Call me by your name, and I'll call you by mine.  

 

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…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

2人は太陽と月なのだ……。

いかにも自信たっぷりで快活で背が高く、
頑丈な体躯に金髪、深い海のように澄んだ青い目……。
少年の父親の軽いジョークにも快活に、そしてウィットに富んだ応酬する、
まるで太陽かと見まごうばかりに眩いアメリカ人の青年に少年は恋をする。
到着した青年を2階の窓から観察しながら、

 「自信家だね。」

たった一言、女友達に対して話すでもなく恋に落ちる予感の少年。

エリオは少年と言ってももう17才だ……。
でも、まだ恋に焦がれる熱病の年頃。
恋愛の対象が男とも女とも付かない曖昧な年代だ。


教授に招かれて、避暑のために北イタリアの別荘に到着した青年は、
どこか自信なさげで憂いを秘めた教授の息子に自分にないものを見る。
自分にないものと言うよりは、自分の弱さとして過去に封印して来た同じ匂い。
1980年代とは言え、まだまだ周囲の厳しい差別と侮蔑の視線の中で、
ゲイとして生きることの難しさを身を以て感じ、
息を殺してクローゼットの中に身を隠して来た、
無意識の内に抹殺して来た己の化身、分身を見たに違いない。


母親は「シャイなのよ。」と一言で、青年、オリバー評するけれど、
一瞬にして地元の女の子たちの視線を釘付けにし、
街にやって来て数日もしないのに、よそ者には冷たいであろう、
地元のオヤジさん連中に見事に溶け込んでカード遊びに興ずる、
人懐こいオリバーの一面をエリオは誰よりも知っている。
熱い視線は送らない。でも、意識の片隅の常に気になる存在。
そして、背中で、心の中で眩しい眼差しで見つめます。



丁寧に丁寧に、日常のシーンを積み重ねて行きます。
風光明媚な北イタリアの田舎町、青い空、澄み渡る水、
風の音、さえずる小鳥の声、虫の音、草いきれ、深夜の星の瞬き……。
そんな中、人々の生活の音や色がアクセントになります。
食器が触れる音、騒音かと思われる会話の声(笑)
ページを捲る音、立ち上る紫煙、桃の赤、アプリコットのオレンジ、
オリバーが脱ぎ捨てたスイムウェアの色、色、色……そしてピアノの音。

映画はハッキリと2人が恋に落ちる瞬間を見せません。
触れる肌の汗ばんだ感触、抱きついた時に思い切り吸い込む体の匂い……。
曖昧なまま、戯れ付く子犬のように積極的なエリオに押され、
一気に燃え上がる恋心。年上とは言いつつ、オリバーもまだ24才。

 「そう言う話しはしてはいけない……。」

 「僕たちはまだ恥じることは何もしていない……。」

初めてのキスのあと、
少しだけ年長の自制心でエリオを諌めてはみたものの、
絡む視線、触れる指先、吐息の中に熱い感情を感じ、
堰が切れたように今度は自らが積極的にエリオの愛情を乞うオリバー。
結ばれた後は自責の念に苛まれ、エリオを傷つけてはいまいか、
何か重大な過ちを犯してしまったのではないか……と、不安になります。
それを口にしてエリオに訪ねるオリバーはまだ24才。
結ばれた後に立場が逆転するのが面白いです。

避暑地の開放的な空気がそうさせたのではない……。
エリオは、未来のこうありたい、理想の自分の姿をオリバーに見い出し、
オリバーは、自らが封印して来た過去の自分をエリオに懐かしさを感じたのでしょうか。

映画は淡々と小さな事柄を積み重ね、
そして、やがて訪れる駅での別れ……。

駅での別れを描いた作品は数多いです。
「旅情」「ひまわり」「終着駅」……枚挙にいとまがないけれど、
「君の名前で僕を呼んで」ではエリオの後ろ姿だけしか見せません。
感動する気満々、泣く準備万端の人たちは大いにはぐらかされます(笑)
あっさりとしたラストシーン?……と、思いきや、
その後のシーンの数シーンでエリオの成長と、
オリバーに対する愛情の深さを改めて描き切ったところが秀逸です。

大きな感動を期待し、大いに泣くことを期待した人たちは、
少しはぐらかされるかもしれません。
シャツの下りがあるので、どうしても思い起こし、比較してしまう、
アン・リー監督の傑作「ブロークバック・マウンテン」のラスト、
クローゼットに大事に仕舞われたジャックのシャツが引き起こす、
劇場の椅子が大きく揺れるほどの、心臓を鷲掴みにされ、
感情を大きく揺さぶられるような嗚咽、感動はないけれど、
それはそれで構わないと思うのです。

僕が敬愛する、北は札幌のリズこと vivajiji姐さんがいみじくも仰有いました。

 「不覚にも涙がこぼれた・・・
  思わず笑ってしまった・・・
  そういう作品がいい映画。」


僕は諸手を挙げて絶賛はしません。
幾つか気になる部分もありました。
脚本が饒舌すぎるのです。書ける作家が往々にして陥る落とし穴。
語り過ぎるのです。映画は映像で見せて欲しい……僕はそう思います。

例えば、市川崑の「細雪」での雪子のお見合いシーン。
見合い相手の東谷子爵本人に酌をされ、
猪口から目を上げた雪子の上気した頬と何とも言われぬ笑み。
これまで幾多の見合いをことごとく断って来た雪子が見せた少女のような笑み。
それを見た、姉、幸子の視線。次に雪子にどこかで恋心を抱いていた貞之助の視線……。
これだけで1つの台詞もないままに3人の千々に乱れる感情を描く訳です。
これぞ映画、映画技法の到達点としては最高峰の一例だと思うのです。

父親が息子に諭すように言い含める人生の教訓。
これらはこの作品の大事なテーマでもあり、
監督と作家が観客に語りかける重要なポイントです。
自らの過去を告白しながら愛情たっぷりにエリオに語りかけます。
少し余計ではないでしょうか。肝心なところで語り過ぎてしまった。
2つ3つの台詞で描けたのでは?あとは表情のアップとカットバック……。
台詞を映像に置き換えて!映画芸術は映像で見せて欲しい……僕はそう思うのです。
テーマは決して台詞で語ってはいけない……僕の持論です。
台詞を語り過ぎるのは、書ける作家の悲しい性です。


初日2日目とその翌日、立て続けに2回鑑賞しました。
また観に行きます、きっと違ったものが見えて来るハズだから。
オリバーとエリオに「Later !」と、言いましょう。

 「Call me by your name, and I'll call you mine.」

清々しくも余韻があって、行間を読ませてくれる秀作です。


「君の名前で僕を呼んで」……★★★★★★★……70点。


2018年5月3日


ブノワ。


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アプローチの違い。 

 


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超絶スーパー、バタバタな年度末が終わり、
ホッとする間もなく禁断症状が出てきました。
そう、映画館に行きたい病ね、ここ暫く殆ど行かれなかったから。

本当に久し振りの休日、
いてもたってもいられずに映画館に駆け込みました。
この日、立て続けに観たのは、
「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」と、
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の2本。
両方とも本年度のアカデミー賞の主演賞にノミネートされ、
「〜チャーチル」のゲーリー・オールドマンは晴れて初受賞となり、
一方のメリル・ストリープは、なんと21回目のノミネーション、
さらに驚くべきは、この10年間で7回のノミネート!
そんな世界最高峰の演技を堪能すべく、
いそいそと劇場に行って参りました。

チョッと驚いたのは、ゲーリー・オールドマンと、
メリル・ストリープの役作りへのアプローチが全く違っていたこと。
2人が演じるキャラクターはどちらも実在の人物です。
実在の人物を演じるにあたっての苦労は並大抵ではないと聞きます。
ある程度、見かけが似ていることも必要だろうし、
実在の人物ですから、生前の、あるいは今の本人を知っている人も数多いでしょう。
ただのソックリさんに終始していては役者としての名前が廃るし、
その辺りの兼ね合い、そして本人に似せてなお、
その隙間に自らの工夫と感性を入れ込むテクニック。

