいいですね。
今日は僕の愛すべきゲイの親友の一言からベルイマンへ(笑)
何だかとりとめがない話しでゴメンなさい!


2018年9月26日


ブノワ。


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怒髪天を突く……おねぎとピーマンで映画評。 

2018/09/02 Sun.

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…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 「バタンっ!!!!!」

大きな音をたてて玄関のドアが閉まった……。
そこには憤懣やるかたないと言った表情のおねぎが……。
靴を乱暴に脱ぎ捨てリビングに入ると、
優雅にシャンパン・グラスを傾けながらピーマンがソファーに座っていた……。


立て板に水の如く澱みなく、油紙に火が点いたようにペラペラと。
お互いの台詞を遮らんかのような勢いで、
丁々発止、息つく間も泣く台詞を言うこと……。


O  「あら、ピーマン。帰っていたんだ……。」
P  「チョッとぉ、おねぎ、ドアが壊れちゃうじゃないの!」
O  「あら、ウルサいのよ!アタクシお怒りモードなの。」
P  「まぁ、本当だ。顔がコワい。でも顔で言うならアナタいつもお怒りモードじゃないの。」
O  「ウルサいのよ!アタシ、今日は許さないわ!」
P  「まぁ、恐ろしい。でもって、一体何を許さないのよ。」
O  「あら、ピーマンも試写会で観たんでしょう?アレ。」
P  「アレ?アレってアレね?観たわよ『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』」
O  「だったらアタシのお怒り分かるでしょう?」
P  「分かるわ。アレはないわね、詐欺だもの。」
O  「そうよっ!詐欺よ、詐欺!東宝東和は詐欺会社よ!」
P  「まぁ、ハッキリと言い切るわねぇ(苦笑)」
O  「だってアナタ、メリルが最後の5分くらいしきゃ出て来ないじゃないの!
    これを詐欺と呼ばずして何と呼ぶ?アタシ、怒髪天を突いてんの!
    怒りがグラングラン沸騰してんのよ!」
P  「まぁ、コワい。おねぎ、顔が顔が鬼瓦みたいよ!」
O  「お黙りぃ、ピーマン!アナタ、予告編見たでしょう?
    頭に来るのはさ、前作の映像使っていない?
    さもメリルがメインで出て来るような印象を受けるじゃない。
    アレはないわ。冒頭に額縁に入ったメリルの写真が出て来た瞬間、
    あぁ……これってもしかしてヤバいかもって思ったわよ。
    本当に頭に来る、アタシは許さないわ!」
P  「くくくく……アナタ、おねぎったら浅香光代になったのね?(笑)」
O  「何なのよ、その浅香光代って?」
P  「ホラ、彼女言うじゃない『アタシャ許さないよ!』って(笑)」
O  「あら、アタシが浅香光代だったらアナタは野村サッチーじゃないの!がはは!
    アタシ、マジでお金も時間も返してって言う感じよ!」

ピーマン、ここでおねぎにグラスを渡してシャンパンを注ぐ。
一口シャンパンを煽ったおねぎ、ピーマンの隣に腰をおろす。

P  「ま、いいわよ、我慢しなさいよ。
    そんなことよりもさ、このところアナタの好みの男の映画が続いたじゃない?」
O  「そうっ!そうなのっ!アタシのクリスね?それからアタシのオールデンね?!」
P  「ふふふふ、アナタも単純ね。怒ったおねぎがもう笑った。
    でもさ、どうしてアナタって有名人を自分の所有物にしようとするのよ。」
O  「ウルサいのよ!いいじゃないの、凡人の細やかな楽しみよ!
    それに、映画は男で見るものなのよっ!」
P  「あら、アタシは監督と女優で見るわ!」
O  「フン!何言ってんのよ、映画評論家ぶっちゃって!
    アタシはさ、クリス・プラットってさ、
   『マネー・ボール』のチョッと太目の頃から目ぇ付てんの。」
P  「あら、今だって太目じゃないの!」
O  「ウルサい、ピーマン、お黙りぃ!」
P  「いいわよね、農耕民族体形で(笑)少なくとも騎馬民族系じゃない。
    でも、映画的に残念なのはさ、島を出ちゃうと恐竜の魅力が半減なのよ。」
O  「そうっ!アレは不思議だったわね、一気に輝きを失うのよ。
    クリスとラプトルのブルーの愛情って涙ものだわ……。
    もう1作作るでしょう?今度はどうするのかしらね?」
P  「アタシはクリスはどうでもいいけどオールデンが好き!」
O  「あら、アタシが最初に見付けて来たのよっ!」
P  「まぁ、おねぎ、相変わらず傲慢ねぇ……でも、可愛いわよね。
    その辺にいいるお兄ちゃんって言う感じでさ。」
O  「まだ何者でもないハン・ソロを朴訥と演じていたわ。」
P  「アタシさ『ヘイル、シーザー!』の時の物凄い訛りの西部劇スター役が好きなのよ。」
O  「ウン、アレは確かにウケた、良かったわね。」
P  「おねぎ、こっちなんかあと2作も作るのよ!
    コケたらしいけどどうするのかしら?」


