クリスティの通奏低音は愛……「オリエント急行殺人事件」。 

 

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「オリエント急行殺人事件」を観て参りました。
勿論、初日です。劇場は思ったよりもガラガラ……。
物凄く楽しみにしていたんです。43年振りのリメイクだものね。

結果から言うと、全くダメでした。突っ込みどころ満載でございます(苦笑)
もうね、これはポワロの「オリエント急行殺人事件」じゃない。
ミス・マープルや隅の老人、リンカーン・ライムみたいな安楽椅子探偵ではないにしろ、
ポアロが活劇を演じちゃいけないのですよ。鷹揚に構えて灰色の脳細胞を使わなければ。
それから雪に閉ざされたオリエント急行、それも一等車両の中、密室で起こる惨劇なんです。
橋桁の追い掛けっこや、ピストルで撃たれてみたり、外に出ての尋問、
それからダ・ヴィンチの最後の晩餐をイメージしたラストの謎解きのシーンなんて余分です。
全てをオリエント急行の車両の中でやるからこそ、濃密な雰囲気が醸し出される。
息が詰まるほどのスリリングさが生まれるんです。
冒頭の嘆きの壁の推理のシーンなんてまったくいらないし、
そもそもが、才気あふれる人が作るとオリジナルをイジりたくなるのがイケない。
自分なりにイジってオリジナリティーを出したい……。
イジればイジるほど綿密に織りなした原作が綻んで行きます。
何も原作を無理に変える必要なんてどこにもないのですよ。
カメラワーク……凝り過ぎ。もっとジックリと舞台を撮るように撮らなきゃ。
不必要な人種の配置も首を傾げる点。何故、アーバズノット大佐が黒人の医者に変更?
「スターウォーズ」の第一作の時に、黒人俳優がまったく出ていないと批判され、
(そう言うどうでもいいことに目くじら立てるバカが多い。)
第二作目の「帝国の逆襲」で要の役に黒人を配置したり、
この15日に公開される最後の3作の主人公が女の子だったり……。
僕は「スターウォーズ」は少年が男になる物語だと思っていますから、
何ともこの辺の世の中のご機嫌取り的な配役にはウンザリ。
ホワイト・オスカーと揶揄された翌年に、黒人俳優が大挙してノミネートされたり……。
こう言うのを「忖度」って言うんですよ。忖度、忖度、忖度っ!(苦笑)
何故、人目を気にするの?黒人がいない社会もある。
黄色人種が出て来ない世界もある。男だけの世界もありだし、
逆に女だけの世界があってもおかしくない。
そう、色々な時代や世界がある……それでいいじゃない。

役者陣も小粒(苦笑)シドニー・ルメット版の「オリエント急行殺人事件」には、
バーグマン、バコール、コネリー、パーキンス、レッドグレーブ……。
一時代を築いた往年の大スターたちがキラ星の如く出ていて圧巻でした。
ドラゴミロフ公爵夫人を演じた、今や老境に達してなお、
飛ぶ鳥を落とす勢いのジュディ・デンチも、
醜悪なメイクでしかめ面のウェンディー・ヒラーには敵わないし、
どこの馬の骨とも分からぬ隣のネエちゃんアンドレニ伯爵夫人なんて、
ルメット版は、一番美しい時のジャクリーン・ビセットだものね、
品位と格が違う。はぁ……ルメット版は良かった……。
全体を飾るアールデコの装飾に、リチャード・ロドニー=ベネットの流麗なワルツの調べ、
各階級を見事に衣装で表した格調高いトニー・ウォルトンの仕事!
そして仕上げはリチャード・アムゼルの手による映画ポスターの傑作!
「マイ・フェア・レディ」からブームになったイラストによる映画ポスターの紛れもない最高峰!
事件の核になるアームストロング事件を冒頭でフラッシュバックで見せちゃうルメットの慧眼。
原作は推理小説史上、最も有名なトリックの1つです。
映画を観る者がトリックを先刻承知であることを前提に、
大胆に料理して極上の1皿に仕上げた手腕は凄いです。

トリックの女王、アガサ・クリスティーの作品は、
出来不出来はあるにせよ、どれを取っても読ませるものが多いです。
その根底にあるのは「愛」です。通奏低音は愛……。
その愛があるからこそクリスティーの作品は読ませるし面白い。
果たして、この作品にはその愛が描かれていたかな?
母の、祖母の、恋人の、恩人の……それぞれの無償の愛は、
殺人を犯すほど強く描かれていたのかな?甚だ疑問です。

次作「ナイル殺人事件」が決まっているみたいですね。
ラストでポワロが「ナイル川の事件」で呼ばれていましたが、
事件が起こった後に駆け付けて、どうやってポワロが解決するのさ?(笑)

「オリエント急行殺人事件」……★★★★☆……45点。


2017年12月10日


ブノワ。


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