チョッと前にこんな記事も書いています。
宜しかったら併せてご覧になってみてくださいね。


チャーチルを演じたゲーリー・オールドマンは、
こちらもアカデミー賞を受賞された、辻 一弘さんの、
素晴らしい特殊メイクの力を借り、限りなくチャーチルの外見に似せます。
ゲーリー・オールドマンの面影があるのは目元だけ。
そしてリズムよくキングス・イングリッシュの台詞をスタッカートで刻み、
まるで名優の舞台の華麗な台詞術を観ているかのよう。
もはやゲーリー・オールドマンのワンマンショーです。

一方、ワシントン・ポストの実在の経営者、
キャサリン・グラハムを演じたメリル・ストリープは、
計算された押さえた演技で終始します。
声を荒げることなく、殆ど囁くような穏やかな台詞術。
緻密に計算された目の演技は映画特有のクローズアップあってこそのもの。
その辺は舞台の表現技術に近い撮り方と、
映画ならではの技法の違いをまざまざと見せつけられました。

驚くべきことは、アカデミー賞が同業の仲間の、
投票によるノミネーションだと言うこと。
詰まりは、押さえた押さえた地味なメリル・ストリープの演技を、
仲間の役者陣はキッチリと見極めて評価していると言うことなんです。
ノミネートされた全ての候補者が全員受賞者で、
その中から最優秀賞を選ぶどこかの国の馴れ合いのアカデミー賞の生温さとは違い、
勝つか負けるか、オール・オア・ナッシング的な厳しさの中に、
仲間の演技を公平に見極める眼力、相手の仕事に対する尊敬、
及び、確かな審美眼があることに驚かされます。


そうそう、ゲーリー・オールドマンに付いては面白いエピソードがあります。
それはまた今度、何れかの機会に書くとしましょう。
この時期はいい作品が目白押し……トーニャ・ハーディングのとかね。
引き続き、映画館に通うとしましょうか……。


2018年4月18日


ブノワ。


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星空に想いを馳せる……「スターウォーズ 最後のジェダイ」。 

 

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「スターウォーズ・最後のジェダイ」……既に2回鑑賞です。
TOHOシネマズの大きなスクリーン、TCX、ドルビー・アトモスにて。

「スターウォーズ」の第一作目が公開されたのは今を遡ること39年前のことです。
本国アメリカから半年も遅れての公開……有り得ません(怒)
公開前は「惑星大戦争」と言う仮のタイトルが付いていたことは有名です(笑)
実は、その僕らの度肝を抜いた「スターウォーズ」が、
9作品あるスターウォーズ・サガの、第4作目であること、
先ずはエピソード4からエピソード6まで制作し、
その後は、前日慓のエピソード1からエピソード3までを作り、
最後にエピソード7からエピソード9まで作られると聞いた時には、
全9部作!果たして、生きて前作を見ることが出来るのか?
そんな冗談が出るほど壮大な計画に思えました。
そして、どうやらエピソード7からエピソード9までは制作されないとニュースが流れ、
ガッカリしたのも束の間、その後、撤回されて今回のエピソード8の公開となった訳です。
どうやら生きている間に9作目まで全部、見ることが出来そう(笑)
何でも、今の主人公たちでその後の3部作が作られるそうなので、
果たしてそっちはどうか甚だ疑問ではありますが……(苦笑)

さて、シリーズ物の、それも3部作の真ん中の作品は非常にハードルが高いです。
物語の始まりが前作の続きで、しかも、エンディングが次作へ続く……。
この難しい条件を見事にクリアしたのが、「スターウォーズ/帝国の逆襲」です。
全編を重苦しい空気が立ちこめる第エピソード5でしたが、
職人芸的な監督、アーヴィン・カーシュナーの見事な手腕で、
見応えのある作品になるとともに、映画史上、第一作を凌ぐ、
クォリティーの作品になったのです。

今回の「スターウォーズ/最後のジェダイ」も、
なかなか見事な仕上がりになっていました。
「帝国の逆襲」の作り方を踏襲し、レジスタンスを、レイア将軍率いる宇宙船と、
レイがルークスカイウォーカーにフォースの極意を教わる惑星オクトー、
それからファーストオーダーを倒すために、
カント・バイトのカジノから敵陣に乗り込む、フィンとローズの2人の3組に分け、
カット割りの時間を次第にを短くしてテンポを上げる辺りはさすがです。
152分はチョッと長いけど、最後まで楽しめ、
また、次回作への期待も盛り上がったまま観終わることが出来ました。
後から思えば、数多くの御都合主義も目立ったけどね……。
例えば、全能のスノークがあんなことが分からなかったとか(笑)
大体、スノークって言えばノンノンのお兄さんだし(爆)
宇宙空間に投げ出されたレイア姫がフォースの力で宇宙遊泳!(苦笑)
抑制の利いたCGはシリーズの中でも白眉。
但し、カジノのシーンなど、宇宙人が沢山出て来る場面や、
イウォークもそうだったけど、今回は変な鳥のキャラクターが出て来ます。
その辺って何やら作り物感満載(苦笑)子供っぽさが出てしまうのだけれど……。

少し気になったことがあります。
この作品に漂う自己犠牲の精神……そう、特攻精神です。
自らの命を犠牲にしてまでレジスタンスのために、
ファーストオーダーに一矢報いるために自らの命を犠牲にするの。
冒頭では、ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)が単独でメガ・デストロイヤーに攻撃を仕掛け、
今回、重要な役を担うローズ・ティコ(ケリー・マリー・トラン)の姉、
ペイジ・ティコ(ゴー・タイン・バン)が自分の命と引き換えに、
メガ・デストロイヤーに爆弾を落とし(重力のない宇宙空間で爆弾が落ちて行く不思議……。)
フィン(ジョン・ボイエガ)が新たなレジスタンスの基地をキャノン砲から守るために、
ポンコツな戦闘機を駆って単身突撃します。
百歩譲って、見事体当たり出来たとしても、蚊に刺されるくらいの効果しかないハズ。
ローズはローズで愛するフィンを助けるために、フィンの戦闘機に体当たりで突っ込む……。
それは正義とかの大義名分のためではなく、フィンに抱いたほのかな愛情のため……。
ホルド提督(ローラ・ダーン)は、全員が脱出完了した母艦で、
脱出した輸送船を守るためにメガデストロイヤーに突っ込みます。
そして、ルークス・カイウォーカー……ラストでアレですから(笑)
皆、自分を犠牲にして正義を守ろうとする……。
今ってそんな風潮なのかしらン?一見、美談だけれどチョッと薄気味悪いなぁ。
長いものに簡単に巻かれ、即座に寝返る、
飄々としたDJ(ベニチオ・デル・トロ)が却って新鮮(笑)
チョッとスリムになってますます古谷一行に似て来たことを書き添えておきます(爆)

第9作目が待ち遠しいです……。
前作でハン・ソロがあんなことになり、今回、ルークがアレで、
キャリー・フィッシャーがお亡くなりになったので、
果たして、エピソード9は若手3人の主役で大丈夫だろうかと心配もしますが、
有名どころを配して大いにコケた(内容的に……。)
エピソード1からエピソード3みたいな例もあるし、何とも言えないのだけれど……。
(ブノワ。さん的にはなくてもいい3部作だと思っている。)
ハン・ソロもレイア姫もルークも最初は無名だったものね。
だけど、ざっと数えて、反乱軍はドロイドを入れて15人くらいしか残ってないのよ……。
SOSを全宇宙に送って梨の礫だったのに、
さてさて、これからどうやって体制を立て直して行くのか……。


フランク・ハーバートの「Dune/デューン」を読んでも明らかなように、
悪を倒して天下を盗った途端に、今度は追われる立場になるのは必定で、
エピソード9が終わった時、新たにどのような物語が始まるのかも楽しみの一つです。
ラスト、帚を持つ少年が、レジスタンスに相対する時代が来るのでしょうか。
この少年、現に少しフォースがあるのかも……帚を念力でたぐり寄せていましたから。