O  「ねぇ、ピーマン、アナタご覧になったでしょう?『アイ,トーニャ』」
P  「観たわ。アタシはこっちにお冠。何なのあのタイトルは!」
O  「そうそう、センスの欠片もないあのタイトルね!今時、誰が分かる?
    トーニャ・ハーディングなんて余程のフギュアファンじゃないと知らないわよねぇ。」
P  「そうなのよ、それになぜ『、』じゃなくって『, 』なの?訳分かんないわぁ。」
O  「でもさ、なかなか面白かったわよね。あの強烈なおっかさんね(爆)」
P  「彼女さ、アリソン・ジャニーって『めぐりあう時間たち』の中でさ、
    メリルのレズビアンの恋人役やっていたわよね。」
P  「そう、映画は面白かった。3流映画のキワモノで終わるところを、
    よくぞアカデミー賞に絡む作品にまで仕立てたって感じ。
    でもさ、メリルってレズビアン役多いわよねぇ……。」
O  「そう!『マンハッタン』『めぐりあう時間たち』『シルクウッド』……って、3本か。」


P  「アナタ、一緒に観た『カメラを止めるな!』はどう?」
O  「うぅ〜ん、アタシは可もなく不可もなくだわ……。」
P  「アタシは結構、好きなのよ。初めはさ、ヘッタクソなゾンビ映画観せられてさ、
    ムンムンしていたんだけど、その後に段々と映画としての体裁が整うじゃない。
    カメラの向うにまたカメラがあって、そのまた向うにカメラがあって……。」
O  「そうなんだけどさ、アタシはやっぱりキッチリした映画が観たいわ。」
P  「でも思うのよ、この作品が東京のど真ん中の大劇場で上映されている不思議。」
O  「ウン、それはあるわね、口コミって本当にバカに出来ない。」


P  「そう言えばさ、アナタおねぎ、どう思った?『オーシャンズ8』」
O  「あら、アタシは好き。アタシのケイトが出ているし。」
P  「ねぇ、その『アタシのケイト』って言うのやめてくれる?」
O  「あら、いいじゃないの。アタシのケイトなんだもん。
    でもさ、これって確かに面白いけどさ、1つ水を差してもいい?」
P  「あら、いいわよ。お説拝聴しようじゃないの。」
O  「アタシ思うんだけどさ、カルティエが幻のネックレスを貸し出すじゃない?
    アナタ、あれって本物を貸し出すと思う?
    今時さ、名だたる宝石には必ずレプリカが存在するのよ。
    メトロポリタンに展示してあった宝石の数々もそう。
    アタシは全部、偽物を飾っていたと思うの……。」
P  「まぁ、おねぎ、急に現実的になっちゃって……映画が成立しないじゃない!」
O  「アタシだってたまに現実的になるのよ。でもさ、笑ったのはさ、
    全員、役作りなんかしていないわね。素のままじゃないの!」
P  「そうなのよ!(笑)そのまんまサンドラ・ブロック、いつものアン・ハサウェイ、
    どこをどう切ってもケイト・ブランシェット!(爆)」
O  「ヘレナ・ボナム=カーターなんか最近は全部一緒よ!(爆)
    なんかさ、悪いけど、皆、オカマみたいなのよ!(爆)
    アタシのケイトなんてモロにオカマのタチよね!」
P  「やめなさいよ、おねぎ!オカマなんて言っちゃダメ!」
O  「あら、じゃぁなんて言うのさ。オカマはオカマよ!
    いいじゃないの、オカマのアタシが言うんだからさ!
    オカマじゃなかったら、皆、女装した男みたいじゃないの!がはは!」
P  「確かに!それは認めるわ(笑)」
O  「はぁ……オカマでもいいんならアタシも出てみたかった!」
P  「まぁ『オーシャンズ8』に?それは無理だわよ。
    だって、アナタには何一つとして特技がないじゃない!
    ドン臭いし機会音痴、運動神経マイナスだし……。」
O  「ウルサいのよ、あるわよ、アタシにだって特技が。」
P  「あら、何かしら?美人局?それとも恫喝?(笑)」
O  「フン、バッカねぇ、ピーマン!アタシにはこの美貌があるじゃないの、美貌が!」
P  「あら、アナタが美貌ならアタシは展示されていた宝石だわ!」
O  「バッカねぇ!だからアレは偽物だって言ったじゃない!
    そうよ、ピーマン、アナタは偽物なのよ!」
P  「フンだ!何か1つ忘れていませんか?って。
    アタシたちは双子なのよ!一卵性双生児なの!
    アタシが偽物って言うことは、アナタも偽物よっ!」
O  「はぁ……ピーマン、そうだったわ。
    アタシとアナタは出来の悪いバロック真珠な双子の兄弟……。」
P  「おねぎ……。」
O  「ピーマン……。」
P&O「アタシたちは……因果だねぇ……。」 