今日の写真は9月に訪れた「イコロの森」の「スターウォーズ」な夜空(笑)
スタッフの皆さんと楽しく食事をして宿まで送って貰い、
皆さんが帰った後、虫の音一つ聞こえない静寂の中、夜空を見上げます。
そこにはクリスマスのイルミネーションなんかものともしない星空が……。
そうだ!とばかりにカメラを持ちだして撮影です。
宿の辺りは真っ暗なの……外灯の一つもないし(苦笑)
本当、コワいのですよ。1メートル先も見えないもの。
凄いですね、東京ではここまで星は見えません。
ISO25600だけど、こんなに綺麗に撮れるんですよ。
勿論、根性の手持ちで撮影でございます(笑)
a long time ago in a galaxy far far awayでは、
この地球に光りが届く遥か昔「スターウォーズ」な戦いがあったのでしょうか。
チョッと遠い目になってしまいますね……。


「スターウォーズ/最後のジェダイ」……★★★★★★☆……75点。


2017年12月25日


ブノワ。


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変幻自在な「雪之丞変化」。 

 

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このところ旅の記録、ガーデンの記事ばかり続くので、
閑話休題、最近、観た「雪之丞変化」のことなどをチョッと……。


僕の人生の学校、学びの場は映画館と前に書きました。
本当、学校ではまったく勉強しませんでしたから(笑)
よくぞ卒業できたもんだと自分でも不思議に思います。
何となく行かせて貰った学習塾ではレタリングに熱を入れていたし、
高校時代は授業中にイラストレーターの山藤章二の書き文字を真似る練習(笑)
今の僕の書き文字はそのころの名残なのでございます(爆)
漢字の読み書きが得意なのは、ただ単に好きだからに他ならないし、
科学、物理、数学……全滅でした(笑)本当にイヤだった。
卒業?……まぁ、ギリギリ?

大人になってから、改めて誰かに何かを習ったのは、
三味線と金継ぎのみ……これは新鮮でした。
この技術系のテクニックは先生に習う必要があるけれど、
例えば写真!これは今やシャッターを押せば何かしら写る、
素晴らしいカメラのお陰で、素人でも可成りいい線の写真が撮れる……。
勿論、偶然の産物であることの方が多いのですけどね。
誰かに習う必要なんで全くないと思っています。



 「流す涙が芝居なら……♪」

さてさて、5月から6月にかけて2回、
久し振りに市川 崑の「雪之丞変化」を劇場で鑑賞し直しました。
往年の大スター、長谷川一夫の300本記念映画です。
兎に角、面白い!岩下志麻主演の「五辯の椿」もそうですが、
よく出来た復讐劇ほど面白いものはありません。
「雪之丞変化」は、前に1度、20才の頃に映画館で観たことはありましたが、
こうして大人になってみると、ピッタリと僕のツボに填まることにビックリしました。
それは、良く考えてみると「雪之丞変化」が僕の好みにピッタリなのではなくて、
知らず知らずの内に、僕が多大な影響を「雪之丞変化」から受けていた事実を、
改めて再認識したことに驚いたと言った方が正しいです。

市川 崑のシニカルな視点。皮肉の中にも愛情を感じる温かさ……。
日本古来の、浮世絵から連綿と続く平面の中で構成するデザイン力。
例えば、分かりやすく写真に例えて言えば、
正面切って被写体を切り撮るのが基本中の基本なんですが、
それでは、所謂「日の丸弁当」になってしまいます。

下の写真は比率から言うと、
映画のスタンダード・サイズ(カメラ・フィルムの3:4)で撮った場合。

483A6286 - バージョン 3

それをマスターした上での画面構成……そこに各人の個性が出る訳です。
市川 崑が映画のワイドスクリーン、所謂、スコープサイズで処理するとこんな感じ……。

483A6286 - バージョン 2

因に、今日の1枚目の写真は僕が通常のクセで撮った1枚。
常日頃、無意識の内に「市川 崑ごっこ」をしている訳です。



市川 崑の晩年の傑作は「細雪」ですが、脂が乗り切った頃の「雪之丞変化」、
市川 崑ならではの斬新な画面構成は、決して古くなるどころか、
今のどの作品と比べてみてもモダンで斬新です。
往年の巨匠ヴィスコンティでさえ持て余したシネマスコープの横長の画面(1:2.35)を、
縦横無尽に使いこなすカメラワークは驚きの他ありません。
一部を抜かして全編スタジオ撮影。ほぼ室内か夜の景色の中での撮影は、
左右に大きく余白を取り、俳優の顔や姿だけにスポットライトを当てる、
いわば舞台のピンスポットのようです。特に顔、それも目の辺りにだけ照明を当て、
長谷川一夫がケレン味タップリに、まるで歌舞伎役者のような目の芝居をします。
この作品が撮られた当時(1963年)は勿論CGなどと言うものはありません。
女形と盗賊の2役を演じる長谷川一夫を巧みに一つの画面に納める他、
冒頭の舞台のシーンで降りしきる雪を激しく見せるために、
後からフィルムに雪を描き足すことしかしていません。
真っ暗闇の夜陰に煌めく白刃、岡っ引きの捕りものの縄が右から左に闇を走ります。
兎に角、世界の巨匠たちが持て余した横長のスクリーンの余白をデザインし、
まるで浮世絵の構図さながら、日本画の特徴である平面の構成、
それを完璧に使いこなした市川 崑のセンスは凄いです。


長谷川一夫が女形の雪之丞と、盗賊の闇太郎を怪演。
美貌の盛りは過ぎているものの、ねっとりとした男の魅力は二枚目役者の面目躍如。
山本富士子が女スリ、軽業のお初で好演。
この方は、はんなりしっとりの美貌のご婦人の役よりも、
はすっぱで気っ風のいい小股の切れ上がった女賊の方が性にあっているかも……。
優れた女優は殆どの人が気質が男……そんな一面が出ているのかもしれません。
兎に角、美しい若尾文子!先だってはCMで足がタコになっていましたが(笑)
わざと大きめの鬘をかぶり、華奢でウブな娘を演じます。
将軍の寵愛を一身に受けていると言う設定が納得です。
中村鴈治郎のふてぶてしさと、いかにも「悪」って言う面構えは、
どの作品を見てもお約束ごとの一つになっていて、
中村雁治郎と三島雅夫の喰えない坊主役は、日本映画史に燦然と輝きます。
他に、長谷川一夫300本記念作品と言うことで、
勝新太郎、船越栄二、市川雷蔵など、
そうそうたるスター俳優がゲスト出演です。

改めて自分が多大な影響を受けた作品を観ると、
驚きの他に、まだまだなってない、頑張らなくっちゃ!
……と、一層の精進を誓うのでした。


「雪之丞変化」……★★★★★★★★☆……85点。


2017年6月11日


ブノワ。


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おねぎとピーマンでコングとパッセンジャー。 

 

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おねぎとピーマン、映画会社の試写室から出て来る……。
おねぎ、興奮冷めやらぬ顔で。ピーマンは顔を赤く上気させて。
2人の会話は間髪置かず、お互いの台詞の最後にチョッとだけ被さるように、
また、立て板に水、油紙に火が点いたように早口で喋ること……。
イメージは舞台役者がツバを飛ばしながら喋るような勢いで……。

P 「チョッとぉ!!!!!!」
O 「な、な、な、なんなのよぉ、ピーマン、コワい顔しちゃってさ。
   まんまキングコングじゃない!がはは!」
P 「ねぇ、おねぎ、お願いだからやめてくれない?」
O 「あら何が?」
P 「アナタ、上映中に絶叫したでしょう!」
O 「がはは!……アレね?だってコワかったんですもの。」
P 「アレね?じゃないわよ、がはは!じゃないわよ。館内に響き渡っていたわよ!
   もう本当に恥ずかしくて、アタシ穴があったら入りたかったわ。」
O 「あら、勝手に入りゃぁいいじゃないの。
   アタシなんて平気よ。皆だってコワくてそれどころじゃなかったハズよ。」
P 「あら、そんなことないと思うわ。皆、こっち振り向いていたもの!」
O 「あら!皆って誰よ、言ってご覧なさい!」
P 「Y川さんにKのおばちゃま、Mの晴郎もこっち見ていたわよ!」
O 「だって、本当にコワかったんですもの……あのクモ!」
P 「あら、アタシはやっぱりトカゲがコワかったわ。」
O 「アナタ、ピーマン、あのトカゲ前脚しきゃないのよ!」
P 「足がない?!アタシ、コワくて指の間からしか見てないからよく分からなかったわ。」
O 「なにカマトトぶってんのよっ!目ぇ見開いて見てたじゃないの!」
P 「あはは!バレたか。アレってさ、やっぱり地獄の底から現われた幽霊トカゲなのよっ!キぇぇぇぇっ!」
O 「アタシたちなんてスグに食べられちゃって一巻の終わりね!」
P 「あら大丈夫よ。アタシたちって見るからに不味そうじゃない?(笑)」
O 「がはは!でもさ、今って何でも描けちゃうのね。」
P 「そうよ、アタシたちの時代ってレイ・ハリーハウゼンのコマ撮りか着ぐるみじゃない?」
O 「凄いわよね。アタシ『ジュラシック・パーク』の時に、
   懐中電灯でティラノサウルスの虹彩が閉じた時はビックラしたもの。」
P 「アタシなんてオシッコちびりそうになったわ。」
O 「あらイヤだ、ピーマン、ちびるだなんてお下品な(笑)」
P 「ねぇ、それよりさ、やっぱりキングコングっていつも人間の味方なのよね?」
O 「そうよ、じゃなきゃお話が成り立たないじゃないの。」
P 「でも、今回のヒロインはブリー・ラーソンだったわね。」
O 「チョッと美女と野獣って訳には行かなかったけど……。」
P 「よく出たわよね、アカデミー賞受賞の後でさ。アナタ、主演女優賞よぉ。」
O 「カメラマンって言うのがいかにもって感じだったけど、
   軽々しく絶叫せずに感じ良かったじゃないの。」
P 「でも、ビックリばかりしてないで、もっと写真撮らなきゃダメよねぇ。
   報道カメラマンなんだから(笑)」
O 「今までの絶叫女優や、この手の冒険映画に付き物の、
   書き割りみたいな魅力もこそも全くないペラペラな女優より良かったわ。」
P 「あら、書き割りみたいな女優って誰よ、言って御覧なさいよ。」
O 「フン!言える訳ないじゃないの。あるのよ、色々と大人の事情が。
   アタシだって一応、映画業界人だし。」
P 「フェイ・レイは古すぎるからジェシカ・ラングかしら……。」
O 「あら、ジェシカはオスカー獲ったじゃないの。」
P 「じゃあ、ナオミ・ワッツ?」
O 「違うわよ!ナオミ・ワッツは結構、演技派よ。
   『レイダース』シリーズのケイト・キャプショーとかアリソン・ドゥーディよっ!」
P 「あはは、結局、名前言っちゃったわね(笑)
   アタシ、アリソン・ドゥーディなんて三流女優知らないわ。
   大体、スピルバーグって女優の趣味悪いから。」
O 「あら、三流ってことは知ってんじゃないの(笑)」
P 「でもさ、ケイト・キャプショーはスピルバーグの奥さんに納まったわよ……。」
O 「凄いわよね、一発逆転満塁ホームランって感じ?(笑)やるわよねぇ。
   アタシも絶叫女優やって誰かの玉の輿に乗ろうかしら?」
P 「フン!アナタは無理。「ギぇぇぇぇ~っ!」って絶叫して御覧なさい。
   キングコングの相手役の怪獣に大抜擢よ、ネギラとかさ……がはは!」
O 「三流って言えばさ、何なの?あの中国の貧相な女優。」
P 「あら、仕方ないのよ。今回、中国の資本が入ったんだもの。」
O 「あら、だからってあんな女優を使うわけ?」
P 「だって、アナタ、今更、コン・リーとかチャン・ツィイーって訳行かないじゃないの。
   ミシェル・ヨーが出てきたらどうすんのよ(苦笑)」
O 「まぁ、確かにね……ワイヤーで空飛ばれても困るか。」
P 「仕方ないのよ、大人の事情よ。だからアタシは大人になりたくないのよ……。」
O 「ブァッカねぇ。アナタとっくに大人を通り越してババアじゃないの!」
P 「オダマリ、おねぎ!アタシがババアならアナタもババアよっ!」

O 「ねぇ、ところでトムはどうだった?」
P 「あのさ、何なのよ、トムって!呼び捨てにしたりして。アナタのお友達なの?」
O 「あら、違うわ。いいじゃないの、そんなことどうでも。」
P 「アタシはトムだったらベレンジャーがいいわ。」
O 「あら、ハンクスもクルーズもいるのに?アタシはトムだったらハーディがいいわ……。」
P 「あっ!トム・ハーディ……遠い目になっゃうわね(笑)
   でもアタシはやっぱりトム・ベレンジャーがいいの。
   観たのよ、若い頃に『百人劇場』でトムのスタンレーを!」
O 「あら、アタシだって観たわよ!最前列で!『欲望という名の電車』!確かに素敵だったわよね。
   Tシャツ脱いでさ、パウダーを脇の下に掛けるじゃない?
   アタシ、漂って来るパウダーを大きな深呼吸で全部吸ったわ!
   あの時さ、トムって映画化でスタンレーやりたかったんだって。」
P 「あら、アナタって本当に変態ね(苦笑)でも、何でおねぎがそんなこと知ってんのさ。」
O 「だって、トムから直接聞いたんだもの。おほほ!
   でね、その時、映画化権を持っていたのがスタローンだったんだって!」
P 「きぇぇぇぇぇぇぇぇ〜っ!『ブランチ〜ぃ!』じゃなくって、
   『エイドリア〜ンっ!』って叫んでいた方がお似合いよねぇ(苦笑)」
P 「でも、皆、年取ったわね……あのトムもこのトムもそこのトムも。」
O 「仕方ないわよ、アタシたちだって立派なババアなんだから……。」
P 「ところで、これってさ、続編があるじゃない?」
O 「あるある!エンドクレジット見ないで帰っちゃった人には分からない、あはは!」
P 「アレって、アレでしょう?」
O 「そうよ、アレよ(笑)」
OP「東宝はボロ儲けね!(苦笑)

2人は近くのビストロに席を移し、
シャンパンで乾杯した後、今度は2日前にロードショーで観た映画の話しになった。

O 「ところでピーマン、アナタ御覧になった?」
P 「アレでしょ?」
O 「そう、アレ『パッセンジャー』!
   アタシ、好きよ。ラストなんか、まんまアダムとイブじゃない。」
P 「あら、アタシも好き。アタシのクリスが出ているし。」
O 「ホラ、始まった。アナタの所有物って沢山いるのね。アタシはジェニファーが好き。」
P 「あら、アンタだって一緒じゃないの。何がジェニファーよ。
   アタシなんか『マネーボール』の時からクリスに目ぇ付けてたんだから。
   それに、アナタ、最初、ジェニファーを見た時に『あんぱん女優』って言ったじゃない。」
O 「あら、アタシそんなこと言ったかしら?」
P 「言ったわよ!得意技ね。都合が悪いとスグに忘れたフリ。」
O 「いいのよいいのよ、そんなこと。顔が丸くたって大女優は沢山いるわ。」
P 「あら、誰よ。3人以上言って御覧なさい!」
O 「フン!言えるわよ!えっと、えっと……あっ!クローデット・コルベール、
   山口淑子、京マチ子、高峰秀子……山口百恵だって顔丸いわ!」
P 「うぅ~ん、古い!いつの時代よぉ!」
O 「だけどさ、この映画ってほぼ2人しきゃ出ないじゃない?」
P 「そうっ!今、一番売れている証明よね。」
O 「適度に裸も出るし、見た?クリスのお尻!
   ジェニファー・ローレンスなんてファッションショーみたいだったじゃない。」
P 「でもさ、クリス・プラットみたいな男と2人きりで宇宙船で過ごすなんて素敵よねぇ……。」
O 「バカね!クリスがアナタを選ぶ訳ないじゃない!」
P 「そっか、カプセルに布掛けられたりして、がはは!
   でもさ、こう言う時ってアタシたち女のことはどうでもいいのね」
O 「当たり前じゃないの、だって、女は敵ですものぉ!(笑)
   ま、それはいいとして、ラスト、手に汗握らなかった?」
P 「握った!握った!」
O 「結局さ、絵空事なんだけど、たまにはいいわよね。」
P 「うん、たまにはいい。アタシたちに一番欠けているのはファンタジーだから、がはは!」
OP「そうよ、夢も希望もないのよ!アタシたちって、因果だねぇ……。」