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「マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー」を観て参りました。
そして怒髪天を突いています。テーブルを引っ繰り返したいくらい。
映画の出来とか言うのではありません。
こういう詐欺まがいの宣伝をする映画会社に腹が立ちます。
元々前作からしてそれ程、好きな作品ではないけれど、
大好きなメリル・ストリープが出ているんです。
劇場に駆け付けますよね?駆け付けてみれば……。

この怒り、どこにぶっつけよう(笑)
早く口直しの映画が観たい!


「マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー」……★★……20点。
「ジュラシック・ワールド 炎の王国」……★★★★★★☆……65点
「ハン・ソロ・スター・ウォーズ・ストーリー」……★★★★★★★……70点
「カメラを止めるな!」……★★★★★……50点
「オーシャンズ8」……★★★★★★……60点


2018年9月2日


ブノワ。


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Category: 映画館へ行こう!

Call me by your name, and I'll call you by mine.  

2018/05/03 Thu.

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…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

2人は太陽と月なのだ……。

いかにも自信たっぷりで快活で背が高く、
頑丈な体躯に金髪、深い海のように澄んだ青い目……。
少年の父親の軽いジョークにも快活に、そしてウィットに富んだ応酬する、
まるで太陽かと見まごうばかりに眩いアメリカ人の青年に少年は恋をする。
到着した青年を2階の窓から観察しながら、

 「自信家だね。」

たった一言、女友達に対して話すでもなく恋に落ちる予感の少年。

エリオは少年と言ってももう17才だ……。
でも、まだ恋に焦がれる熱病の年頃。
恋愛の対象が男とも女とも付かない曖昧な年代だ。


教授に招かれて、避暑のために北イタリアの別荘に到着した青年は、
どこか自信なさげで憂いを秘めた教授の息子に自分にないものを見る。
自分にないものと言うよりは、自分の弱さとして過去に封印して来た同じ匂い。
1980年代とは言え、まだまだ周囲の厳しい差別と侮蔑の視線の中で、
ゲイとして生きることの難しさを身を以て感じ、
息を殺してクローゼットの中に身を隠して来た、
無意識の内に抹殺して来た己の化身、分身を見たに違いない。


母親は「シャイなのよ。」と一言で、青年、オリバー評するけれど、
一瞬にして地元の女の子たちの視線を釘付けにし、
街にやって来て数日もしないのに、よそ者には冷たいであろう、
地元のオヤジさん連中に見事に溶け込んでカード遊びに興ずる、
人懐こいオリバーの一面をエリオは誰よりも知っている。
熱い視線は送らない。でも、意識の片隅の常に気になる存在。
そして、背中で、心の中で眩しい眼差しで見つめます。



丁寧に丁寧に、日常のシーンを積み重ねて行きます。
風光明媚な北イタリアの田舎町、青い空、澄み渡る水、
風の音、さえずる小鳥の声、虫の音、草いきれ、深夜の星の瞬き……。
そんな中、人々の生活の音や色がアクセントになります。
食器が触れる音、騒音かと思われる会話の声(笑)
ページを捲る音、立ち上る紫煙、桃の赤、アプリコットのオレンジ、
オリバーが脱ぎ捨てたスイムウェアの色、色、色……そしてピアノの音。