年度末の忙しい日々でしたけど、
時間を見付けてはマメマメしく映画館に通っていました。
家でゆっくりしていれば身体も休まるのだけど、明日への活力!
泳いでいないと死んでしまう鰹よろしく映画館の暗闇へ……。


「キングコング髑髏島の巨神」……。
サービス精神満点、見所、満載の娯楽作でした。違う意味での続編も出来ますね。
アレらの素材をどうやって料理するのかハリウッドのお手並み拝見……と、行きますか。

「キングコング 髑髏島の巨神」…………★★★★★…………50点。

僕のジェニファーと大好きなクリス・プラットが共演の「パッセンジャー」……。
ほぼ2人しか出て来ません。あとはドロイドのバーテンダーくらい。
幾ら技師だって宇宙船をあれこれ弄れる訳がないと思いつつ、
そこは映画の御都合主義。存分に楽しませて貰いました。
ジム(クリス・プラット)がオーロラ(ジェニファー・ローレンス)を見詰めて言います。
「君は夢のように美しい!」……本当にそうなんです。
ジェニファー・ローレンス……好きだわぁ(笑)
まさに2人とも今が一番美しい真っ盛りかも。
楽しく最後まで見られたので……。

「パッセンジャー」……★★★★★……50点。


2017年4月1日


ブノワ。


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待てば海路の日和あり……映画は映画館で! 

 

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子供時代から映画の魔力に魅せられて……。
早、何年でしょうか……就職した当時は年間250本観ていました。
それが数年間、続いたかな……ロードショー、試写会、名画座……。
映画を観る環境も整っていましたしね……。
だけど、次第に仕事が忙しくなり、映画館が遠のき名画座も激減しました……。
映画の上映もフィルムからデジタルへ当たり前のように移行し、

 「映画はフィルムじゃなくっちゃ!」

……なぁ〜んて青臭いことを言っていたのが懐かしいです。

さて、映画は僕の人生の教科書。それは前にも書きましたが、
一つだけ、自分に課していることがあります。
「映画は映画館で!」……これだけはどうしても譲れない部分であります。
映画館の暗闇に身を沈め、体調を整えて心してスクーリーンと対峙する神聖な時間。
家でのヴィデオやDVD鑑賞ではどうにも気が散ってしまいますし、
それらは、映画館で観る映画とは一線を画すもの……僕はそう思っています。
少なくとも初見の作品は映画館で観たいです。

映画青年を自認して早数十年ですが(苦笑)
なかなか縁がなくて映画館で観ることが叶わなかった作品も沢山あります。
今日は、この度、念願叶って、映画館で鑑賞出来た作品を幾つか……。



先ずは、黒澤 明の「七人の侍」……。
これほど縁の薄かった作品もありません(苦笑)
「新午前10時の映画祭」にてようやく鑑賞と相成りました。
志村 喬が走ります!宮口精二も負けじと走る!しかも早い!(笑)
ストーリーはあまりにも有名ですからここには書きませんが、
この物語が成立する唯一のポイントは、
なぜ、浪人たちは村人の助けをするようになったか……です。
礼金もない、ただ飯を食わせてくれるだけで、
命を賭して正義のために殉じることが出来るのか?
そこがたった一つ、観客を納得させてくれるかどうかの大事なポイントです。
「七人の侍」はそこがキチンと描かれています。
綺麗事ではなく、名誉でもなく、浪人たちが村人を助けるようになった経緯が……。
誰のためでもない、己の人生のけじめ、存在価値を確かめるため……。
それを描くことにより、映画の時代背景もキッチリと描かれることになります。
それが描かれているからこそ、ラストシーンの「無情」が見事に浮かび上がるのです。

 「勝ったのは儂らではない、村人だ……。」

生き残った志村 喬が誰にともなく独りごちます。
その勝った農民、明るい陽射しの中で久し振りの田植えに浮かれ、歌い踊る農民も、
やがてはまた新しい野武士の襲来を受け、ボロボロに略奪されるであろう、
浮き世の無情が描かれているからこそ、世界の映画界のオールタイムのベストテンで、
常に上位の座をキープし、黒澤 明の名を世界的たらしめる結果になっているのだと思います。
意外だったのは悪役である野武士たちのキャラクターが全く描かれていないこと。
七人の侍たちを克明に描くことで、浮かび上がって来る悪のシルエット。
それから「矢張り!」と認識を確かにしたのは三船敏郎の大根ぶり。
大根と言っては申し訳ないけれど、大味のワンパターンの演技にビックリです。
「羅生門」の多譲丸と全く同じ演技だものね(苦笑)
ただ、この方の場合、早々に苦みばしっちゃったので胡麻けましたが……。

「七人の侍」……★★★★★★★★☆……85点。



その「七人の侍」にインスパイアされた「マグニフィセント・セブン」。
デンゼル・ワシントンをはじめ、ノリに乗っているクリス・プラット、
イーサン・ホークなどを揃え盤石の「マグニフィセント・セブン」ですが、
「七人の侍」でキッチリ描かれていた「大義名分」が圧倒的に弱いです。
結局、悪役に対するデンゼル・ワシントンの私怨……ですか(苦笑)
では、他のガンマンたちは?命を掛けてまで通りすがりの村の人々を助ける大義名分は?
ただ、西部劇のお決まりごと、荒野、開拓地、ガンマン、酒場、娼婦、気丈なヒロイン……。
楽しめる要素はタップリで、エマ・カレンを演じたヘイリー・ベネットが思わぬ拾い物。
娯楽作品としては鉄板の出来で、クリス・プラットが好調です。

「マグニフィセント・セブン」……★★★★★……50点。



待ちに待って首がロクロ首になった感のある「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」。
これ、本当に待ちました……もう一生、映画館で観られないのではないか?
諦めた時、待てば海路の日和あり……25年の歳月を経て、
デジタル・リマスター版、236分のオリジナル版で観ることが出来ました。
もうそれだけで涙です……心して鑑賞して参りました。
1961年に実際に起きた少年によるガールフレンド刺殺事件をもとに、
夭折したエドワード・ヤンが、まだ何者にもなっていない1人の聡明な少年、
「小四」にスポットを当て、当時の中国と台湾の情勢を見事に描ききった大傑作です。

学校の隣の映画の撮影スタジオでくすねた懐中電灯で照らす、
日本家屋の押し入れの下の段の、狭い世界が唯一の自分の世界である少年。
まだ、恋とも愛ともハッキリと分からない感情と、
揺らめく感情、曖昧な性、少年ならではの正義感……。
東洋が西洋(アメリカ)に憧れていた古き良き時代……。
まだ14才なのに、いっちょまえな義理人情を立てて友人を思う子供たち……。
子供たちの小さな世界が、やがて国の情勢から世界の情勢までの、
時代の大きなうねりを垣間見せてくれることになる……傑作です。
矢張り、映画は映画館で。待ってて良かったと思います。

「牯嶺街少年殺人事件」……★★★★★★★★★……90点。



もう1本……どうしても観たかった「ロミオとジュリエット」。
ケネス・ブラナー率いる「ケネス・ブラナー・シアター・カンパニー」の、
ロンドンはギャリック・シアターでの上演をスクリーンに映したものです。
「シンデレラ」のリリー・ジェームズとリチャード・マッデンがロミオとジュリエット。
いつもながら驚かされるのは、隣のアンちゃん、おネエちゃんと思っていた俳優が、
キッチリとシェークスピアを演じるんですよねぇ……。
日本にいると、なかなか外国の舞台を見ることは叶いませんが、
チョッぴり臨場感を味わい、矢張り、シェークスピアはいいなぁ……と思わせてくれました。

「ロミオとジュリエット」……★★★★★☆……55点。



余談ですが、「ロミオとジュリエット」と言えば、
先日のフィギュアのジュニア世界選手権において、
日本の本田真凛が準優勝しました。フリーの使用曲は「ロミオとジュリエット」。
ニーノ・ロータの主題歌「What is a Youth」と、デズリーの「I'm Kissing You」です。
ニコニコと清々しい笑顔でミスなく滑りきった本田真凛ですが、
優勝はバレエの高い素養を見せ、点数が1.1倍になる後半にジャンプ全てを揃え、
しかも完璧に降りきったアリーナ・ザギトワ。
インタビューを見ていてビックリしたのは、

 「ロミオとジュリエットがどんなお話か知らない。」

本田真凛が、そうあっけらかんと話していたことです。
・・・・・・もっと勉強しましょうよ。ビデオ見ましょう。本を読みましょう。
そうしたらあんなに笑顔で滑れないハズなんです。
フィギュア・スケートの魅力は少女の天真爛漫な笑顔だけではありません。
タチアナ・タラソワが「鐘」の練習の時に浅田真央に言った言葉、

 「真央、もっと怖い顔を作って!」

本田真凛が原作を読み解き、少しでも悲劇のエッセンスを感じていたならば……。
フィギュアは表現力だけではないけれど……そう思うのは酷でしょうか?

それにしても、皆さん浅田真央以後の新しい才能(売れ線)を模索して必死ですね。
チョッと前だったら土曜日のゴールデンタイムに、
ジュニアの試合を放映するなんて考えられなかったものね。
流行なんて作られるもの、そんなことは重々承知、百も承知ですが、
新しいスターを作ること……こればかりはテレビ局やスケート連名の思い通りにならないのでは?
オジさんはとても冷ややかな目で見ておりますぞ……。


今日の写真は地下鉄東西線の飯田橋駅。
階段を上がり、改札に向かう途中にあります。
ここ、好きなのです……映画、写真愛が溢れちゃう!(笑)


2016年3月23日


ブノワ。


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命をあずける……「ハドソン川の奇跡」。 

 

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チョッとイレギュラーな仕事で千葉県の我孫子に行きました。
打ち合わせ場所は駅から歩けない距離ではなかったんですが、何しろ凄い荷物……。
そうだ!こう言う時はタクシーだよね!初乗り安くなったし!あはは!
タクシーに乗り込み、大体の場所と住所を伝えます。カーナビに住所を入力し終わり、
タクシーはゆるゆると走り出し線路添いを直進します。
チラっとメーターを見ると、な、な、な、何と730円ではありませんか!
シオシオのパー……千葉は初乗り410円じゃないんだ(苦笑)
こんなことだから金が貯まらないんだ……ま、いいです、気を取り直してっと。

ホォ……こっちの道を行くか……。
ンンン?……少し走ると何やらイヤな予感が……実は僕、地図が読める男なので、
初めての土地でも何となく方角や周りの景色で道が間違っているか分かるのです。
カバンからスマートフォンを出し、急いで目的地を確認です……。
やっぱり間違っている……タクシーのカーナビを見ると違う住所が入っています。

 「運転手さん、住所が違っていますよ。」

キュッ!急停車するタクシー。
僕が言った住所通りに入力したと言い張る運転手。
改めて運転手を見てみると、可成りの年配……って言うよりお爺ちゃん?
タクシーに乗る時に一々人相なんて確かめないし……。
再度、カーナビに住所を入力して貰いましたが、
何と、右手が震えて指先ではタッチ出来ないのでボールペンを持ち、
さらに震える右手首を左手で押さえながらの入力です。
それでも震える両手、小刻みに震えるものだから、
○○丁目15番地のところを155と入力……。
仕方ない、身を乗り出して僕が代わりに入力してあげました。
ハァ……世話が焼ける。本当、プロが少なくなったわ……。
本来ならとっくに着いていなければいけない頃合いです。

 「運転手さん、メーター。」

勿論、メーターは倒して貰いました。
降り際に一言、文句を言いました。

 「運転手さん、地元の人でしょう?住所を聞いただけで、
  どうして案内出来ないんですか?初めての土地で不案内だからタクシー使ったのに。
  僕がスマートフォンを持っていなかったら永遠に着かなかったですよ。」

ジイさん、反論して来るんですよねぇ……(苦笑)
僕が最初に伝えた「我孫子城跡の近く。」を引き合いに出して、
そんなところは知らない、今まで聞いたこともない……って。

 「帰り道だから寄ってみるといいです……。」

冷たくキッパリ言い放ちましたが、こっちも気分悪いですよね。
スカッとしないです。何だか年寄りイジメみたいじゃないですか……。
何だか哀れだし、気分も悪いから、結局730円のところ1000円置いて降りました。
だからお金が貯まらない(爆)しかも、ジイさんお礼の言葉もなし(苦笑)
友人にこのエピソードを話したら、

 「そんなことより命が危なかったんじゃない?」

って……なるほど。
最近、多いですもんね。高齢者の考えられない自動車事故。
最近、増えたわけではなくて、昔から同様の事故はあったハズで、
報道が偏っているからなんだと思うのですが、
高齢で判断と瞬時の反応が遅くなって来ていることに加え、
近年の、何でもかんでも機械が人間に代わってやってくれることの弊害?
トイレなんて凄いですよね。独りでに蓋が開き、終われば水が流れる。
各メーカーがしのぎを削る自動運転装置なんて必要ないと思っている僕なので、
改めて命を預けると言う行為を考えさせられました。
レールの上を走る電車でさえ重大な事故を引き起こすこともあるんですから……。
空港で荷物が出てくるのを待ちながら、パイロットとキャビンアテンダントの人たち一行を見るにつけ、
あぁ、この人が今の飛行機を操縦していたんだ……。
いかにもパイロットらしい大きくてガッシリとした体躯、元は軍人か?
レイバンのサングラスなんかしちゃって口髭に自信に満ちあふれた雰囲気……。
これが件のしょぼくれたタクシー運転手みたいだったら後から冷や汗ものです(笑)



さて、飛行機の話になりましたからついでに……。
「ハドソン川の奇跡」をチョッと前に観ました。
離陸後スグに鳥がエンジンに突っ込み両方のエンジンが停止、
最寄りの空港に引き返すことなくハドソン川に不時着した「USエアウェイズ1549便」の物語です。
映画の中にも出てきますね。機長サリーと副操縦士スカイルズの判断が正しかったかどうかを、
事故調査委員会が訓練用のコックピットを使用してシュミレーションするシーンが。
コンピューターの計算だと、エンジントラブルが発生した後、
スグに引き返していれば、ハドソン川ではなくて空港に無事に着陸出来たと……。
ただし、これは机上の空論で、パイロットたちは訓練通り、エンジンが停止した際の、
QRH(緊急時の対処を書いたハンドブックの検索)をした時間が含まれていません。
その時間を加味すると、どんなことをしても空港手前で墜落してしまいます。

何事も計算じゃないんですよね……。
危機に陥った時の人間の判断って、勘みたいなもの?
瞬時の判断、動物の本能みたいなものがものを言います。
それが生死の境目を分けたりすると思うんです。
何でも機械に頼る昨今、人間の本能をダメにする有り難い発明が多すぎます(苦笑)

話が逸れました……。
トム・ハンクス好演。ただしこの方の映画は教科書みたいでおもしろくないなぁ……。
大好きなアーロン・エッカート、彼はカメレオンですね。
容姿を大きく変えるようなことはしませんが、毎回~違った姿を見せてくれます。
なんかこうアフターシェーブローションの匂いまでしそう(笑)
イーストウッドって毎回〜鉄板のクォリティーなんですが、
こちらもなぜだか面白味に欠けます。原作物の台詞を非常に大事にする人。
一分の隙もない立派な作品を作りますが、面白くない。
とっくの昔に巨匠扱いですが、その昔、二流女優のガールフレンドを、
ヒロインで作品を撮っていた頃を知っていますから……。