映画はハッキリと2人が恋に落ちる瞬間を見せません。
触れる肌の汗ばんだ感触、抱きついた時に思い切り吸い込む体の匂い……。
曖昧なまま、戯れ付く子犬のように積極的なエリオに押され、
一気に燃え上がる恋心。年上とは言いつつ、オリバーもまだ24才。

 「そう言う話しはしてはいけない……。」

 「僕たちはまだ恥じることは何もしていない……。」

初めてのキスのあと、
少しだけ年長の自制心でエリオを諌めてはみたものの、
絡む視線、触れる指先、吐息の中に熱い感情を感じ、
堰が切れたように今度は自らが積極的にエリオの愛情を乞うオリバー。
結ばれた後は自責の念に苛まれ、エリオを傷つけてはいまいか、
何か重大な過ちを犯してしまったのではないか……と、不安になります。
それを口にしてエリオに訪ねるオリバーはまだ24才。
結ばれた後に立場が逆転するのが面白いです。

避暑地の開放的な空気がそうさせたのではない……。
エリオは、未来のこうありたい、理想の自分の姿をオリバーに見い出し、
オリバーは、自らが封印して来た過去の自分をエリオに懐かしさを感じたのでしょうか。

映画は淡々と小さな事柄を積み重ね、
そして、やがて訪れる駅での別れ……。

駅での別れを描いた作品は数多いです。
「旅情」「ひまわり」「終着駅」……枚挙にいとまがないけれど、
「君の名前で僕を呼んで」ではエリオの後ろ姿だけしか見せません。
感動する気満々、泣く準備万端の人たちは大いにはぐらかされます(笑)
あっさりとしたラストシーン?……と、思いきや、
その後のシーンの数シーンでエリオの成長と、
オリバーに対する愛情の深さを改めて描き切ったところが秀逸です。

大きな感動を期待し、大いに泣くことを期待した人たちは、
少しはぐらかされるかもしれません。
シャツの下りがあるので、どうしても思い起こし、比較してしまう、
アン・リー監督の傑作「ブロークバック・マウンテン」のラスト、
クローゼットに大事に仕舞われたジャックのシャツが引き起こす、
劇場の椅子が大きく揺れるほどの、心臓を鷲掴みにされ、
感情を大きく揺さぶられるような嗚咽、感動はないけれど、
それはそれで構わないと思うのです。

僕が敬愛する、北は札幌のリズこと vivajiji姐さんがいみじくも仰有いました。

 「不覚にも涙がこぼれた・・・
  思わず笑ってしまった・・・
  そういう作品がいい映画。」


僕は諸手を挙げて絶賛はしません。
幾つか気になる部分もありました。
脚本が饒舌すぎるのです。書ける作家が往々にして陥る落とし穴。
語り過ぎるのです。映画は映像で見せて欲しい……僕はそう思います。

例えば、市川崑の「細雪」での雪子のお見合いシーン。
見合い相手の東谷子爵本人に酌をされ、
猪口から目を上げた雪子の上気した頬と何とも言われぬ笑み。
これまで幾多の見合いをことごとく断って来た雪子が見せた少女のような笑み。
それを見た、姉、幸子の視線。次に雪子にどこかで恋心を抱いていた貞之助の視線……。
これだけで1つの台詞もないままに3人の千々に乱れる感情を描く訳です。
これぞ映画、映画技法の到達点としては最高峰の一例だと思うのです。

父親が息子に諭すように言い含める人生の教訓。
これらはこの作品の大事なテーマでもあり、
監督と作家が観客に語りかける重要なポイントです。
自らの過去を告白しながら愛情たっぷりにエリオに語りかけます。
少し余計ではないでしょうか。肝心なところで語り過ぎてしまった。
2つ3つの台詞で描けたのでは?あとは表情のアップとカットバック……。
台詞を映像に置き換えて!映画芸術は映像で見せて欲しい……僕はそう思うのです。
テーマは決して台詞で語ってはいけない……僕の持論です。
台詞を語り過ぎるのは、書ける作家の悲しい性です。


初日2日目とその翌日、立て続けに2回鑑賞しました。
また観に行きます、きっと違ったものが見えて来るハズだから。
オリバーとエリオに「Later !」と、言いましょう。

 「Call me by your name, and I'll call you mine.」

清々しくも余韻があって、行間を読ませてくれる秀作です。


「君の名前で僕を呼んで」……★★★★★★★……70点。


2018年5月3日


ブノワ。


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