「ハドソン川の奇跡」……★★★★☆……45点。


2017年3月4日


ブノワ。


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僕はこう言う映画が観たい。 

 

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ポッカリと空いた平日の午後……。
1人でプラリと恵比寿に出掛け、前から気になっていた「たかが世界の終わり」を観て来ました。
「恵比寿ガーデンシネマ」のシネマ1、200円プラスでプライベートシートです。
この劇場は観やすい上に、ロビーとかが個性的で好きです。
プライベートシートもたった200円でチョッと贅沢な気分……また使わせて貰おうっと!
さて、このところ観たお気に入りの作品などをチョッと……。




「新午前10時の映画祭」で観た「山の郵便配達」……初見です。
これ、いいですね。何も起こらないのね……突風で郵便物が飛ぶくらい(笑)
中国の山間部で郵便配達をしている父親が膝の故障で引退を余儀なくされ、
代わって息子が跡を継ぐために、1回だけ2人で2泊3日の旅に出ると言うもの。
大きな事件は何も起こりません。息子の仄かな恋もあるけれど、特撮ゼロ。
ただただ、黙々と2人の郵便配達の旅が描かれているだけ……。
ところが、これが面白い!息子は父の仕事ぶりを見て大きく父への気持ちが変わります。
自分は父に好かれていないのではないかと思っていたのです。
黙々と山を歩き、郵便を配達する父。村、村で出会う人たちからの尊敬。
仕事に対する自信と誇り……息子は父の背中を見ながら学びます。
父も、どこか母親ッ子である息子を寂しく思いながら、
冷たい川を渡る時に息子に背負われ、その逞しくなった大きな背中に涙します。
僕たち観客も、時に息子になり、父になり、色々なことを映画から学びます。
昨今のバカみたいな特撮一辺倒で人間が描かれていない映画にはウンザリ。
久し振りに心が洗われるようでした。
勿論、父と息子の役者が好演。次男坊と言う名の犬の名演!
動物と子供には敵わないってよく言ったものです(笑)

「山の郵便配達」……★★★★★★★……70点。



同じく「新午前10時の映画祭」から「初恋のきた道」。
これはロードショウの時に観ていますので2回目ね。
まだチャン・ツィイーが小娘だったころの(笑)ほぼデビュー作。
監督がチャン・イーモーですから。物語らせたら格別なものがあります。
こちらも「山の郵便配達」と一緒で、山間の村に赴任して来た青年教師に対する、
村の娘ディのひたすらな恋心しか描かれていません。
肩と言うよりも胸から走るチャン・ツィイー(笑)
雄大な大自然の中で、少女のひたむきな恋心が熱いです。
実は、この映画の中でもう一回どうしても見てみたかったシーンがあったんです。
僕は今、金継ぎを習っていますが、幾つかある器の直し方の中の、
「鎹(かすがい)継ぎ」を実際にするシーンが出て来るんです。
少女が赴任して来た青年教師のために餃子を作って持って行くシーンがあります。
食事に来ると言う約束をしていたのに、青年教師が、その思想ゆえ、街に呼び出されたと聞いて、
作ってあった餃子を大きめの茶碗に入れ、皿で蓋をして、
走り去る馬車を追いかけて必死に走る際、転んで茶碗を割ってしまうのです。
娘の気持ちを知った盲目の母が、行商に来ていた茶碗を直す行商に茶碗と継いで貰います。
そこがどうしてもも一回見てみたかったんです。
村人総出で新築なった小学校の壁面には「知識是祖国的武器」の文字が。
僕は中国語は出来ませんが、そこは漢字の凄いところ。
意味は、「知識は祖国の武器です」……そんなところでしょうか。
時代は文化大革命の前です。こうして小さな子供の教育の現場から叩き上げるのです。
ボンヤリお人好しな日本人には到底敵わない……そうも思わせる作品でもあります。

「初恋のきた道」……★★★★★★……60点。



早くも今年のナンバーワンか……「たかが世界の終わり」。
随分と舞台がかった作品だなぁ……と思って観ていましたが、
実はこの作品、元は戯曲なんですね。なぁ〜るほど、やっぱり!
若くして成功した作家、ルイが、自らの残り少ない寿命を家族に告げるため、
12年振りに故郷に帰って来ます……そして帰るまでの半日の物語。
まぁ、兎に角、豪華な配役です。主人公ルイにギャスパー・ウリエル。
なんて美しい顔の持ち主なんでしょう……。
その母マルティーヌににナタリー・バイ、兄アントワーヌにヴァンサン・カッセル。
兄嫁カトリーヌに今をときめくマリオン・コティヤール。
妹シュザンヌにレア・セドゥ……5人しか出て来ません。
12年の空白を埋めようと必死な母、真っ青なアイシャドウとネイルが痛々しいです。
相変わらず攻撃的で劣等感の塊の兄。口を開けば相手を攻撃する辛辣な言葉の羅列。
妹は物心ついて以来の兄の帰宅に戸惑いを隠せません。
お互いがお互いのキズに塩をなすり付けるかのような言葉の応酬です。
そして、ブラッド・ピットをして「宝石」と言わしめたマリオン・コティヤールは、
ルイと初対面ながら、唯一、家族の中で1人だけ仲間外れの身上から、ルイの身上に共感し、
そして、ついにはルイが告白することの出来なかった秘密、
12年振りに帰京した本当の理由に気付いてしまいます。
大詰めの嵐のような台詞のやり取りが終わった後のルイとカトリーヌの、
台詞のない心の通った仕草、ルイが唇に人差し指を当てるシーンが秀逸です。
このシーンだけでも見る価値あり。そして、二度と戻らぬ実家の扉を閉めた後、
床のカーペットのアップと、紛れ込んで来た小鳥の息絶えるシーンの寓意……。
グザヴィエ・ドラン……初めて観ました。
今年度のグラミー賞で5冠なったアデルの「Hello」の、
プロモーション・ビデオも彼の作品ですよね……これからが楽しみ!

「たかが世界の終わり」……★★★★★★★★……80点。



 「僕、こんなことも描けるんだよ!」

技術を競って何が何でもCGで描くことの虚しさ。
派手な銃撃戦、カーアクション、宇宙でのバトル、爆発、崩壊……。
人の心を打つものってそんなことじゃないんですよ。
最近、飽き、飽きしていたので、シンプルで力強いメッセージを持つこれらの作品に大感激。
やっぱり映画はこうでなくっちゃ!僕が観たい映画はまさにこう言う映画!


2017年2月19日


ブノワ。


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「沈黙」に沈黙す。 

 

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今日の写真……まだフィルム・カメラを持って歩き回っていた頃、
パリは「MUSÉE DE CLUNY Musée national du Moyen Âge/クリニュー美術館」で撮りました。
こちらの美術館はタピストリーの「貴婦人と一角獣」とかが有名ですよね。
非常に素晴らしい美術館で、中世、特にキリスト教美術に興味ある人にはたまりません。
このキリスト像……人気のない部屋にこつ然と現れました……こつ然と現れたって言うのはおかしいかな……。
部屋に入ったら午後の溢れる陽射しの中にひっそりと置かれていたのです。
確かタイトルは「Jesus waiting for death」……だったかな?
僕の他には誰もいませんでした。像は等身大くらい?可成り大きかったように思います。
おそらくダヴィデ像のように、下から見上げる位置に置かれることを念頭に作られたのではないでしょうか。
目のトリックですね。上半身、頭の方が比率で言うと大きくなっています。
ハッとしました……フと後ろを見ると、丁度、窓の格子が十字架のように見えます。
先日、写真は「光と構図」だと書きましたが、被写体を決めたら画面を作ることも必要です。

 「おぉ……これは!」

跪き、ペッタンと床に座り、這いつくばるようにして撮ったのが今日の写真です。
デジタルだとその場で確認が出来ますが、何しろフィルム・カメラですからね。
帰って現像してベタ焼きが出来上がるまでドキドキだった記憶があります。
ベタ焼きを受け取り、欣喜雀躍とはこのことを言うのでしょうね……凄く嬉しかった覚えがあります。
写真と撮り続けて長いこと経ちますが、思い通りに撮られた写真はこれのみです。
多分、この先もこれだけの写真は撮れないんじゃないでしょうか。


さて、スコセッシの新作「沈黙・サイレンス」を観て来ました。
先日、「早稲田松竹」において、スコセッシの「沈黙・サイレンス」の公開を記念して、
スコセッシの「タクシードライバー」と「ギャング・オブ・ニューヨーク」、
それから、遠藤周作が原作の「海と毒薬」それから篠田正浩版の、
1971年の「沈黙・サイレンス」を観たばかりです。そう、お勉強しないとね。
新作の公開に合わせて旧作を上映してくれた「早稲田松竹」に感謝、感謝です。


映画に魅せられた中学時代……。
欧米の映画を観るには、キリスト教とユダヤの問題を知らないといけない……。
そう思い立ち、当時はインターネットなどと言う便利なものがなかったため、
本屋で購入したのが新書判の「キリスト教」だったでしょうか。
先ず、1ページ目から分からなかったのね。未だに分からない(苦笑)
Wikipediaで「キリスト」と「キリスト教」を開いて読んでも分からない……。
キリスト教に限らず、宗教って、人間の究極の理想、あり方って一つだと思うのだけれど、
なぜにこうも宗派が多く、しかも、いがみ合っているのか甚だ疑問です。
未だに謎が多いです。この作品を観たキリスト教徒の方々はどんな感想を抱くのか興味津々です。
信心深い教徒が、ある日、神の不在に思い至り、疑問を持ち、煩悶する姿に傑作が多いです。
「処女の泉」とかね、高校時代に観てまるっきり分からなかったイングマール・ベルイマンの作品群や、
聖書に出て来る人々や、聖職者が主人公のもの、数限りなくあります。
キリストが主人公となると、どうしてもスペクタクルの色合いが多くなりますね。
「ベン・ハー」のように、作品のクォリティー共々超弩級の作品もあります。

神の不在……全くの無心論者の僕には上っ面しか理解出来ないです。
この世に生まれ落ちてから一つの宗教によって育てられて来た人にとっては、
その神が本当はいないのではないか?……そう思い至った時の衝撃は想像に難くありません。

アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、
浅野忠信、イッセー尾形、窪塚洋介……役者陣が素晴らしい演技をしていました。
日本版でフェレイラを演じた丹波哲郎みたいに、大詰めでビックリ仰天なんて言うこともなかったし(笑)
だって、どう見ても、引っ繰り返って見ても、丹波哲郎はポルトガル人には見えないでしょう?
「日本沈没」の田所博士かと思っちゃった(爆)
スコセッシってあまり好みの監督ではないのだけれど、
若かりしころのイタリア系の重量級のパワー炸裂の作品が懐かしいです。

「沈黙 SILENCE」(篠田正浩版)……★★★★☆……45点。
「沈黙 SILENCE」(スコセッシ版)……★★★★★☆……55点。


2017年2月17日


ブノワ。


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君の名は。 

 

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 「Boop-boop-a-doop! 」

マリリン・モンローが「お熱いのが好き」で歌った、
「I Wanna be loved by you」の中の一節です。
マドンナは初期の代表曲の「Like a Virgin」や「Material Girl」において、
以降の彼女の特徴となるベビー・ボイスをふんだんに聞かせてくれます。
今や女性のベビー・ボイス……いやいや、アニメ声は日本国中に蔓延し、
とっくに若くもない女性までアニメ声で話しをする姿を多く見掛けます。


僕……苦手です(苦笑)
先日も、時間潰しにプラリと立ち寄った「GU」の会計のカウンターの女性……。
4人が揃いも揃ってアニメ声でした。全身が総毛立つほど気色悪いです。
本人たちはそれなりに練習とかをしたのでしょうか?
自分では可愛いと思っている?イケてると思ってる?
いい年をしたオバサンがアニメ声……卒倒するくらいに気持ち悪いです(笑)

男のアニメ・ヘアは一時期ほど見掛けなくなりました。
まるでアニメの主人公のようにツンツンに固められた髪型……。
ホラ、一昔前のストレート・パーマのプラスチックの板に貼付けたみたいな髪(笑)
本人たちは格好いいと思っているのでしょうね。
女性は知らないと思いますが、駅とかの男子トイレの惨状(笑)
用を足すと言うよりも、鏡に向かって半ばウットリとしながら、
髪の毛のセットに余念がない男をよく見掛けます。
若者だけではありません。可成りの年配までね(アニメ・ヘアじゃないけど。)
いいんですよ、身だしなみに気を遣うのはね。
でもね、髪の毛にそれだけ気を遣って他が疎かでどうするの?
ツンツルテンのスーツ、踵の片側だけが猛烈にすり減った靴……。
何事もバランスです。バランスの悪いものに美しさはないもの。


さて、新年早々に意を決してアニメを観に行きました。
他に観たい作品がなかったって言うのもあるけれど、
1人では気持ちが挫けるので(笑)親友を誘って大ヒット作「君の名は。」の鑑賞です。

 「君の名は?」

 「氏家真知子です……。」

……の、世代の僕ですから(笑)
僕は基本的にアニメに対しては厳しいです。でも、観てから言わなくっちゃね。
見ないで批評もへったくれもないから。
アニメってゼロから全てを描き上げる訳でしょう?
その割には(表現的に)想像力が乏しい作品が多いと思うのね。
特に最近の作品では、実写にデジタル加工をしたカットが多いのでは?
「君の名は。」でも風景とかにそのような描写が多く見られましたよね?
それが何?って言われちゃうと身も蓋もないんだけれど……。
例えば、絵画の世界のスーパーリアリズム表現……。
なぜ、写真ではいけないの?それを絵画で表現する意味とは?
僕はそう思うのね。人の手で描き上げられたものの中に、
写真のリアリズムとは違った何かをしのばせなければ意味がありません。
人の手による絵画ならではの何がしかがあって初めて芸術になるんです。
アニメもそう、実写で、優れた俳優の演技で表現出来るのになぜアニメにする?
それもこれも見てみないと分からない……そう思っての一大決心でした。
去年だったかな?全てデジタルで描かれた「ペット」を観てやっぱりガッカリ。
もうこの手の作品は二度と見ないと決めたのですが、
「君の名は。」は何しろ興行収入200億円を軽く突破の作品です。
チョッと話題に出すと、廻りの友人たちは皆、既に観ていたりします(苦笑)
映画好きの僕が観ない訳には行かない……相変わらずの超満員の劇場で、
フと思ったんです。自問自答したんです……僕はなぜここまでアニメを毛嫌いするのかって。
嫌いなんですよ……アニメの吹き替えに多く見られるアニメ声が(苦笑)
女の主人公の甘ったるい声も苦手ですが、男の主人公の画一化された発声も嫌い。
ハイハイ、分かっていますよ。声優の皆さん、それぞれに個性も特徴もあります。
でも、総じて女の登場人物は甘ったるいアニメ声ですよね?
その登場人物になりきったかのように、現実世界の女性もアニメ声……虫唾が走るんです。



「君の名は。」……確かによく出来ていました。
他のアニメを観ていませんから較べることは出来ないのだけれど、
この手の時間軸を行ったり来たりする物語にありがちな辻褄の合わなさもそれほど感じないしね。
ただねぇ……やっぱり、大ヒットと作品の出来は比例しませんね。
男女が入れ替わる設定は今までにも沢山あったし、
何と言っても、実写で大林宣彦の「転校生」があります。
アニメの何でも描ける利点をもってなくしても、
実写で俳優が少年少女の心の機微を十分に演じきった青春映画の傑作の例が。
実写で出来ることをアニメで見なくても良い……僕はそう思います。

「君の名は。」は今や若者のバイブルだそうです。
作画のモデルになった場所は「聖地巡礼」と称して大人気だそうです。
少し前まで、若者の生まれてから一番の感動作は「タイタニック」だったそうですが、
今や「君の名は。」って言うところでしょうかね。

「君の名は。」……★★★★……40点。
これでも結構、甘いです。


2017年2月12日


ブノワ。


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